書評の最新記事

最新記事一覧

『救国の総理 高市早苗』宇津木 愛子著 サッチャーと重なる女性総理 【書評】

 政治とは程遠い理論言語学の専門家である著者が、なぜ本書を執筆したのか。それは、ケンブリッジ大学でサッチャー政権下のイギリスを体験していた著者に、日本を守るために命懸けで戦おうとする日本初の女性総理大臣の姿が重なったからである。

『中国に奪われた祖国チベット』 ペマ・ギャルポ著 チベットの悲劇を繰り返すな 【書評】

 7月2日、国連本部前でチベット人の男性が焼身自殺をした。中国で「民族団結進歩促進法」が施行され、激しさを増す弾圧への抗議と、自由を剥奪された民族の悲痛な叫びを訴える行為だった。本書は、中国によるチベット支配の悲劇を教訓に、失われた日本の良き文化・伝統の回復を訴える一冊だ。

『日本の森林に新しい命を―山村に住む森林学者からの提言―』 岩井 吉彌 著 EUの「条件不利地域」に相当 【書評】

 誰が言ったのだろうか、日本は「木の文化の国」であると。なんとなくホッとさせるネーミングである。事実、木造建築に関して、世界一古いのは法隆寺、世界で最大規模なのは東大寺の大仏殿、世界で最も高い木造建築は東寺の五重塔である。

「ミッドウェイ海戦」大木毅著 敗戦のはじまり、隠蔽の物語 【書評】

 1942(昭和17)年6月5日から7日にかけて行われたミッドウェイ海戦は、太平洋戦争での日本軍の攻勢の「終わり」であり、45(昭和20)年8月15日に迎える敗戦への「はじまり」だった。極めて重要な海戦だったにもかかわらず、今も解明されたはずの事実が無視され、否定された「伝説」や「神話」が通用している。このあいまいな事態に対して、軍事史の第一人者である著者が、事実として分かっていることと、議論の答えが出ていないことを分け、この海戦研究の最前線を示そうとした語り下ろしの書である。

『世界史の中の明治維新』 加藤 聖文著 日本はなぜ「帝国」を目指したか 【書評】

 帝国主義の欧米列強に植民地にされるのを避けようと、列強をモデルに近代化を急いだ日本が、列強のような「帝国」になったのが1910年の韓国併合の時である。その最大の要因が、併合に反対だった伊藤博文が前年、安重根(あんじゅうこん)に暗殺されたことは、歴史の大きな皮肉なのだろう。

『英米文学の愉楽 ドライデンからハルキ、ソローから新渡戸稲造』 川成 洋、吉岡 栄一、古山 みゆき、山根 正弘編 【書評】

 久しぶりに、本格的な「英米文学」研究書と出合った。思えば、1991年の大学設置基準の改正によって、東京大学の教養学部を除く全国の大学で教養課程が廃止され、英米文学研究は「冬の時代」に突入したのだ。 本書の章立ては、8編の英文学研究、2編の米文学研究、2編の日本人論であるが、この2人の日本人に共通しているのは、「われ太平洋の橋とならん」という志であった。

『ヴィヴァルディと私』 ティツィアーノ・スカルパ著 中山 エツコ訳 女性たちの命でできた協奏曲 【書評】

 この小説はイタリア最高の文学賞であるストレーガ賞を受賞した作品で、映画化され今年5月、日本でも公開された。18世紀のヴェネツィアにあるピエタ養育院が舞台で、ここでは親に捨てられた少女たちが尼僧の手で育てられ、教育されている。仕事を覚えて嫁いでゆく者もいるが、才能のある少女らは音楽を教えられ、彼女らによって構成される楽団は優れた演奏で知られていた。

『幸せな孤独』 前野 隆司著 「老いる」とは「幸せになる」こと 【書評】

 幸福学(ウェルビーイング)研究の第一人者が、孤独と幸福との関係を分析し、対処法を指南している。自分が不幸だと感じるのは孤独感からで、孤独なのに幸せそうな人は結構いる。それが幸せな孤独で、その要素は①うけいれる(自己受容)②ほめる(自尊心)③らくになる(楽観性)。調査によると、幸せそうな高齢者には、これらの要素が共通していたという。

