書評の最新記事

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『仏教は科学なのか』エヴァン・トンプソン著 仏教モダニズムの間違い【書評】

2008年に浅草寺で開かれた世界仏教徒会議で、座禅の精神療法をきっかけに禅宗の僧になった外国人参加者の多さに驚いたことがある。そこで旧知の曹洞宗の僧に、「瞑想(めいそう)と座禅は同じか」と聞いたところ、「違う」との返事。

『植物たちに心はあるのか』 田中修著 人も学ぶべき生き方の極意【書評】 

私たちは生活の中で、植物に心があるように感じる機会は多い。草花をめで、絵画に描き、詩歌に詠んで、心を寄せている。慶事があれば花を飾って祝う。誕生花、花言葉、門松、御神木など私たちの気持ちを託す例は枚挙にいとまがない。

『ヒトとヒグマ』増田隆一著 交流・関係性には深い歴史【書評】

この本がテーマとするのはヒグマだ。 ヒグマは北方系、ツキノワグマは南方系。日本の哺乳類ではヒグマが最大。体重は秋が最も増える。冬眠するために栄養が必要だからだ。

『老いの失敗学』畑村洋太郎著 80歳からの人生を楽しむ【書評】

人生100年、という言葉が、比較的日常の会話の中で語られるようになっている。それにしても、やはり100歳とはすごい。そこに到達するバリアはもしかしたら80歳かなと思う。

『英雄伝記―オイゲン公子の生涯ー』宮内俊至著 輝かしい生涯を描く【書評】

本書の主人公、オイゲン公子(1663~1736年)は、フランスのサヴォワ公国のソワソン伯爵ウジェーヌ・モーリスの五男坊であった。彼はパリではウジェーヌと呼ばれていた。

『過去と思索(5)』ゲルツェン著 家族の悲劇を経てロンドンへ【書評】

ロシア人作家の自伝的回想録で、4巻末から5巻に続くのは「家庭の悲劇の物語」の章。西洋に亡命したゲルツェン一家を二つの悲劇が襲った。

【書評】『汽水域』岩井圭也著 殺傷事件を追うフリーの事件記者

フリーの事件記者が主人公。メディアに関わる人間であれば、似た立場に置かれるし、同じ苦渋を味わうに違いない。「記者クラブ」という特権を有している大手メディアでない媒体にとっては、親和性があると思える。

『四国の名城を歩く 徳島・香川編』松田直則・石井伸夫・西岡達哉編 戦国時代の郷土が分かる【書評】

評者は48歳で香川県に帰ると文化財保護協会に入り、古墳の草刈りから城跡歩き、郷土史の勉強会などを楽しんでいる。本書執筆者の幾人かも知り合いで、正確な城の縄張図が掲載されているため城歩きには最適だ。発掘調査の結果、国の史跡に指定されるものもあり、郷土愛を高めている。

『今、あなたに勧める「この一冊」』 川成洋・河野善四郎編 文学、政治、音楽などの本紹介【書評】

本には無関心で、読書をすれば頭痛になるとか、眠たくなると平然と言う若い人たちに、「こんなに面白い本、こんなにためになる本があります」をうたい文句に本書は編集されている。

『知られざるサメの世界』冨田武照・佐藤圭一著 未解決問題にスポットライトを【書評】

サメとは何か。サメの進化研究の第一人者ジョン・メイシ―博士が2006年に出版した『サメ・エイとは何か?』という著書で、40年以上にわたる研究の結論を出した。

『世界を変えたスパイたち』春名幹男著 ソ連崩壊とプーチン報復の真相 【書評】

世界中を震撼(しんかん)させた米国ホワイトハウスでのトランプ大統領とゼレンスキ―大統領の首脳会談の決裂。これこそ前代未聞の応酬。これを見て、ほくそ笑むのは、ウクライナへの軍事侵攻を司令したプーチン大統領であろう。

『マヌ法典』渡瀬信之著 ヒンドゥー教世界の原型【書評】

インドでヒンドゥー教の世界大会に参加した折、聖者に日本の仏教徒だと言うと「おまえもヒンドゥー教徒だ」と歓迎された。仏教の最後に現れた密教はヒンドゥーの神々を吸収したが、ヒンドゥー教では仏教を吸収し、釈迦(しゃか)はヒンドゥーの神ヴィシュヌの化身の一つだとしている。ヒンドゥー教の源流がバラモン教で、マヌ法典はその社会規範。

『禅的生活365日』文・玄侑宗久、書・菅沼雄風 一日一字で活発に生きる【書評】

コシヒカリの田植えの4月14日には「耕し続けるのが人生か」の言葉があり、「耕」の書が躍動していた。文には「いつ終わるとも知れず、効果もよく見えない真摯な営みである。思えば耕すこと(cultivate)から文化(culture)は生まれた。耕し続けるのが人生か」とある。そう言えば、「べらぼう」の蔦重が平賀源内からもらった書店の名は「耕書堂」だった。

『土と生命の46億年史』 藤井一至著 最古で最先端の知能を持つ土【書評】

土とは何か。どのようにして生まれたのか。またどのようにして土から生命や文明が生まれたのか。これが土壌学者の著者によるテーマだが、「母なる大地」といわれるように、科学よりはむしろ宗教のテーマではないのかと自問する。

