世界日報 Web版

経済安保 外資出資への監視体制強化を


 政府は安全保障上重要な産業や技術への監督を強化するため「経済安全保障一括法」の制定に向け調整に入った。

 来年に一括法を制定へ

 一括法は、外資による重要企業への1%以上の出資を事前審査する外為法を基盤とする方向で、放送や通信、銀行などへの外資の出資やシステム整備を、経済安全保障の視点で監督できる仕組みを整える。来年の通常国会への法案提出を目指す。

 政府は昨年、改正外為法を施行し、安全保障上重要な企業への外資出資の審査対象を「10%以上」から「1%以上」に厳格化した。外資規制は放送など一部の業法にもあるが、企業が外国人持ち株比率などを正確に把握するのは容易ではなかった。一括法を制定し外為法の仕組みを使えるようになれば、外国資本の動きに対応しやすくなることが期待できる。

 外資出資をめぐっては東芝が6月、昨年7月の定時株主総会の際に経済産業省と一体で海外ファンドに株主提案の取り下げを要請したほか、他のファンドには提案に賛成しないよう働き掛けたとする外部調査の報告書を公表した。報告書は、総会が「公正に運営されたものとはいえない」と指摘している。

 もちろん、株主に圧力をかけることなどあってはならない。東芝のガバナンス(企業統治)に厳しい目が向けられたのは当然である。ただ問題の背景には、原発や防衛関連など安全保障に関わる東芝のような企業への外資投資を監視する体制が不十分だったことがある。

 今年3月には、中国IT大手の騰訊(テンセント)子会社が楽天に出資したことが明らかになった。この子会社は楽天の大株主となったが、資産運用を目的とした「純投資」として事前届け出の免除を受けていた。

 テンセントはトランプ前米政権時に「安保の脅威」とみなされていた企業だけに、バイデン米政権は日本に対して「米欧並みに厳しい法整備」(米国家安全保障会議)を望んでいる。法の不備の改善が必要だ。

 一括法では、新型コロナウイルス感染拡大やデジタル化、脱炭素化の進展などを踏まえ、半導体と電気自動車(EV)用先端電池、レアアース(希土類)、医薬品の4品目を重要物資に指定。同盟・友好国からの調達強化を支援する措置を検討する。

 政府は半導体の国内生産・開発を支援するため、政策を総動員する方針だ。急速なデジタル化で半導体の需要が世界的に急増し、半導体不足が自動車生産にも影を落としている。半導体製造設備には多額の投資を継続的に行う必要がある。政府は積極的な財政支援を行うべきだ。

 日米豪印は協力深めよ

 レアアースに関しては、2010年9月に沖縄県・尖閣諸島沖で発生した中国漁船領海侵犯事件後に、中国が対日輸出停止に踏み切ったことがある。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は、レアアースの確保に向け、日米両国が採掘量の多い豪印両国の生産能力増強に向けて資金援助を行うなど連携を強化する。「自由で開かれたインド太平洋」構想を共有する4カ国が経済安保でも協力を深めることが求められる。