書評の最新記事

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『古墳時代の歴史』 松木 武彦著 古代国家の黎明期を大胆に【書評】

 考古学者には発掘調査を基に大胆に時代を語る人と、それを控える人とがいて、著者は前者。倉敷市の楯築遺跡を巡るシンポジウムで、「楯築は前方後円墳の原点で、ここに誕生した特殊器台祭祀は2世紀後半の倭国大乱を鎮めたのではないか」と語っていた。

『宗教のアメリカ』 藤本 龍児著 各州憲法にうたわれた「神」【書評】

 本書はアメリカの宗教について論じた本ではなく、アメリカという国それ自体が、西洋文明から受け継いだ「ユダヤ―キリスト教」的世界の上に成り立っている、ということを示した本である。

『日本共産党 悪魔の事件簿』 松崎 いたる著 元党員による内部告発集【書評】

 「殺人」「スパイ」「冤罪(えんざい)」「税金還流」「性犯罪」「海外逃亡」「謎の突然死」――。いずれも共産党員が関わった犯罪やスキャンダルだが、大手メディアは報じようとせず、「なかったこと」にされようとしている。

『ハプスブルクの文化を知るための71章』 川成 洋編著 結婚政策で大帝国に【書評】

 ハプスブルク王家は13世紀初頭から第1次大戦までの長い歴史を重ね、1452年以降、神聖ローマ帝国皇帝位をほぼ独占し、ヨーロッパの10余りの大国を傘下に収め、しかもハプスブルクという家名を国名にしていたのだ。

『斉明天皇』 市 大樹著 悪評高き女帝を再評価【書評】

 「鬼の雪隠(せっちん)」や「酒船石(さかふねいし)」など飛鳥(あすか)に点在する不思議な巨石をゾロアスター教の遺跡と推理した松本清張は、斉明(さいめい)天皇が同教に傾倒していたとして最後の長編『火の路(みち)』を書いた。その後の発掘で松本説は否定されたが、古代史への興味を引き立てたと評価する古代史家も多い。

『光と糸』 ハン・ガン著 斎藤 真理子訳 現在は過去を救い得るのか【書評】

 2024年にノーベル文学賞を受賞した著者は、これを機に所感を求められ、過去の仕事を振り返る機会が与えられた。詩とエッセーを収めた本書は、受賞後初の作品集。詩人として、作家として、抱いてきた主題が語られ、それらの主題は韓国をはじめ現代世界の多くの人々が共有しているもので、確かにノーベル賞に値する作家だったと実感される。

『長くのびた盆地』ジョン・スタインベック著 青山 南訳 愛着の深かった故郷の地【書評】

 長くのびた盆地とは、米国・カリフォルニア州のサリーナス・ヴァレーという実在の地。著者(1902~68年)が生まれ育った土地だ。

『歴史が見えるイギリス図鑑』近藤 存志著、野田 映美絵 建築の変化から歴史たどる【書評】

「ある時代の真の性格は、その時代がどんなに偽装しようとも、その建築を通じて明らかにされる。…建築をみればそれが生み出された時代の性格が、たちどころに判る」  本書の「はじめに」に引用されたスイスの建築史家ジークフリート・ギーディオンの言葉だ。

「『100万回生きたねこ』のナゾを解く」宮崎 哲弥著 死生観を深めるための絵本【書評】

 佐野洋子の『100万回生きたねこ』は、100万回死に、100万回生き返る「とらねこ」が主人公の絵本で、1977年の刊行以来、250万部を優に超えるロングセラー。海外でも広く知られ、特に中国では280万部も売れているという。著者はその理由を、「中国の都市部において、『自分は自分のもの』という意識が浸透しはじめた」からと推測している。

『大統領に告ぐ 硫黄島からルーズベルトに与ふる書』門田 隆将著 地下壕で書かれた少将書簡【書評】

先の大戦末期、硫黄島での戦いは熾烈(しれつ)を極めた。その戦闘のさなか、日本軍将校によりアメリカ大統領宛てに書かれた手紙に関しての経緯をまとめている。

『エベレストは居酒屋です』渡邊 直子著 圧倒的景色に悩みは小さく【書評】

 タイトルに驚かされた。世界一高い山と庶民のくつろぎの場とは結び付きにくいからだ。

『関係人口の時代』田中 輝美著 観光以上、定住未満で繋がる【書評】

毎年、山梨県の人口に当たる80万~90万人が減少し、地域消滅が現実となった時代に、注目されているのが「観光以上、定住未満」の関係人口である。

「中国共産党が語れない日中近現代史」兼原 信克、垂 秀夫 著 【書評】

 中国の近代史は、共産党の秘密主義と宣伝工作によって、大きく歪(ゆが)められてきた。これを痛感してきたのは二人著者である前中国大使の垂(たるみ)秀夫氏と、安倍官邸で外交のキーマンだった兼原信克氏。

「終章ナチ・ハンター ナチ犯罪追及 ドイツの80年」 中川 竜児 著【書評】

ドイツ・ベルリンのシンボルとされているブランデンブルク門のすぐ近くに、2700基以上のコンクリート製の石碑が並んでいる。第2次大戦期にホロコーストで犠牲になったユダヤ人を追悼する「ヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」である