『ファラオ』馬場匡浩著 古代エジプト王権の盛衰【書評】

ファラオは古代エジプトの王のこと。紀元前3千年~紀元前30年ごろまでファラオは存在した。約3千年間で240人以上の王が誕生した。王の使命はエジプト世界の安寧。トップであるファラオの下には宰相(内閣総理大臣)がいた。その下に、宮中関係・地方自治・租税関係などの高級官僚が続く。

『ルポ 〝霊能者〟に会いに行く』 友清哲著  「本物」は存在するのか? 【書評】

占いや霊能者というのは、色物扱いをされがちで、どこかうさんくさいイメージがある。要するに、怪しげなオカルト的な話になるか、科学的ではないということで全否定的なアプローチになりやすいのである。

『高浜虚子』坪内稔典著 昭和初期の俳句人気を主導【書評】

「流れ行く大根の葉の早さかな」の句について、虚子は「橋の上から小川を見ていると、大根の葉が非常な速さで流れていた。その瞬間、今まで心にたまりにたまって来た感興がはじめて焦点を得て句になった」と書いている。師の正岡子規が目指した「写生」が虚子に結実し、大衆に広がった象徴的な句で、明治の知識人が目指した、新しい日本語の誕生と言ってもいい。後に「天地流動の一端を切り取った感じ」と解説した花鳥諷詠(かちょうふうえい)論は日本人の心性とも言えよう。

『カフェの世界史』増永菜生著 お菓子の歴史も共に【書評】 

著者はルネサンス期イタリア史の研究者で、2017年秋からイタリアに留学し、ミラノに住む。カフェに入ってみるとお菓子やパンのショーケースがあり、カウンターでエスプレッソを飲んでみるとお腹の中が温かくなった。値段は1・1ユーロで、驚くほどの安さ。日本でのコンビニコーヒーくらいの値段だったという。

『恋する仏教』 石井公成著 東アジアの恋愛文学を育てた【書評】

仏教とキリスト教の善悪観の最大の違いは「苦」と「罪」にある。苦は人間の努力によって何とかなるが、罪は神が遣わしたメシアに頼るしかない。その違いが、愛に対する自由度を大きく変えた。

『星の牧場』庄野 英二著【書評】

この童話はイシザワ・モミイチという復員兵の物語だ。モミイチは牧場で育ち、子供の頃は馬もたくさんいたが、大きくなる頃にはほとんどが牛

『住職たちの経営戦略』田中 洋平著【書評】

本書は少子高齢化や家族葬の広がりで存続の危機に瀕(ひん)している現在の寺の話ではない、今に続く寺檀制度が成立した江戸時代も、18世紀には人口減少に見舞われ、多くの寺が経営難に陥った。それをどう克服したか、史料を基に読み解いている

『日欧文化比較と国家表象』飯田 操著【書評】

本書のテーマとなる期間は、幕末の1854年のペリーの砲艦外交による「開国」と日米和親条約の締結、開港時の不平等条約の抜本的な解消、さらに1904年の予期せぬ黄禍論に至るまでの期間である

『宮内官僚 森鷗外』野口 武則著【書評】

森鷗外が陸軍省医務局長(軍医総監・中将相当官)を辞職したのは大正5年、54歳の時だった。その翌年の暮れ、宮内省帝室博物館(現東京国立博物館)総長兼図書頭(ずしょのかみ)に就任した

『イスラームからお金を考える』長岡 慎介著【書評】

著者がエジプトでの調査に協力してくれた人に「ありがとう」と言うと、怒られたという。天国に行く可能性を高めるために協力したのに、感謝されると帳消しになるからだ。

『漢字はこうして始まった』落合 淳思著【書評】

中国では新石器時代の末期、大きな集落が周辺の集落を支配する体制が出現する。都市国家だ。その後、紀元前20世紀ごろになると広大な領域を支配する「王朝」が登場する。その過程で重要な役割を果たしたのが青銅器の生産だった

『ラトランド、お前は誰だ?』ロナルド・ドラブキン著【書評】

1898年、米西戦争に完勝した米国は、スペインからグアム島を獲得し、フィリピンを3千万㌦で購入し、スペインが「内海」と豪語していた太平洋の覇権を屹立(きつりつ)させようともくろんでいた。 それが日米対決へと展開することになる

『許されざる者たち』島田 洋一著【書評】

クリント・イーストウッドがメガホンを取った復讐(ふくしゅう)がテーマの西部劇を想起するが、ここでは誰のことを指すのか

『あした出会える樹木100』亀田 龍吉著【書評】

散歩をする楽しみはいろいろある。軽い運動になるのでリラックスし、考えにひらめきがやって来ることがある。そしてそれを飽きさせないものにしているのが、花々や鳥たちに出会えることだ

『神仏融合史の研究』吉田 一彦著【書評】

著者はまず「神仏習合」ではなく「神仏融合」だと主張する。戦前、歴史学の権威・辻善之助が、明治の神仏分離以前の神仏関係を「習合」とし、日本の独自的な宗教現象だとしたことから広く認められてきたが、アジア各国を調査した著者は、実態に反するという

『環境省レッドリスト 日本の絶滅危惧生物図鑑』岩槻邦男・太田英利編【書評】

いつだったか、「絶滅危惧生物」というタームを見聞したことがあった。その時は、ああそうかといった感想だったようだ

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