書評の最新記事

最新記事一覧

『持続可能なメディア』下山進著 技術軽視の傾向を指摘【書評】

「持続可能」とは「生存」のこと。「平和」というイデオロギーを叫ぶだけで民間企業であるメディアが存続することはない。名著『2050年のメディア』(文春文庫)の著者のコラムをまとめたのがこの新書だ。

『江戸東京 庶民信仰事典』 川副秀樹編著 身近な神仏融合の宗教史 【書評】

日本は縄文時代からのアニミズム的な庶民信仰が残っていて、土地の神信仰に親和的な仏教が広がった。それは、キリスト教が世界に広がった事情と比べて明らかだ。同時に、神信仰を吸収して仏教も変容した。「草木国土悉皆(しっかい)成仏(じょうぶつ)」の平安密教はインドや中国にはない思想で、哲学者の梅原猛は日本ならではの生命哲学と高く評価している。

【書評】『生きる言葉』俵万智著 自分の心の音楽を言葉にする

初めての歌集『サラダ記念日』がベストセラーになり、目の回るような忙しさにあった著者が、恩師の佐佐木幸綱に言われたのは「君は、心の音楽を聴くことができる人だから、何があっても大丈夫」。そう、詩は心の音楽を言葉にしたものなのだ。

『明治維新という物語』宮間純一著 地域それぞれで異なる維新観 【書評】

明治維新とは何だったのか。著者はさまざまな地方に目を向け、維新との関わりを調べるとともに時の中で見方が変容していく様子も示していく。

『翻訳者の全技術』山形浩生著 9割の理解ができる翻訳で  【書評】

翻訳という仕事では、言語の壁にどう向き合っているのだろうか。著者がこれまで訳してきた書をみると、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏著『21世紀の資本』(みすず書房)、ロシア大統領プーチン氏著『プーチン重要論説集』(星海社新書)、英国の作家ジョージ・オーウェル著『一九八四』(星海社、2024年)など。いずれも小難しそうという印象だ。

『歴史のダイヤグラム〈3号車〉』 原武史著 「あのとき」へのタイムトラベル  【書評】

何となく、そばに置いておきたい本、である。本書に収録されている81編のショート・エッセーは、3㌻弱で、しかも8×5㌢の関係写真付きである。全体が、第1章「時刻表から読み直す、あの事件」、第2章「皇族も政治家も、みんな鉄道を使っていた」、第3章「作家が愛した線路」、第4章「あの日の駅弁、思い出の車輛」、第5章「旅情の記憶」となっている。

『47都道府県・城下町百科』野間晴雄編著、山近博義・矢野司郎・関口靖之・石坂澄子著 【書評】

江戸幕府は元和元(1615)年、豊臣秀頼を大坂城で滅ぼした2代将軍徳川秀忠が一国一城令を出した。一国に大名が居城あるいは政庁とする城郭は一つに限り、その他は全て廃城にするという大名統制令。直後に出した武家諸法度(ぶけしょはっと)では新城建設、居城の無断修補を禁じた。

『裁判官の正体』井上薫著 元当事者が語った内幕【書評】

検事や弁護士は分かりやすいが、裁判官は分かりにくい。元裁判官が「裁判官はこういう者です」と語ったのがこの本だ。

『ハイエク入門』太子堂正称著 「自生的秩序」形成への道 【書評】

『隷属への道』の著者フリードリヒ・ハイエク(1899~1992年)は、ファシズムや共産主義など全体主義と対峙(たいじ)した経済学者として知られてきた。が、彼の経済理論は一般にはほとんど知られておらず、一貫して主張した「自生的秩序」論を理解するためにはその理解が不可欠だと著者は言う。

『こえび隊、跳ねる!』こえび隊編著、北川フラム監修 瀬戸芸を支えるボランティアたち【書評】

石破首相が看板政策の地方創生を進めるため、居住地以外で継続的に関わる自治体を登録する「ふるさと住民登録制度」を創設するという。

『アジア系アメリカを知るための53章』李里花編著歴史的背景と現在を描く【書評】

アメリカ合衆国の「アジア系」の人口は、現在、2400万人であり、総人口の約7・2%を占める。その最大国は中国系であり、19世紀半ばのゴールドラッシュに労働移民として大量入国する。

『潤日』舛友雄大著 形成される中国人コミュニティー【書評】

日本語ができないにもかかわらず、中国のアッパーミドル層を中心に日本へ居住希望の人々が増加している。友人の死をきっかけに、その背景にある理由や日本での中国人の暮らしぶりを著者が丹念に取材し、浮き彫りにしたのが本書だ。

『田んぼのまん中のポツンと神社』 えぬびい写真・文 圃場整備が生んだ日本的風景【書評】

田舎を旅すると、田んぼの中にポツンと立つ小さな神社をよく見かける。郷愁を感じさせる日本的風景の一つだ。廃虚や電話ボックス、秘境など各地の不思議な場所を取材している著者が、そんな神社を集めた写真集。関東から東北が多いのは水田開発の歴史による。

『中央線随筆傑作選』南陀楼綾繁編 沿線に芸術家・文化人が集う【書評】

中央線というのは、東京~名古屋を走る中央本線のうち、東京~高尾間のことを呼ぶそうだ。その前身、甲武鉄道が新宿~立川間を結んで開業したのは1889年。1906年に国有化された。

