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文化の最新記事

最新記事一覧

『文芸記者がいた!』川口則弘著 文学史の裏にいた曲者たち【書評】

文芸記者とは、文字通り文芸を担当する記者のこと。こういう本は珍しい。

『やがてロシアの崩壊がはじまる』石井英俊著「プーチンの歴史観」に対抗【書評】

足掛け3年にわたって続いているロシアのウクライナへの軍事侵攻は、プーチン大統領の「偉大なロシアの復活」という野望が一因にある。同氏はウクライナとロシアは歴史的に一体、つまりウクライナという国はそもそも存在せず、もともとすべてロシアだと言うのだ。

『おもしろくてためになる植物観察の事典』大場秀章監修 恩恵もたらす仕掛けの数々【書評】

本書で観察の報告をしているのは植物学者ら8人で、83編の特別レクチャーを収録。専門家だけあって観察の仕方が徹底している。それぞれの研究から生まれた成果を多くの人たちに共有してもらおうと編集された。

『牛乳から世界がかわる』小林国之著 自分の価値観に合う酪農を【書評】

カロリーベースで日本の食料自給率は38%だが、飼料自給率は26%でしかない。これがウクライナ戦争による肥料や飼料の高騰で、北海道の大規模酪農家を苦境に追い込んだ。従事者の減少を規模拡大でカバーしてきたことが裏目に出たのだ。農業人口全体が減少している日本にとって、深刻な問題である。

鵜の動きで翌年の吉凶占う 気多大社の鵜祭/石川県羽咋市

神前に1羽の野生の鵜(う)を放ち、翌年の吉凶を占う神事が、12月16日未明、石川県羽咋(はくい)市寺家町に鎮座する能登國一ノ宮の気多大社で営まれる。国重要無形民俗文化財「気多の鵜祭」で、“奇祭の宝庫”と言われる能登の祭礼の中でも、「奇祭中の奇祭」とされる神事の一つだ。

耐火性備え石塀や蔵に 秋田県湯沢市、巨大カルデラの恵み

秋田県湯沢市の院内(いんない)と言えば院内銀山で有名だが、江戸時代中期から明治~昭和の初めにかけて切り出された「院内石」は全国に販売され敷石や塀、石蔵などに重宝された。大谷石や十和田石とともに有名だった。

柚木沙弥郎展「永遠のいま」 岩手県立美術館

今年101歳で亡くなった染色工芸家・柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)氏の企画展「永遠のいま」が岩手県立美術館で開かれている。11月30日には本展覧会の監修者で美術史家・美術評論家の水沢勉氏が、「柚木沙弥郎の晩年様式自由に自由が自由を」と題して記念講演会を開催。会場には美術愛好家ら約100人が集まった。

『漫画を描く』里中 満智子著 分野の地位向上に捧げた半生【書評】

今やマンガは日本の文化を代表する分野として認知されている。だが、かつてマンガは教育的に害を及ぼすものとして排斥された時期があった。マンガを読むと、学校の勉強がおろそかになるとみられていたのだ。

『ニッポン獅子舞紀行』稲村 行真著 人と自然との付き合いの原点【書評】

7000以上の地域で継承されている獅子舞は日本最多の民俗芸能だが、この20年で1000以上が消滅したという。東京藝大大学院映像研究科所属の著者は、全国の博物館や郷土資料館を巡るうち、獅子頭を凝視している自分に気付き、2018年から獅子舞の研究を始めた。そこから日本人の実像が浮かび上がってくる。

『日本人が知らない世界遺産』林菜央著  今も危険に直面する文化財【書評】

第2次大戦期、ヒトラーは制圧した国から強奪した美術品や絵画をオーストリアの山中の掘削トンネルの中に秘匿(ひとく)した。スターリンも強奪した絵画などを祖国に持ち込んだ。