「歌よみに与ふる書」正岡 子規著、永井 祐翻訳【書評】

 「紀貫之は下手な歌人であって、『古今和歌集』はくだらないアンソロジーである」(「再び歌よみに與ふる書」翻訳)と子規が新聞「日本」に書いたのは明治31年、若過ぎる死の4年前だった。明治26年に同紙に俳論を連載し、俳句革命を主導してから6年後のこと。

『北方領土を知るための63章』名越 健郎・大野 正美・常盤 伸・小泉 悠編著【書評】

 75年ほど前、私は札幌の小学生高学年だった。夏休みに銭函(ぜにばこ)海水浴場に汽車に乗って行った。海水浴期間は10日くらい。だから海水浴場は混み合っていた。

「山岳信仰と修験道」 鈴木正崇著【書評】

 著者によると、幕末に17万人いた修験者は、山岳修行で得た験力(げんりき)により、庶民の健康から経済、心の問題までの日常的な悩みの相談に乗り、解決を助けていた。それが慶應4(1868)年の神仏判然令と明治5年の修験宗廃止令で一挙に失職した影響は大きかった。

「凪の人 山野井妙子」柏澄子著 【書評】

 山野井妙子さんは世界的なアルペンクライマーだ。2002年には夫・山野井泰史さんと中国チベット自治区にあるギャチュン・カン(7952㍍)北壁に登り、その功績により夫婦で植村直己冒険賞を受賞。

『リベラリズムという妄想』 ジョン・J・ミアシャイマー著、新田 亨子訳【書評】

 国際政治学者として有名な米国シカゴ大学のジョン・J・ミアシャイマー氏は「現実主義(リアリズム)」、その中でも特に「攻撃的現実主義(オフェンシブ・リアリズム)」の論客として知られるが、この本はその視点から「リベラルな覇権」という外交政策を痛烈に批判した一冊だ。

『バッハ 無伴奏チェロ組曲』スティーヴン・イッサーリス著、松田 健訳 【書評】

 著者は英国を代表する世界的チェロ奏者。本書はバッハのチェロ組曲集について、たゆみない研究と演奏体験から独自の考察をつづったガイド。

真珠湾攻撃の“定説”覆す 『真珠湾攻撃 ルーズベルトは知っていた』 白松 繁著【書評】

先の大戦における日本軍による真珠湾攻撃について、フランクリン・ルーズベルト米大統領は直後の議会演説で「日本は意図的に合衆国を欺こうとした」と非難した。結果、日本軍が平和交渉中に通告なく「騙(だま)し討ち」したとの説が広がった。

大日の使徒 川越 宗一著 ザビエル案内したヤジロウ【書評】

 キリスト教の「デウス」を密教でいう大宇宙本体の大日如来に模して「ダイニチ」と訳したのは、ザビエルを日本に案内したヤジロウとされる。

「大人の幸せは静かだ」テス著 大嫌悪時代を平凡に生きる【書評】

 現代の韓国社会はとても生きにくい社会であるようだ。夢はかなえ難く、心に傷を負った人は多く、平凡な幸福さえ得ることが難しい。著者は30代後半のエッセイストで、このエッセー集は20万人もの読者が共感したベストセラー。平凡に生きることの中に豊かさのあることを気付かせてくれる。

匿名への情熱 和田純著 政治と学識結んだ楠田實【書評】

 産経新聞の政治記者だった楠田實が、ケネディ米大統領が優秀なブレーンとの対話を基に政権を運営したのを知り、佐藤栄作に同様のブレーン設置を提案したのは佐藤内閣誕生の1年前。

体験からの同時代史的言葉『言葉の風~人にも動物にも愛の風を~』【書評】

最近、日刊紙の「読者発言欄」などに80代後半くらいの方たちの「発言」が目立っている。管見だが、男性の場合、80歳という年齢は大きい人生の峠のようである。

小泉八雲「見えない日本」を見た人 畑中 章宏著【書評】

 ラフカディオ・ハーンの来日は明治23年で、29年に帰化して小泉八雲と名乗り、『怪談』などを著して37年に54歳で没した。

「中国」という捏造 ビル・ヘイトン著、小谷 まさ代訳 【書評】

 「中国はどのような国になろうとしているのか?」こうした問いから本書は始まる。この国の成長を商取引や投資のチャンスと捉える風潮がある一方、不安を抱かないものは少ない。

「地球の歩き方 ハプスブルク帝国」【書評】

 とうとうこのテーマの本が出版された、これが私の第一声であった。日本の大学では欧州各国史が主流なので、このテーマの講座はない。ご苦労様でしたと言いたい。

「中国に媚びるな」石 平・金 文学共著【書評】

 二人の著者が中国の国民性を主題にして日韓中の文化の違いを論じた対談集。対談はテーマを決めて8回行われ、月刊『WiLL』(2024年11月~25年5月号)に掲載された。

『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』 佐藤 優著 【書評】

 背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され有罪確定になり、さらに「余命」宣告を受けるなど、波乱万丈な人生を生き抜いている評論家・佐藤優氏による定年後の人生の手ほどき本だ。 
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