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和牛の遺伝資源 輸出拡大へ海外流出を防げ


 農林水産省は和牛の遺伝資源の海外流出を防ぐため、関連新法案を今国会に提出して成立を目指す。

 「和牛ブランド」の保護を徹底し、輸出拡大につなげる必要がある。

 和食ブームで人気高まる

 和牛は明治時代以降に日本の在来種と外来種を交配して改良した牛。赤身にきめ細かく脂が入り込む「霜降り」が特徴で、国内で約170万頭が飼育されている。

 和食ブームを背景に海外でも人気が高い。すき焼きや焼き肉として各国の和食レストランで提供され、知名度が高まった。訪日外国人が日本で味わい、とりこになるケースも多い。

 和牛を中心とする牛肉の輸出額は2018年、前年比29・1%増の247億3100万円と大幅に増加。政府は輸出拡大をにらみ、和牛の生産量を35年度までに現在の倍に当たる30万㌧に増やす目標を掲げている。

 一方、18年には和牛の受精卵と精液が中国に不正に持ち出されそうになる事件が発覚し、畜産農家らから対策を求める声が強まった。和牛の遺伝子を狙う動きは少なくない。

 和牛は品種改良を重ねた生産者の努力の結晶である。不正な持ち出しが許されないのは当然だ。流出の結果、海外での和牛の繁殖を許せば、牛肉輸出にも悪影響を及ぼしかねない。

 和牛をめぐっては、既に東南アジアなどで「WAGYU」の名称で販売されるオーストラリア産牛肉が日本産をしのぐ人気となっている。WAGYUは、かつて米国に輸出された生きた和牛を基に豪州で繁殖させたものだ。

 日本では現在、遺伝資源の海外流出を直接取り締まる法律がない。和牛の受精卵などの国外持ち出しは家畜伝染病予防法で禁じられているが、十分な抑止効果があるとは言えない。18年の事件で同法違反などの疑いで逮捕された男は、過去に何度も受精卵などを中国に運んだと供述している。

 このため新法案では、和牛の受精卵や精液を不正に転売したり、海外に持ち出したりする行為に対し、最大で1000万円の罰金または10年以下の懲役を科す。法人の場合は最大3億円の罰金だ。

 和牛の遺伝的特徴について知的財産に相当すると位置付け、詐欺による取得や横流しを差し止めたり、損害賠償を請求したりできるようにする。早期に成立させ、厳罰化で流出防止を徹底すべきだ。

 農作物も法の不備是正を

 和牛だけではない。農水省は日本国内で開発されたブドウやイチゴなど農作物の新品種について、海外への持ち出しを規制するため、今国会に種苗法の改正案を提出する。

 現行法では、新品種を国に登録すれば知的財産として日本国内で保護され、勝手に栽培できないが、海外に持ち出すことは可能だ。このため、高級ブドウの苗木が中国と韓国に流出し、割安な中韓産が東南アジア市場で売られていることが数年前に発覚した。農産物の輸出を念頭に置いていなかった種苗法の不備を早急に是正しなければならない。