世界日報 Web版

WTO改革案、日本が議論をリードせよ


 韓国による福島など8県産水産物の禁輸に関して、世界貿易機関(WTO)上級委員会が日本逆転敗訴の判断を出したことを受け、日本政府が先月中旬、WTO側に紛争処理システムの改革案を提出していたことが明らかになった。

 機能不全に近い上級委

 2011年の東京電力福島第1原発事故後、韓国は青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉各県の水産物の輸入を禁じているほか、わずかでも放射性物質が検出された食品については追加検査を求めている。日本は15年、韓国の禁輸措置がWTOの協定違反だとして提訴した。

 一審に相当する紛争処理委員会(パネル)は昨年2月、「不当な差別に当たる」として禁輸の是正を勧告したが、韓国は二審に当たる上級委に上訴。上級委は必要な検討が不足しているとしてパネルの判断を取り消し、日本の逆転敗訴となった。

 ただ上級委は、韓国側の対応がWTOのルールに適合しているとも判断しなかった。日本産食品の安全性を認めたパネルの判断も維持している。

 WTOは二審制のため、上級委の結論が最終判断となるが、これではどちらが正しいか分からず、紛争の解決につながるまい。米国や欧州連合(EU)など10以上の国・機関は日本の立場に支持・理解を示しているという。

 今回の改革案は日本とオーストラリアが共同で一般理事会に提出し、後にチリも共同提案に加わった。上級委と加盟国による対話の場の設置や、上級委によるWTO協定順守などが盛り込まれている。

 日本政府はこのほどスイス・ジュネーブで開かれたWTOの会合でも、こうした改革案を提言。現行制度の改定には踏み込まなかったが、いったん下された上級委の判断を別の紛争処理の先例にすべきではないとも主張した。

 背景には、上級委が機能不全に近い状態に陥っていることがある。制度に不満を抱く米国が委員の任命や再任を拒否しているため、常任の委員7人のうち4人が欠員となっている。

 ただ改革については、上級委の権限を最低限にとどめるべきだとする米国と、上級委の任期延長や人数拡充などの制度強化を求めるEUや中国との間で意見が対立している。

 安倍晋三首相は先月末に行われたカナダのトルドー首相との首脳会談の際、来月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で、WTOの紛争処理の在り方について議論する考えを表明した。紛争の当事国でもある日本が議論をリードし、紛争解決に資する改革を進める必要がある。

 風評の払拭に努めよ

 原発事故後、一時は54カ国・地域が日本産食品に対し、禁輸や追加検査などの輸入規制を導入した。その後、規制の撤廃は続いているが、現在も23カ国・地域が制限を続けている。

 食品に対する放射性物質の影響について、日本は国際水準よりも厳しい基準を設けて検査している。国際社会に正確な情報を粘り強く発信し、風評の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。