『中国を見破る』楊海英著 中国人の本質に関わる宿痾【書評】

日本人の中国に関する理解は、長い間、漢籍によって形成されてきた。『大学』『中庸』『論語』をはじめとする四書五経はその基礎を作ったが、著者はこれについて疑問を投げ掛ける。それで中国の本質を知ることができるのかと。日本人が理解した中国は文献を基に日本流に解釈し直され、真実とは全く異なったものだと主張する。それが島国からみた見方だとすれば、著者の見方はまったく違った位置からだ。

筏組む音の冴えていた秋川 三ヶ島葭子歌碑/東京都あきる野市

東京都あきる野市乙津に臨済宗建長寺派の龍化山徳雲院がある。秋川の支流、養沢川のほとりの平地にある禅寺で、境内は梅林の中。石柱門から養沢川にゆく道の傍らにあるのが三ヶ島葭子(みかじまよしこ)歌碑だ。

SOMPO美術館「カナレットとヴェネツィアの輝き」

イタリアのヴェドゥータ(景観画)の巨匠、カナレットの日本で初めての本格的な展覧会「カナレットとヴェネツィアの輝き」が東京のSOMPO美術館で開かれている(12月28日まで)。

『葬儀業』玉川貴子著 社会とともに変化する「儀礼」【書評】

葬儀業界の近年の変化を経済社会学的に論じたもので、いわゆる終活本ではない。しかし、業者の実態を理解することは、自分の葬儀を考える参考にもなる。

『アショーカ王伝』定方晟訳 仏教との交わりをドラマ的に【書評】

アショーカ王は紀元前3世紀のインド・マウリヤ朝の王で、仏教を保護し、おびただしい数の仏塔を建てたことで知られている。仏教経典の中で第1の伝記はブッダ伝だが、第2の地位はアショーカ王伝に与えられてもよいと、仏教学者の著者は位置付ける。

『蔦屋重三郎と江戸メディア史』渡邊大門著 出版人としての生涯を記述【書評】

芸術家について書かれた本は多いが、出版人について書かれた本は少ない。 この本は、出版人蔦屋(つたや)重三郎について記述したもの。蔦屋は1750年から1797年までを生きた人物。出版人だから、芸術家に比べて情報が少ない。間接情報を突き合わせて蔦屋の生涯を記述したものだ。

『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス著 架空の中南米の寒村が舞台【書評】

『百年の孤独』は、1982年ノーベル文学賞受賞者、コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(1928~2014年)が「自分の最高作」と呼んだ作品である。

「稲穂の詩~秋田と米づくり」展/秋田県立博物館

日本の食料で最も重要な「米」をテーマとする企画展「稲穂の詩(うた)~秋田と米づくり」が秋田県立博物館(秋田市金足)で開かれている。秋田では「あきたこまち」と「サキホコレ」が有名だが、ここに至るまでには苦難と克服の壮大なドラマがあった。

仁藤敦史著『加耶/任那―古代朝鮮に倭の拠点はあったか』

古代朝鮮半島南部に存在した加耶は日本書紀などで任那(みまな)と表記され、日本とも関係の深い国家群だ。戦前から戦後の一時期までは、かつて日本が「任那日本府」を置いてこの地域を支配したというのが定説だった。戦後の歴史学会では、韓国や北朝鮮の学者を含む異論が提出され、今も論争の的となっている。

追悼 長田暁二さん レコード界の名プロデューサー

音楽文化研究家の長田暁二さんが亡くなった。その知識は作曲家、作詞家、歌手たちが音楽を作りあげていく現場で得たものが非常に多く、驚くほどの博識だった。

福島県立美術館 1960年代アメリカの作品120点

1960年代アメリカを席巻したポップアートの代表的な作品を紹介する展覧会「ポップ・アート時代を変えた4人」が福島県福島市の福島県立美術館で開かれている。

高輪・一関藩の江戸屋敷/岩手県一関市博物館

よく時代劇で江戸屋敷や火消装束を見かけるが、その一端を示す展示が岩手県・厳美渓(げんびけい)近くの一関市博物館で開かれている。

オルセー美術館「ノートルダム大聖堂修復のための実験室」展示 【フランス美術事情】

キリスト教において大聖堂は信仰を象徴する場であり、神とイエスを賛美する聖なる神の館と位置付けられている。カトリック教会では神への賛美と人々の信仰心を盛り上げるための聖歌、パイプオルガン、壁画、彫刻、ステンドグラスから差し込む色彩豊かな光線が総合芸術として神への思いを高める場として2000年の歴史を貫いてきた。

