書評の最新記事

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『カフェの世界史』増永菜生著 お菓子の歴史も共に【書評】 

著者はルネサンス期イタリア史の研究者で、2017年秋からイタリアに留学し、ミラノに住む。カフェに入ってみるとお菓子やパンのショーケースがあり、カウンターでエスプレッソを飲んでみるとお腹の中が温かくなった。値段は1・1ユーロで、驚くほどの安さ。日本でのコンビニコーヒーくらいの値段だったという。

『恋する仏教』 石井公成著 東アジアの恋愛文学を育てた【書評】

仏教とキリスト教の善悪観の最大の違いは「苦」と「罪」にある。苦は人間の努力によって何とかなるが、罪は神が遣わしたメシアに頼るしかない。その違いが、愛に対する自由度を大きく変えた。

『星の牧場』庄野 英二著【書評】

この童話はイシザワ・モミイチという復員兵の物語だ。モミイチは牧場で育ち、子供の頃は馬もたくさんいたが、大きくなる頃にはほとんどが牛

『住職たちの経営戦略』田中 洋平著【書評】

本書は少子高齢化や家族葬の広がりで存続の危機に瀕(ひん)している現在の寺の話ではない、今に続く寺檀制度が成立した江戸時代も、18世紀には人口減少に見舞われ、多くの寺が経営難に陥った。それをどう克服したか、史料を基に読み解いている

『日欧文化比較と国家表象』飯田 操著【書評】

本書のテーマとなる期間は、幕末の1854年のペリーの砲艦外交による「開国」と日米和親条約の締結、開港時の不平等条約の抜本的な解消、さらに1904年の予期せぬ黄禍論に至るまでの期間である

『宮内官僚 森鷗外』野口 武則著【書評】

森鷗外が陸軍省医務局長(軍医総監・中将相当官)を辞職したのは大正5年、54歳の時だった。その翌年の暮れ、宮内省帝室博物館(現東京国立博物館)総長兼図書頭(ずしょのかみ)に就任した

『イスラームからお金を考える』長岡 慎介著【書評】

著者がエジプトでの調査に協力してくれた人に「ありがとう」と言うと、怒られたという。天国に行く可能性を高めるために協力したのに、感謝されると帳消しになるからだ。

『漢字はこうして始まった』落合 淳思著【書評】

中国では新石器時代の末期、大きな集落が周辺の集落を支配する体制が出現する。都市国家だ。その後、紀元前20世紀ごろになると広大な領域を支配する「王朝」が登場する。その過程で重要な役割を果たしたのが青銅器の生産だった

『ラトランド、お前は誰だ?』ロナルド・ドラブキン著【書評】

1898年、米西戦争に完勝した米国は、スペインからグアム島を獲得し、フィリピンを3千万㌦で購入し、スペインが「内海」と豪語していた太平洋の覇権を屹立(きつりつ)させようともくろんでいた。 それが日米対決へと展開することになる

『許されざる者たち』島田 洋一著【書評】

クリント・イーストウッドがメガホンを取った復讐(ふくしゅう)がテーマの西部劇を想起するが、ここでは誰のことを指すのか

『あした出会える樹木100』亀田 龍吉著【書評】

散歩をする楽しみはいろいろある。軽い運動になるのでリラックスし、考えにひらめきがやって来ることがある。そしてそれを飽きさせないものにしているのが、花々や鳥たちに出会えることだ

『神仏融合史の研究』吉田 一彦著【書評】

著者はまず「神仏習合」ではなく「神仏融合」だと主張する。戦前、歴史学の権威・辻善之助が、明治の神仏分離以前の神仏関係を「習合」とし、日本の独自的な宗教現象だとしたことから広く認められてきたが、アジア各国を調査した著者は、実態に反するという

『環境省レッドリスト 日本の絶滅危惧生物図鑑』岩槻邦男・太田英利編【書評】

いつだったか、「絶滅危惧生物」というタームを見聞したことがあった。その時は、ああそうかといった感想だったようだ

『文芸編集者、作家と闘う』山田裕樹著 伴走者としての回想記【書評】

「文芸編集者」とタイトルにあるので、純文学系の編集者と思ってしまうが、実際はエンターテインメント系の編集者のことである。

『歌集 ゆふすげ』 美智子著 今の日本を代表する歌人【書評】

書名のゆふすげはユリに似た黄色い花で、別名きすげ。旅に出た皇太子を御所で待っている時に詠まれた「三日(みか)の旅終へて還らす君を待つ庭の夕すげ傾(かし)ぐを見つつ」(昭和49年)などの歌に出てくる。歌人の永田和宏氏は解説で、「茎はまっすぐでも、花は少し傾いだように咲く…。このような一点の些細な発見が、歌をすっくと立ちあがらせてくれる」とし、今の日本を代表する歌人と評価している。

『海とサルデーニャ』 D・H・ロレンス著 文明の網にかかっていない島【書評】

この英国人作家にとってイタリアは深い縁のある国。妻となるドイツ人のフリーダと駆け落ちして逃れたのもこの国。名作『息子と恋人』を完成させて独自の文明観を発展させたのもこの国だった。

