藤橋 進

室生犀星と堀辰雄 大震災で深まった交流

大正12(1923)年の関東大震災から明日で101年。大震災は日本社会を大きく変えたが、文学界に与えた影響も大きいものがあった。東京・日本橋生まれの江戸っ子、谷崎潤一郎は震災後、関西に移住する。大阪・船場の姉妹を描いた『細雪』などの代表作も、関西移住なくしては生まれなかっただろう。

常に「文明の先導者」を自認 E・R・クゥルツィウス著『フランス文化論』を読む

パリ・オリンピックが開幕し、世界の目が開催国フランスに注がれている。テレビでもパリやフランス文化に関わる番組が多く放映されている。フランス文化の特質・魅力を考えることが多くなるが、そんな中、E・R・クゥルツィウス著『フランス文化論』(大野俊一訳、1977年みずず書房刊)を読んで、なるほどと合点することが多かった。

戸板康二著『歌舞伎への招待』(正・続)を読む

演劇評論家で作家・随筆家、戸板康二の『歌舞伎への招待』(正・続)はいまも古びない歌舞伎の格好の入門書だ。昭和25、26年に初版が出、平成16年に岩波現代文庫に収められた2冊は、歌舞伎界が大きな世代交代の時期にきている今、改めて読まれるべき本である。

神奈川近代文学館で「没後15年庄野潤三展」

家族の日常や市井(しせい)の人々の生活を題材に、独自の小説世界を作り上げた庄野潤三の人と文学を回顧する「没後15年庄野潤三展――生きていることは、やっぱり懐しいことだな!」が、横浜市の神奈川近代文学館で開かれている。

信仰と人生を鮮烈に描く 岩波文庫から山根道公編『遠藤周作短篇集』

日本人とキリスト教というテーマを『沈黙』などの長編小説に描き、世界的にも高い評価を受ける遠藤周作(1923~96年)の短篇集が岩波文庫から出た。12の短篇小説と三つの思想的エッセーを収めたこの短篇集は、カトリック作家としての遠藤の原点と、思想的、文学的深化の跡をたどるものとなっている。

観る者引き込む謎に満ちた空間 東京都美術館「デ・キリコ展」を観る

「形而上絵画」と呼ばれる謎めいた絵画を残し、20世紀芸術に衝撃を与えたジョルジュ・デ・キリコを回顧する「デ・キリコ展」が東京・上野の東京都美術館で開かれている。

能登半島地震で中止の青柏祭「でか山」巡行

能登半島を代表する祭りの一つ、石川県七尾市の青柏祭(せいはくさい)。その中心行事である「でか山」の運行は、元日の地震被害で中止となったが、5月4日、大地主(おおとこぬし)神社で神事が営まれ、参列者が来年の「でか山」運行を誓った。

残せるか能登の伝統的景観

最大震度7を記録した能登半島地震では、多くの住宅被害が出た。倒壊した家屋の多くは古い木造建築で、黒い瓦屋根が倒れた柱や壁を覆っている光景が幾つも見られた。

名手による短編小説への誘い 阿部昭著「新編散文の基本」を読む

日本の近代文学では、短編小説の名作が幾つも生まれた。しかし、最近は短編が話題になる事はほとんどなくなった。文体の魅力、文章の彫琢などがより問われる短編小説の衰退は、文学そのものの衰退を意味する。そんな中で、戦後を代表する短編小説の名手、阿部昭の『新編散文の基本』(中公文庫)は、改めて短編小説の魅力を語りその世界に誘ってくれる。

邪馬台国=ヤマト王権説に傾斜 NHKスペシャルで古代史ミステリー

NHKスペシャルが「古代史ミステリー」と題して、日本国家の始まりを特集した。第1集「邪馬台国の謎に迫る」、第2集が「ヤマト王権空白の世紀」。最近の研究成果をもとに古代史の謎に迫ったもので、興味深いものだった。

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