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東証売買停止 取引所への信頼損なうな


 東京証券取引所がシステム障害の発生で全銘柄の売買を終日停止した。大きな混乱を招いた責任は重い。原因究明と再発防止を徹底すべきだ。

システム障害が発生

 東証によると、富士通が開発した株式売買システム「アローヘッド」を運用する機器の一部が故障。故障した際には別の機器に切り替わるようになっていたが、正常に行われなかった。サイバー攻撃をうかがわせる兆候はなかったとしている。

 売買が終日止まるのは、全面システム化された1999年5月以降初めてのことだ。取引時間中にシステムを再起動すると証券会社から受けた注文データが全て失われてしまうため、円滑に取引を再開するのが難しいと判断した。

 この影響で、同じシステムを使っている札幌、名古屋、福岡の各証券取引所でも全ての株式取引ができなくなった。加藤勝信官房長官は「投資家にとって取引の機会が制限されることであり、大変遺憾だ」と語った。国を挙げて新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会経済活動の両立を進める中、冷や水を浴びせる結果になったと言える。

 東証に上場する企業の時価総額は2019年末時点で6・2兆㌦(約650兆円)で、ニューヨーク、ナスダックに次ぐ世界3位の規模だ。国内のみならず海外の投資家にも大きな影響が及ぶことは避けられない。

 複数の取引所での取引が可能な米国などと違い、日本の場合は現物株の取引の9割程度が東証に集中している。東証のシステム障害は日本株の売買が困難になることを意味する。

 東証では、05年11月にもシステム障害によって株式売買を全面停止。06年1月には、旧ライブドアに対する強制捜査を受けて殺到した売り注文を処理し切れず、全銘柄の売買を停止する事態に発展した。

 今回は故障部位が交換され、きょう午前から取引が再開される。トラブルが繰り返されれば、企業の資金調達にも影響が出る恐れがある。東証と富士通は原因を徹底究明し、再発を防止しなければならない。

 東証は昨年11月、アローヘッドのシステムを刷新。注文処理速度を従来の1・5倍にして高速取引ができるようにした。今回のシステム障害への影響がなかったか調査する必要がある。

 終日取引停止で、売買機会を逃した投資家に損害が生じている可能性がある。東証の宮原幸一郎社長は「多くの投資家に多大な迷惑を掛けたことを深くおわびする」と謝罪した。賠償に応じるかは明言しなかったが、対応を迫られるのは必至だ。

 政府は日本の資本市場を活性化するため、東京を国際金融センターとすることを目指している。外国企業を呼び込むため、他国と比べ高い税率の見直しなども検討中だ。しかし日本の証券取引所への信頼が損なわれれば、こうした取り組みも水泡に帰するだろう。

情報開示の遅れ改善を

 東証は1日午前7時すぎに障害を認識しながら、同8時半すぎまで報道機関や一般の投資家には売買停止の情報開示がなかった。これも投資家の不信を招きかねず、改善すべきだ。