『続 音楽はお好きですか?』藤岡幸夫著 指揮者と演奏者の関係を見る【書評】

本書は、前書と同様、行間から明るい声がこぼれてくるような本である。本書の方が幾分張りのある声になっている。

『クライミング・マインド』ロバート・マクファーレン著 試練を追求した登山家の歴史 【書評】

「わたしたちは、高みで経験することはまったく人それぞれの、個人的なものだと思い込みがちかもしれない。けれども本当は、わたしたちひとり残らず、ほとんど目に見えない、入り組んだ感性の系譜の継承者なのだ」

『霊性の日本思想』末木文美士著 宗教が発展させた霊性【書評】

NHKで再放送されたドラマ「坂の上の雲」を見ながら、短期間で国民国家を形成した日本人の霊性について考えた。歴史学者の所功氏によると、その始まりは崇神(すじん)天皇時代の天津神(あまつかみ)と国津神(くにつかみ)の習合で、家族国家としての国の形が作られたという。「天皇の赤子」という素朴な感情が急速な国軍の編成を可能にし、それが多大な血を満州などで流すことにもなった。

『日本史 敗者の条件』呉座勇一著 歴史学者らしい鋭い見解【書評】

会田雄次『敗者の条件』(中公新書)という本がある。60年も前に刊行されたものだ。それを思い出した。

『検証 暴走報道』加藤文宏著 左派リベラルは死んだ【書評】

安倍晋三元首相の銃殺事件以来、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、政府から反社会的勢力と断定されている。

【書評】『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』斉藤友彦著  デジタル記事の可能性を探る

新聞記者(共同通信)が、人事異動でネット記事配信の担当になり、どうネットで読まれる記事を作るかを実践的な例を挙げながら紹介している。

【書評】『夢で出会った哲学者たち』野田啓介著 ソクラテスから道元まで

ニューヨーク在住の哲学者である著者が50年近く前、20代前半に見た五夜連続の夢をつづっている。学んでいる哲学者たちに会い、話をしたのだから、至福の時間だっただろう。

【書評】『隣の国の人々と出会う』斎藤真理子著 世界の謎の一端が解ける

著者は韓国文学の翻訳者。仕事は韓国語を読み、日本語で書くこと。その感触を、トンネルの中で二つの言語と自分がこだましている、と例える。

【書評】『地球スケッチ帖 第1集』川田きし江著 記憶と追憶の旅路

何ともすごい本である。見開きで左㌻にスケッチ、右㌻にその解説文、それが全部で54編収録されていて、しかも描かれている場所は、ともかくも地球全体。どうしてこの地点を選んだのか、いかにしてこの地点にたどり着いたのか。不思議と言えば不思議である。まさに「地球スケッチ帖」というだけある。

『過去と思索(4)』ゲルツェン著 商人が新しい世界の原型に【書評】

ロシア人作家の自伝的回想記で、この巻では1847年から51年まで、著者35歳から39歳までの出来事と、小論文が掲載されている。西欧に革命の嵐が襲った時代だ。

『海がつくった国際都市』加藤隆久著 神戸の歴史をたどる散歩【書評】

著者は、神社を支える44戸の神戸(かんべ)が神戸という地名の由来になった生田神社の名誉宮司。カラーグラビアに、神戸市垂水区の五色塚(ごしきづか)古墳から明石海峡大橋を遠望する写真がある。海上交通の要衝に4世紀後半に築造された兵庫県下最大の前方後円墳は、海との関わりが深い有力者の墓であろう。同古墳の整備・再現を構想した考古学者の坪井清足(きよたり)は、古代技術の粋を集めた五色塚古墳と現代技術の粋を集めた明石海峡大橋とを見比べられるようにしたのである。

『スパルタ』長谷川岳男著 古代ギリシアの強国の実態【書評】

古代ギリシア世界の一方の雄だったスパルタは「スパルタ教育」で知られる。日本では明治初期、この都市国家の名が伝わった。虚弱な男子は崖に捨てられた。30歳まで教育が続く。20歳~60歳の男は毎日の晩餐(ばんさん)が共同で行われた。

『ハンス・フォン・ビューロー』アラン・ウォーカー著 19世紀、ピアニスト・指揮者で活躍【書評】

ようやく我々は、本書によって、19世紀の音楽界を闊歩(かっぽ)したハンス・フォン・ビューロー(1830~94年)の全体像を掌握(しょうあく)することができる。ビューローは、ピアニスト、また指揮者として生涯3000回以上のコンサートを開いた。しかもコンサートにおいて自分の目の前に譜面を開かなかった。

『新編 空を見る』文・平沼洋司、写真・武田康男 魂の栄養になってきた大空 【書評】

著者は気象庁に勤務し、各地の気象台で観測と予報の仕事をしてきた気象学者。本書は、「空の写真家」武田氏の美しい写真の数々と共に、さまざまな気象現象について語ったフォト・エッセー。
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