【書評】『奈良時代の大造営と遷都』小笠原好彦著 遺跡が語る仏教立国の歩み

聖武(しょうむ)天皇の命日とされる5月2日、東大寺で聖武天皇祭が営まれた。大仏殿での法要は外国人を含む多くの観光客が見守り、聖武天皇の発願(ほつがん)で造立された大仏の国際的な開眼(かいげん)供養をしのばせていた。

『正岡子規』坪内捻典著 現代日本語を作った俳句革命家【書評】

子規について司馬遼太郎は『坂の上の雲』で「俳句、短歌といった日本のふるい短詩型に新風を入れてその中興の祖になった」としている。

『仏教由来の日常語事典』大正大学綜合佛教研究所/現代日本語における仏教語源研究会編 意味語源などを平易に解説 【書評】

実に興味深いテーマである。我々の日常語の深淵(しんえん)に近づくと思っただけでうきうきとするではないか。それも仏教語とは。

『自民党が消滅する日』岩田温著 左傾化と左翼迎合の果て【書評】 

保守系の論客が次々と自民党に愛想を尽かしている。その1人が、著者で、保守系政治学者の岩田温氏だ。

『吹部ノート』オザワ部長著 吹奏楽に懸ける12分間の青春 【書評】

全日本吹奏楽コンクールは日本中の吹奏楽部員たちの憧れの舞台。そのステージで演奏するには厳しい予選を勝ち抜かなければならない。

『鬼無のももたろう』タイチ絵・鬼無観光協会文 鬼の供養をした桃太郎【書評】

今年4月、香川県高松市で「桃太郎の鬼退治」伝説が伝わる8団体が参加し、第20回桃太郎サミットが開かれた。テーマは「本当は鬼とも仲良くしたかったきなしの桃太郎」。大会記念に作られたのが本書。

『フッサール入門』鈴木崇志著 今も続く現象学運動の創始者【書評】

現象学とは、「現れ」をどう「認識」したかを問う学問で、あらゆる哲学の根本問題だという。著者は「世界とかかわる私の経験の仕組みを解明し、日常の事柄に新しい視点を与え、身近な他者ともう一度出会いなおす試み」と説明する。それなら、哲学者でなくても関心が向く。

『仏教は科学なのか』エヴァン・トンプソン著 仏教モダニズムの間違い【書評】

2008年に浅草寺で開かれた世界仏教徒会議で、座禅の精神療法をきっかけに禅宗の僧になった外国人参加者の多さに驚いたことがある。そこで旧知の曹洞宗の僧に、「瞑想(めいそう)と座禅は同じか」と聞いたところ、「違う」との返事。

『植物たちに心はあるのか』 田中修著 人も学ぶべき生き方の極意【書評】 

私たちは生活の中で、植物に心があるように感じる機会は多い。草花をめで、絵画に描き、詩歌に詠んで、心を寄せている。慶事があれば花を飾って祝う。誕生花、花言葉、門松、御神木など私たちの気持ちを託す例は枚挙にいとまがない。

『ヒトとヒグマ』増田隆一著 交流・関係性には深い歴史【書評】

この本がテーマとするのはヒグマだ。 ヒグマは北方系、ツキノワグマは南方系。日本の哺乳類ではヒグマが最大。体重は秋が最も増える。冬眠するために栄養が必要だからだ。

『老いの失敗学』畑村洋太郎著 80歳からの人生を楽しむ【書評】

人生100年、という言葉が、比較的日常の会話の中で語られるようになっている。それにしても、やはり100歳とはすごい。そこに到達するバリアはもしかしたら80歳かなと思う。

『英雄伝記―オイゲン公子の生涯ー』宮内俊至著 輝かしい生涯を描く【書評】

本書の主人公、オイゲン公子(1663~1736年)は、フランスのサヴォワ公国のソワソン伯爵ウジェーヌ・モーリスの五男坊であった。彼はパリではウジェーヌと呼ばれていた。

『過去と思索(5)』ゲルツェン著 家族の悲劇を経てロンドンへ【書評】

ロシア人作家の自伝的回想録で、4巻末から5巻に続くのは「家庭の悲劇の物語」の章。西洋に亡命したゲルツェン一家を二つの悲劇が襲った。

【書評】『汽水域』岩井圭也著 殺傷事件を追うフリーの事件記者

フリーの事件記者が主人公。メディアに関わる人間であれば、似た立場に置かれるし、同じ苦渋を味わうに違いない。「記者クラブ」という特権を有している大手メディアでない媒体にとっては、親和性があると思える。

『四国の名城を歩く 徳島・香川編』松田直則・石井伸夫・西岡達哉編 戦国時代の郷土が分かる【書評】

評者は48歳で香川県に帰ると文化財保護協会に入り、古墳の草刈りから城跡歩き、郷土史の勉強会などを楽しんでいる。本書執筆者の幾人かも知り合いで、正確な城の縄張図が掲載されているため城歩きには最適だ。発掘調査の結果、国の史跡に指定されるものもあり、郷土愛を高めている。

『趙光明詩集』中国現代詩人文庫5 求道的な詩人の彷徨世界【書評】

中国東北部地方、延辺などに住む朝鮮族の詩人だけを集めた詩集も、本書によって完結となる。趙光明は吉林省生まれで、新聞記者や編集者を経て現在はフリーランスのライター。
人気記事
Google Translate »