世界の若手作家の技法に見入る 石川県七尾美術館

コロンビアのマラソンのヒーローを描いた入選作

フランス、スペイン、イタリア、日本、韓国、台湾など世界各地の絵本画家や若手イラストレーターによる最新作などを集めた「2022イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が、石川県七尾市の県七尾美術館で開かれている。会場には油絵や水彩、切り絵、刺繍(ししゅう)などの技法を駆使した作品が並び、来館者は国際色豊かな作品に見入っていた。今年はコロナ禍のため、インターネットを通じたデジタルアートが多い。(日下一彦)

イラストレーターの登竜門

29カ国78組の入選作を展示

「国際絵本原画展」は、イタリアのボローニャで開催されている「絵本の原画コンクール」で入選した作品で、世界最大級の規模を誇る絵本原画展として知られている。日本では昭和53(1978)年に初めて紹介され、同館では平成10年(98)以降毎年開かれている。今年で25回を数える。子供の本のために描かれた5枚1組のイラストレーションを審査するもので、出版経験の有無にかかわらず応募できることからイラストレーターの登竜門として、また児童書の最新動向を知ることのできる機会として、毎回注目されている。

「絵本原画展」のタイトルだけ見てしまうと、子供たちが読む絵本の挿絵の作品展かと思いがちだが、然(さ)にあらず。「可愛(かわい)らしいだけの幼児や子供向けの作品は減り、大人も子供も楽しめる作品が増え、とても魅力的な展覧会です」(同展担当者)ということだ。

同コンクールは多様性を重視し、毎年国籍の異なる審査員5人が入れ替えで選考を担当。出版・未出版を問わず応募できることから新人作家の登竜門としても知られている。2022年度は過去最多の92カ国3873件のエントリーがあり、日本人の絵本作家、降矢奈々さんを含む5人の審査員による選考の結果、日本人4人を含む29カ国78組の作家が入選した。

審査は、幼児から高校生までを対象に書かれた絵本や小説などの挿絵、イラストを5点1組で審査する。16歳以上であれば誰でも応募でき、出版経験のあるなしにかかわらず公平に審査される。

幾つか紹介すると、韓国のキム・ジヒョンさんの「ちいさなちいさなプラスチックのスープ」は、環境問題を扱った作品で、海に流れ出た細かいプラスチックを魚が食べ、その魚を人間が食べる様子を描いている。大きく育った魚を人間が大きな口を開けて平らげようとする絵が“不気味さ”を感じさせるが、今の環境問題も訴えている。

フランスのクレール・シュヴァルツさんの「虫ホテルの夜」と題した作品は、大雨の影響で急遽(きゅうきょ)ホテルに泊まることになった家族連れが、夜眠れずにホテルの中を冒険する様子を色鮮やかに描いている。探検する期待と不安が巧みな色使いで構成されている。

コロンビアのアンドレス・ムニョス=クラロスさんの「山をかけるロレナ・ラミレス」は自国のマラソンのヒーローを取り上げ、多くの観衆の中を民族衣装でさっそうと走る姿を鮮やかな色彩で描いている。最後の場面では険しい山河を越えて無事に自宅にたどり着き、家族に迎えられる。そのぬくもりを伝えている。

入選した日本人作家の久保田寛子さんは「いたずらネズミの生活」を出展している。アクリル画で説明文を見ると、レモン月の雫(しずく)でジュースを作り、バナナで甘くし、(その後場面が変わり)ラジオのチューニング、オーロラ作り、カセットテープと展開する。メルヘンチックで明るい作品だが、凡人には作品作りの意図は分かりにくい。

会場で熱心に鑑賞している、お母さんと娘さんがいたので感想を聞くと、「毎回楽しみに来ています。こんな辺鄙(へんぴ)な能登で、世界の国々の人たちの作品を見ることができて幸せです」と微(ほほ)笑んでいた。

今回の傾向について、同館の河野喬紀学芸員は、「昨年は明るい作品が多かったが、今回は落ち着いた色彩の作品が目立つようです」と解説、「審査員が毎年代わるので、作品の雰囲気が毎回違います。動物を主人公にした作品や環境問題を扱った作品など多種多様なので、ぜひ見てほしいですね」と話している。

同展は12月11日まで、会期中無休。入館料=大人800円、大高生350円、中学生以下無料、問い合わせ=電話0767(53)1500。

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