家庭
2009年4月20日

凶悪犯罪の時効

廃止求める声はなぜ?

被害の苦しみ生涯残る/DNAが犯人特定の証拠に



 綾 殺人など凶悪犯罪の被害に遭った人やその遺族などが時効制度の廃止を求める会を発足させたという記事を読んで知ったのだけど、制度の見直しを求める声が高まっているんだってね。


  ちょっと話は専門的になると、裁判には、民事と刑事があることは知っているね。時効には、民事における「取得時効」「消滅時効」と、刑事における「公訴時効」、それに「刑の時効」がある。刑の時効というのは、裁判で刑が確定したのに、刑が執行されずにある一定の期間が過ぎると、刑の執行が免除される制度だ。

 現在、日本で問題となっているのは公訴時効のことで、犯罪の後、一定期間が経過すると、事件の犯人として逮捕、起訴できなくなる制度のことだ。


 綾 サスペンスドラマで、時効が近づいていくからと、刑事さんが懸命に犯人を捜す場面や、犯人が時効になるのを期待して逃げ回ったりするストーリーがあるけど、あのことね。時効の期間は、どれくらいなの?


  犯罪によって違う。例えば、死刑に当たる罪については二十五年、無期懲役や無期禁固に当たる罪については十五年と決まっている。


 綾 殺人を犯しても、二十五年経てば逮捕されないなんて、納得できないな。何年経っても罪は消えないはずでしょう。


  今、犯罪被害者の遺族たちが時効制度の廃止を求めているのは、肉親が命を奪われた悔しさ、心の傷は一生消えないのに、犯人は時効が来ればのうのうと生活できるようになることに憤りを感じているからだ。

 また、最近は殺人、強盗、強姦などの重要犯罪が増えているのに、犯人が捕まる割合が昔より下がっていることも背景にある。実際、殺人事件などでは時効のない国もある。

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時効廃止を求める「宙(そら)の会」が正式に発足し、記者会見する未解決殺人事件の遺族ら=3月28日、東京都内

 綾 それなのに、日本にはどうして時効があるの?


  理由は幾つかある。まず、事件から時間が経つと、証拠が散逸してしまう。また、新しい犯罪が次々起きているのに、いつまでも同じ事件の捜査を続けることは警察に大きな負担となる。

 それに、時間が経てば、犯人を処罰してほしいという遺族の気持ちも薄らぐだろう、と思われてきた。何年も逃げ回るということは、実質的に制裁を受けたことにもなるという考え方もある。


 綾 でも、遺族たちはいつになっても、殺人で肉親を失った悲しみは変わらないと言っているわけでしょう。それに今は、DNA鑑定など科学捜査が進んで、何年経っても犯人を特定することができるようになったのだから、凶悪犯罪の場合には時効をなくしてもいいと思うけど。


  時効のない米国などでは、事件からかなり時間が経ったのに、DNAから犯人が逮捕され、有罪になったケースがある。そこで、日本でも法務省は時効についての勉強会を開いて、今月初めにその中間報告をまとめたんだ。

 時効制度を見直そう、というところまでは踏み込まなかったが、廃止や期間の延長、それに確実な証拠があれば時効を停止できる制度など、四つの案をまとめた。今年夏には最終報告書がまとまる予定だ。


 綾 時効が廃止されたら、警察の負担は増えるでしょうけど、凶悪な事件を犯したら、一生涯のうのうと生きられなくなる制度にすることは犯罪を少なくすることにもつながるんじゃない。時効の廃止に反対する人はいるの?


  弁護士の団体である日本弁護士連合会は反対している。


 綾 どうしてなの?


  事件から時間が経過してしまうと、アリバイの証明など無罪を立証するのが困難になり、冤罪の危険性が高まる、というのが大きな理由だ。

 さっき、死刑に当たる罪の時効が二十五年と説明したけど、かつては十五年だった。重要犯罪の検挙率が下がったことを受けて、平成十六年に刑事訴訟法が改正され、二十五年になった。今後、見直し論議はさらに高まると思うが、明確な証拠があった場合に、時効を停止するか、延長を可能にするような制度が現実的な改革案になるのではないかな。

(森田清策)

(本紙掲載:4月19日)


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