2009年4月6日
プロ野球開幕
人気回復なるか?
カギは“真のヒーロー”登場/WBC連覇で注目度高まる
開幕戦で力投する日本ハムのダルビッシュ投手=3日、札幌ドーム
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綾 プロ野球が開幕したね。「スポーツの春」到来という感じで、何だかワクワクするわ。

父 あれ、綾はプロ野球にはあまり関心なかったはずだが。

綾 だって、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、野球の面白さが少しは分かったのよ。

父 綾のようなにわかファンは多いのだろうな。

綾 にわかファンなんかじゃないわよ。WBCで活躍したダルビッシュ(日本ハム)や岩隈久志(楽天)は、これからずっと応援しちゃうものね。イケメンの二人が投げ合った開幕戦なんか、しびれちゃったわ。

父 そんなミーハーでは、本当の野球ファンとは言えないぞ。それはともかくとして、今シーズンは、WBCで日本が連覇を果たした余韻の中での開幕となったから、いつもよりも注目度が高いのは間違いない。盛り上がったWBCが低迷するプロ野球の人気回復の起爆剤になってほしい、と期待する関係者は多い。

綾 日本のプロ野球は、そんなに人気がなくなっちゃったの?

父 かつて「ドル箱」と言われた巨人戦のテレビ中継は、昨年の平均視聴率が10%を割り込んでいる。ピーク時の十五年前には、23・5%もあった。プロ野球中継では、あまり視聴率が稼げなくなったので、地上波での放送を減らしたテレビ局もある。

綾 それじゃあ、またファンが減ってしまうかもね。せっかくWBCで注目度がアップしたのに残念だわ。野球場まで足を運ぶことができる人は限られているから、やっぱりテレビ中継はファン獲得の重要な手段だと思うけど。

父 確かにWBCで感動した日本人は多い。しかし、それが視聴率アップに結び付くとは限らない。見方を変えると、WBCで真剣勝負の醍醐味を味わったことで、野球を見る人の目が肥えたとも言える。それなのに、日本のプロ野球チームがつまらない試合をやっているようだと、野球熱はすぐに冷めてしまうだろう。
開幕戦で広島に敗れ、さえない表情の巨人・原監督=3日、東京ドーム
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綾 三年前、第一回のWBCでも日本は優勝したわよね。その年、日本のプロ野球は盛り上がったのかしら?

父 二〇〇六年のWBCの時も、人気回復が期待されたが、結局、巨人戦の平均視聴率は9・6%と、空振りで終わった。半年以上も続くペナントレースと、短期決戦のWBCでは、一試合の重みがまったく違う。WBCで盛り上がっても、それがプロ野球の人気回復には直接つながらないのだ。

綾 そもそも、どうしてプロ野球人気が下がったの?

父 要因は幾つか考えられる。まず、かつてと違って、日本人の娯楽が多様化したことがある。スポーツでいうと、十六年前にJリーグがスタートし、若者の間ではサッカーのファンが増えている。
スター選手たちが大リーグに移ったことも大きい。イチロー、松井秀喜、松坂大輔らだね。それに今年は巨人から上原浩治、中日から川上憲伸の両エースも移籍した。

綾 岩隈やダルビッシュら若手スター選手が活躍すれば、人気回復につながると思うけど。

父 かつての全盛期を築いたのは長嶋茂雄や王貞治らヒーローたちだ。今の日本プロ野球界に必要なのは、新たなヒーローの登場だろう。
サッカー界にも同じことが言える。日本代表戦は観客動員で苦戦しているが、それは中田英寿のようなスーパースターがいなくなったからだ。岩隈やダルビッシュらはスター選手であることに違いないが、まだヒーローとは言えない。特に、ファンの多い巨人から、生え抜きのヒーローが生まれていない。

綾 岩隈やダルビッシュはイケメンでかっこいいわ。私にはそれだけで十分ヒーローよ。

父 人を容姿で判断するとは情けない。真のヒーローとは、ファンが「打ってくれ!」と期待するところで打ち、「ここで三振奪取だ」と祈る場面で、それに応える選手のことだ。長嶋や王はそうだった。WBC決勝戦のイチローもそうだった。それまでどんなに調子が悪くても、優勝に結び付くタイムリーを打つ。それでこそヒーローなのだ!

綾 お父さんは、昔のプロ野球を懐かしんでいるだけのような気もする。ヒーロー像は時代とともに変わっていいと思うな。お父さんには単なるイケメンでも、私にはヒーロー。だから、今シーズンは岩隈やダルビッシュをずっと応援するわ。それでこそ、真のファンというものよ。
(森田清策)
(本紙掲載:4月5日)