2009年4月27日
国民保護計画
有事に国民を守れるの?
北ミサイルで“実戦”経験/訓練重ね実効性あるものに
テレビを見ながら関係機関と電話する秋田県の佐々木誠危機管理監=5日、秋田県庁
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綾 先日の北朝鮮のミサイル発射騒動では、日本の危機管理体制はどうなっているのか、考えさせられたわ。

父 平成七年一月、阪神・淡路大震災が発生した時には、官邸や兵庫県など地方自治体の対応が遅れたために大きな犠牲者を出して、わが国の危機管理能力が問題になった。
そこで政府は危機管理体制の強化に努め、官邸に「危機管理センター」を設置し、内閣官房に危機管理を専門とする「内閣危機管理監」を置いた。そして、緊急事態が発生すれば、すべての情報を二十四時間体制の「内閣情報集約センター」に集め、危機管理センターが司令塔となって一元的に対処するようになったんだ。

綾 でも、今回のようなミサイル発射への対応は初めてよね。

父 そうだね。幸いと言うべきか、米国で起きた同時多発テロの発生を受けて、日本が武力攻撃を受けた場合にどう対処するかという有事対策の法制度も整備されてきたんだ。
その中で大きな柱となっているのが「国民保護法」だ。国民の生命を保護し、国民生活や経済に与える影響を最小限にとどめるために、国と都道府県および市町村が取るべき具体的な役割分担を定めているほか、報道、交通、通信などの公共機関の役割も示している。

綾 テレビでは地方自治体の緊迫した対応ぶりが映し出されていたわね。

父 いざ有事が起こった場合に速やかに住民を保護するため、十七年度までに、すべての都道府県、市町村が国民保護法に基づいた独自の「国民保護計画」を策定している。
具体的な保護措置として、警報の発令、避難の指示、避難の誘導、避難地の確保、また、避難住民に対する食料の供与、医療の提供、被災者の捜索・救助などについて定めている。
国から警報や避難の指示が出され、都道府県知事が具体的な避難方法を指示。市町村が自衛隊、警察、消防、そして、地元の消防団や自主防災組織などと連携して、住民を避難誘導するというシステムになっている。
国民保護計画があったおかげで、今回の北のミサイル発射に際しても、政府と地方自治体が連携してまずまずの対処ができたと思うよ。

綾 国民保護計画があったなんて知らなかったわ。でも、武力攻撃から国民を守るのは当然のことよね。

父 それがね、その当然のことが日本ではおざなりになっていたんだよ。「民間防衛なくして国防なし」が国是のスイスをはじめ、国家の安全保障・防衛は軍事と非軍事の二本立てで考えるというのが世界の常識だよ。ところが、戦後の日本における国防とは、領土、領海に武力侵攻しようとする敵を水際で撃退することだった。その防衛線が破られた場合にどう国民を守るのか。それを論議することさえ長らくタブーとされてきたんだからおかしな国民だ。

綾 へえ、それはなぜなの。

父 先の大戦の苦い経験から、国民保護、民間防衛と言えば、即、国民を戦争に駆り立てるというイメージが残っていたこともあるだろうけれども、左翼イデオロギーを背景にした観念的な平和主義が跋扈し、国民を思考停止状態にさせてきたのが原因と言わざるを得ない。だから、国民保護法ができたことは日本にとっては画期的なことであり、ようやく正常な国防論議の緒に就いたと言えなくもないね。

綾 国民保護計画で本当に国民が守れるのかしら。

父 今回のミサイル発射が直接日本を攻撃対象としたものではなく、また、日時、方向が予告されていたから事前に対応できる時間的余裕もあったわけだが、政府と都道府県の間や市町村から住民への情報伝達方法などに課題が残ったようだ。一方、迎撃ミサイルの数の少なさなど、ミサイル防衛態勢の貧弱さも浮き彫りになった。早期警戒衛星の導入や迎撃ミサイルの整備を速やかに進めるべきだ。
それでも、今回の“実戦”体験は「いい経験になった」というのが、政府の危機管理担当官や地方自治体の防災担当者の本音のようだよ。国、地方自治体、自衛隊、警察などの関係機関、そして、住民が一体となった実動訓練を重ねて、保護計画を練り直しながら、実効あるものにしていくことが大事だ。
(小松勝彦)
(本紙掲載:4月26日)