『技を極める 合気道』 植芝 守央著 試合せず、稽古で心身を鍛錬 【書評】

「礼に始まり礼に終わる」と言われる武道は礼儀作法を重んじるため、礼儀作法が身に付く習い事の一つとして子供たちの人気を集めている。稽古では相手と真剣に向き合うため、高い集中力、肉体面・精神面の両方を鍛えられるというメリットもある。人気の順位でいうと、第1位空手、第2位柔道、第3位剣道、第4位少林寺拳法、第5位合気道となっている。

「山を歩く、魂が還る」 矢作 直樹著 山は天と地をつなぐ場所 【書評】

山との関わりは人により千差万別。幼い頃、東京の町田市に住んでいた著者が最初に登った山は草戸山(くさとやま)。高尾山の南方にあり、高尾山口駅の東から南下する尾根の先にある山だ。

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』 中野 信子著 理にかなった利他、行動、祈り

 「運がいいとか 悪いとか 人は時々口にするけど……」さだまさし氏が作ったグレープの楽曲『無縁坂』の一節だ。人生山あり、谷あり、一生を考えた時、良いこと、悪いこと、相半ばするが、人それぞれの捉え方によって「良い人生だった」と感じるか「悪い人生だった」と思うかに分かれてしまう。 

『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』 清武英利著 独裁に立ち向かった告発記録 【書評】

2011年11月11日、読売新聞の元社会部記者で巨人軍球団代表だった著者は、記者会見を開いて、会社のコンプライアンス違反を告発した。自称「最後の独裁者」で「読売のドン」こと故・渡邉恒雄氏に反旗を翻した。

若島 正訳『オフェイロン短篇集』 人物造形の鮮やかさが魅力 【書評】

 アイルランドを代表する現代作家の一人ショーン・オフェイロン(1900~91)の短篇集。1946年発表の「無垢」から73年の「内外コンプレックス」まで10編を収める。

『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』 遠藤誉著 日本軍と協力していた中共軍 【書評】

 1945年8月、4歳の著者は家族と旧満州の長春にいて、攻め込んできたソ連兵士に出会った。翌年2月、ソ連兵はいなくなり、代わりに中共軍が攻撃してきて入城。父の経営する製薬工場を若い八路軍兵士が守った。著者は市街戦の流れ弾で負傷したが、その兵士がいろんな話をしてくれた。その中に毛沢東のことが出てきて「人民を救ってくれるんだ」と言う。

『世界から見た日本の保守』 谷本 真由美著 保守とは何かを問う 【書評】

 近代政治における「保守」と「革新」は欧州で生まれた概念で、保守は王党派を支持する貴族や教会の権威を維持しながら穏やかな変化を目指し、革新はそれらを排除して急激な変化を求めた。

『AIと人間 知の責任について』 三宅 善信著 神道者が生成AIを論じる意味 【書評】

 金光(こんこう)教教会長で神道国際学会理事長の著者は、神道者がAIを論じる意味について、「AIの時代において、最も問い直されているものこそが、神道が長らく言葉にせずに抱え続けてきた世界観だからである」と述べる。さらに、「AIは責任を引き受けない。だが、それはAIが『悪い』からではない。責任とは、死にうる存在にしか宿らないからである」と。

『夏蜜柑とソクラテス』 新井 紀子著 「解ける」より尊い「わかる」【書評】

 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』で知られる新井紀子氏のエッセー集。数学者で人工知能(AI)研究の第一人者が書いた本と聞けば、堅い論考を想像するかもしれないが、本書は何気ない日常を知性と教養で見つめ、女性特有の細やかなタッチで綴(つづ)ったとても読みやすい作品となっている。

『「マッカーサーの日本占領」への疑問とは』 杉原 誠四郎著 占領政策の功罪を検証【書評】

 日本は7年の占領期間を経て主権を回復したが、戦後レジームから脱却できずにいる。言い換えれば、いまだに「精神的な占領下」にあり、当時の歴史を正しく総括できていないのだ。日本は「マッカーサーの日本占領」を経て、何を解決すべきだったのか、また、何が解決されずに残ったのか。本書はこうした疑問を明らかにするものである。

『古墳時代の歴史』 松木 武彦著 古代国家の黎明期を大胆に【書評】

 考古学者には発掘調査を基に大胆に時代を語る人と、それを控える人とがいて、著者は前者。倉敷市の楯築遺跡を巡るシンポジウムで、「楯築は前方後円墳の原点で、ここに誕生した特殊器台祭祀は2世紀後半の倭国大乱を鎮めたのではないか」と語っていた。

