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景況感悪化、反動減「限定的」と楽観は禁物


 日銀が発表した短観は、4月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減が響き、企業の景況感が6四半期(1年半)ぶりに悪化したことを示した。大方の予想通りである。

 反動減は限定的とする向きも少なくないが、業種によりバラつきもあり、楽観は禁物だ。賃金の伸びが物価の上昇に追い付いておらず、個人消費の動向には要注意である。

 景気の回復力は弱い

 企業の景況感を示す業況判断指数(DI、「良い」と答えた割合から「悪い」の割合を差し引いた値)は、大企業製造業でプラス12となり、前回の3月調査(プラス17)を5ポイント下回って6四半期ぶりに悪化した。

 大企業非製造業も同様に、24から19へ5ポイントの悪化。中小企業も製造業、非製造業ともそれぞれ3ポイント、6ポイント悪化している。

 景況感の悪化は、大方の指摘通り、4月から実施された消費税増税(税率5%から8%への引き上げ)に伴う駆け込み需要の反動減が主要因である。

 1~3月期の国内総生産(GDP)が、増税前の駆け込み需要により、物価変動の影響を除いた実質で前期比1・6%増、年率換算では6・7%増と予想以上の高い伸びになったため、その反動減を如実に表した形である。

 もっとも、これは想定内で、経済閣僚からは「消費税増税の影響を最小限に食い止め、経済は緩やかな回復軌道が続いている」(麻生太郎財務相)や「(景気は)想定内で推移している」(甘利明経済財政担当相)などと楽観的な声が聞かれる。

 確かに、こうした見方には一理あるとは言える。3月調査では前年度比0・1%増と慎重だった大企業全産業の2014年度設備投資計画が、7・4%増と大幅に伸びるなど、企業の積極的な姿勢がうかがえるようになってきたからだ。これは好決算が相次いだことによるものであろう。3カ月後の先行きについても、大企業製造業はプラス15と小幅ながら改善を見込む。

 政府が消費税増税による景気腰折れを懸念し、13年度補正予算で約5・5兆円の経済対策を実施したこともあり、景気が後退し、デフレ化の道を進むことになった1997年の増税時とは状況が大きく異なっているようである。

 ただ、裾野の広い自動車産業などで反動減の落ち込み(23ポイントの悪化)が予想以上に大きく、先行きも改善幅が小さい。大企業非製造業では先行き横ばいであり、回復力の弱さは否定できない。

 さらに、要注意なのは個人消費の動向である。5月の家計調査などでは物価の上昇に所得の伸びが追い付いていない。厚生労働省の5月の毎月勤労統計調査によると、基本給や残業代、賞与などを合わせた現金給与総額の平均は3カ月続けて前年を上回ったが、物価上昇が続いているため、実質賃金は11カ月連続で減少しているのである。

不透明な個人消費の動向

 所得の目減り感を強く意識するようになれば、個人消費に勢いが戻るかは一段と不透明になる。企業がどこまで賃上げに応じ続けられるか。楽観できる状況ではない。

(7月3日付社説)