『シモーヌ・ヴェイユ』冨原 眞弓著 身体を媒介とした清冽な思索【書評】

「不幸について語るべきなにかを知るひとは語るすべを知らず、語るすべを知るひとは不幸を知らない」。シモーヌ・ヴェイユ(1909~43年)の言葉だが、著者はそう書いた人のことを「不幸を知ってなお、語るすべをうしなわず(あるいはとりもどし)、語り続けた稀有な人間のひとり」と形容する。

『戦国時代を変えた合戦と城』千田嘉博・平山優著 城郭から見える天下泰平【書評】

武士を束ねていた室町幕府は崩壊し、京都の朝廷もただ右往左往するだけで、中央政権の求心力は急降下した。古代から宗教的権威であった大寺院も焼き打ちされ、こうした恒常的な戦時体制を背景に台頭した戦国大名が抗争を繰り返していた。この時代に日本全国に2万5000とも3万ともいわれる城が築かれていたという。

『高倉健の図書係』谷充代著 読書が育んだ名優の生きざま【書評】

俳優の高倉健さんが亡くなってから10年になる。本書は、その高倉健さんがかなりの読書家であったこと、本の言葉を大切にしていたこと、苦しい時に繰り返し読んだ本が12冊紹介されている。

『死とは何か』中村圭志著 死生観を宗教ごとに解説【書評】

高度に発達したホモ・サピエンスの脳は、人が死んだという不可逆的な生理的事実は認知できるが、別の(指向的構えを持つ)認知プログラムのため、頭のどこかで故人を生きているかのように扱っているという。だから、仲間が集まった葬儀の席で、「これであいつも喜んでいるさ」と口にしたりする。その脳が、来世や地獄・極楽、輪廻(りんね)転生などの観念を生み、宗教を誕生させた。本書は、世界の主な宗教ごとにその様相を簡潔に解説している。

【書評】『サンスクリット入門』赤松明彦著 空海も学んだ「完全な言語」

飛鳥時代から奈良時代までの仏教はまるで学問で、例えば唯識(ゆいしき)は深層心理学に近い。東大寺などの南都六宗の寺は大学の学部に似て、若き日の空海はインド僧もいる大安寺で暮らしながら、華厳宗を学びに東大寺へ、法相宗を学びに薬師寺へと出掛けていた。当の大安寺は三論宗の寺である。日本人は仏教を介して、初めて学問に目覚めたと言えよう。

【書評】『「天皇学」入門ゼミナール』所功著 日本と「私」を知る手掛かり

「天皇を知ることは日本と日本人を知る重要な手掛かり」という著者の言のその先に、「私を知る」手掛かりも見えてくる。 日本人と日本社会の根幹をなす宗教史を略記しよう。縄文時代からのアニミズムに基づき地域や部族、職業の神々を奉じてきた諸神道を、皇室祭祀(さいし)を中心にまとめたのが3世紀、崇神(すじん)天皇による天社(あまつやしろ)と国社(くにつやしろ)の和合である。これにより家族国家としての日本の基本が形成された。そのため崇神天皇は神武天皇と同じ称号を与えられている。

【書評】『シェイクスピア』福田恆存著 作品から迫る人生の価値観

本書は著者が翻訳したシェイクスピアの19作品の解題を収録。テキストの成立、作者が使用した資料、作品の内容についての解説など。シェイクスピアのドラマは36作品あるが、著者が訳したのは19作品。その全体で一つの流れを見せてくれる。

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