里子と里親の強引な引き離しに反対

生後2カ月から養育している5歳児の里親委託を児童相談所が一方的に解除し、里親から引き離すのは、里子に大きな精神的ダメージを与える違法な対応だとして、里親夫妻が沖縄県を相手取り、引き渡しの差し止めを求める訴訟を起こした。原告の夫妻は、児童の一時保護の委託先を自身の元にするよう求める署名活動をインターネット上で始め、反響を呼んでいる。(沖縄支局・豊田 剛)


児相が里親委託を一方的に解除、沖縄県を相手に訴訟へ

親の病気や家出、虐待などさまざまな事情で実の親の元で暮らせなくなった子供を代わりに育てるのが「里親制度」だ。児童福祉法上、里親委託は親権者の同意が必要だが、実の親が引き取りたいと申し出ると、子供が強制的に里親から離されざるを得ない。

里子と里親の強引な引き離しに反対
小橋川夫婦の里親委託を解除したコザ児童相談所=沖縄県沖縄市知花

県を提訴している夫妻は那覇市在住で里親の小橋川学さん(56)と久美子さん(55)。実親が昨年末、自分の元で育てたいと、コザ児童相談所(沖縄市)に里親委託措置の解除を求めてきた。すると児相は1月4日、児童を小橋川さん宅から引き取り、一時保護。5日付で里親委託を解除した。正月には4人で近所の神社に初詣に行ったばかりの矢先の出来事だった。

児童は生後2カ月から5年以上、小学3年の姉と共に小橋川夫妻の元で育った。自閉症を含めた発達障害があるだけでなく、ぜんそく持ちで体が弱い。「実の親ではない」という告知を今行えば心身などに悪影響を及ぼす」という医師の助言もあって、「真実告知」をこれまでしていなかった。

児童福祉法施行令第32条は、児童相談所が児童の措置を解除する際、「児童やその保護者の意向が当該措置と一致しない場合、都道府県児童福祉審議会の意見を聞かなければならない」と規定している。つまり、里親から離れることを希望していないにもかかわらず里親宅から引き離す場合には、児童福祉審議会に意見を聞くことになっているが、このプロセスを経ていなかった。

「子供の状態を顧みずに一時保護をすることや、実の親が申し立てると里子を引き渡さなければいけない弱い立場にある里親の現状を知ってもらいたい」。小橋川夫婦は県を相手取り那覇地裁に訴訟を起こした。実親に引き渡す場合は、「児童の特性を考え、告知や面会に時間をかけるべきだ」と主張。引き続き委託先を夫妻にするよう求めた。

ところが、地裁は「委託措置解除は訴訟の対象となる処分に当たらず、原告適格もない」とし、申し立てを却下した。ただ、訴状では、実母は県外に住んでいて、離婚し、経済的な部分も含めて養育が可能か懸念が残るとした。夫婦はすぐに福岡地裁那覇支部に控訴。子供がどの環境で育つことが適切か、司法に判断を求めたいと希望している。

ネット署名活動に反響、「勝手すぎる」など支援の声も

久美子さんは記者会見で「本当の親が引き取れ、子供が幸せになれるなら、その方がよい」と強調した上で、「実親に会わせたくない、告知をしたくないというわけではない。発達障害が落ち着くまで、もうしばらく待ってほしい」と話し、県や児相に対して柔軟な対応を求めた。

「沖縄県のコザ児童相談所の余りにも一方的な対応に憤りを感じてます。児童には自閉症スペクトラム症等の特性があり、5年以上も実の親子のように一緒に生活していたのに突然の引き離しにより一時保護所に入れられ、大変な不安を抱えていると思います。児童のためにも、一時保護の委託先を里親のもとにするよう、コザ児童相談所に求めます」

里子と里親の強引な引き離しに反対
続々と支援が寄せられるネット署名(画像は一部加工しています)

学さんはネットで署名活動を始めた。たった5日間で5万を超える署名が集まった。そこには、「実親も児相も勝手すぎる」「無理やりな措置が子供の心にどう影響するのか考えたのか」などとする児相や地裁への批判と共に、多く支援のメッセージが寄せられている。「いつ自分たちも子供と引き離されるか分からない」と弱い立場を案じる里親のコメントもあった。

実親に引き渡された現在、夫婦が実親の住む都道府県の児相との連携が必要になるが、制度の壁をどう乗り越えることができるか、控訴審の行方が注目される。

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