『宗教のアメリカ』 藤本 龍児著 各州憲法にうたわれた「神」【書評】

 本書はアメリカの宗教について論じた本ではなく、アメリカという国それ自体が、西洋文明から受け継いだ「ユダヤ―キリスト教」的世界の上に成り立っている、ということを示した本である。

『日本共産党 悪魔の事件簿』 松崎 いたる著 元党員による内部告発集【書評】

 「殺人」「スパイ」「冤罪(えんざい)」「税金還流」「性犯罪」「海外逃亡」「謎の突然死」――。いずれも共産党員が関わった犯罪やスキャンダルだが、大手メディアは報じようとせず、「なかったこと」にされようとしている。

『ハプスブルクの文化を知るための71章』 川成 洋編著 結婚政策で大帝国に【書評】

 ハプスブルク王家は13世紀初頭から第1次大戦までの長い歴史を重ね、1452年以降、神聖ローマ帝国皇帝位をほぼ独占し、ヨーロッパの10余りの大国を傘下に収め、しかもハプスブルクという家名を国名にしていたのだ。

『斉明天皇』 市 大樹著 悪評高き女帝を再評価【書評】

 「鬼の雪隠(せっちん)」や「酒船石(さかふねいし)」など飛鳥(あすか)に点在する不思議な巨石をゾロアスター教の遺跡と推理した松本清張は、斉明(さいめい)天皇が同教に傾倒していたとして最後の長編『火の路(みち)』を書いた。その後の発掘で松本説は否定されたが、古代史への興味を引き立てたと評価する古代史家も多い。

『光と糸』 ハン・ガン著 斎藤 真理子訳 現在は過去を救い得るのか【書評】

 2024年にノーベル文学賞を受賞した著者は、これを機に所感を求められ、過去の仕事を振り返る機会が与えられた。詩とエッセーを収めた本書は、受賞後初の作品集。詩人として、作家として、抱いてきた主題が語られ、それらの主題は韓国をはじめ現代世界の多くの人々が共有しているもので、確かにノーベル賞に値する作家だったと実感される。

『長くのびた盆地』ジョン・スタインベック著 青山 南訳 愛着の深かった故郷の地【書評】

 長くのびた盆地とは、米国・カリフォルニア州のサリーナス・ヴァレーという実在の地。著者(1902~68年)が生まれ育った土地だ。

『歴史が見えるイギリス図鑑』近藤 存志著、野田 映美絵 建築の変化から歴史たどる【書評】

「ある時代の真の性格は、その時代がどんなに偽装しようとも、その建築を通じて明らかにされる。…建築をみればそれが生み出された時代の性格が、たちどころに判る」  本書の「はじめに」に引用されたスイスの建築史家ジークフリート・ギーディオンの言葉だ。

「『100万回生きたねこ』のナゾを解く」宮崎 哲弥著 死生観を深めるための絵本【書評】

 佐野洋子の『100万回生きたねこ』は、100万回死に、100万回生き返る「とらねこ」が主人公の絵本で、1977年の刊行以来、250万部を優に超えるロングセラー。海外でも広く知られ、特に中国では280万部も売れているという。著者はその理由を、「中国の都市部において、『自分は自分のもの』という意識が浸透しはじめた」からと推測している。

『大統領に告ぐ 硫黄島からルーズベルトに与ふる書』門田 隆将著 地下壕で書かれた少将書簡【書評】

先の大戦末期、硫黄島での戦いは熾烈(しれつ)を極めた。その戦闘のさなか、日本軍将校によりアメリカ大統領宛てに書かれた手紙に関しての経緯をまとめている。

『エベレストは居酒屋です』渡邊 直子著 圧倒的景色に悩みは小さく【書評】

 タイトルに驚かされた。世界一高い山と庶民のくつろぎの場とは結び付きにくいからだ。

『関係人口の時代』田中 輝美著 観光以上、定住未満で繋がる【書評】

毎年、山梨県の人口に当たる80万~90万人が減少し、地域消滅が現実となった時代に、注目されているのが「観光以上、定住未満」の関係人口である。
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