家庭
2009年3月2日

「月」探査する衛星「かぐや」

何が分かってきたの?

米科学誌が4論文掲載/重力場測定など画期的成果


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月を探査する衛星「かぐや」の想像図=宇宙航空研究開発機構提供

  この間、テレビや新聞でも報道していたけど、きれいな地球のダイヤモンドリングの映像か写真を綾は見たかい。


 綾 うん、見た、見た。きれい、というより、とても神秘的だった。


  どうして、あのように見えるのか分かる?


 綾 あれは月探査衛星の「かぐや」が撮影した映像でしょ。だから、まず太陽と地球と月がほぼ一直線に並んで、それから、えーと。


  いい線いってる。それから、月から見て、というより「かぐや」から見て、地球が太陽の大部分を覆い隠してしまう現象で、「半影月食」というんだ。ダイヤのように明るく光っている部分が太陽、細いリングで囲まれた黒い部分が地球だね。地球が黒いのはちょうど夜の側を見ているからなんだ。


 綾 リング状に見えるのは何で?


  地球の大気の影響で、大気によって太陽の光が散乱を起こすため、太陽光の一部が地球の縁を回り込むようにして月に到達する。そのために、月からは地球の大気が青く、リング状に光って見える、ということなんだ。


 綾 ふーん。でも、「地球のダイヤモンドリング」って、初めて聞いた。


  お父さんもそうだよ。何しろ、半影月食時の、地球がダイヤモンドリングのように見える瞬間を撮影したのは、「かぐや」が世界で初めてなんだから。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、月を極軌道で周回する「かぐや」が月食に遭遇するのは、最大で年に二回程度で大変貴重なものだという。


 綾 「かぐや」って、すごいのね。


  そうだね。もちろん、こうした見栄えの良い成果ばかりじゃない。「かぐや」はいろんなデータを一年以上にわたって地道に集め続けてきて、その成果の一部が、今回、米科学誌サイエンスの最新号に特集として発表されたほどなんだ。論文が四つと論評、そして表紙も「かぐや」が撮影した月の裏側の「モスクワの海」の画像が使われた。


 綾 それも、すごいことなの?


  サイエンスが日本の宇宙探査で特集を組むのは、小惑星探査機「はやぶさ」の二〇〇六年六月、それから太陽観測衛星「ひので」の〇七年十二月以来で、表紙も飾っている。JAXAが言うように画期的なことなんだ。

 特に「はやぶさ」は綾も覚えていると思うけど、火星と木星の間にある小惑星「イトカワ」を探査し、それも「イトカワ」に着陸して採取したとみられる試料を積んで、今、地球に向かって帰還しているんだ。イオンエンジン(電気推進)での飛行、探査機自身の自律的な小惑星への接近飛行制御、試料の持ち帰り(サンプルリターン)など世界で初めての試みが多く、国際的にも評価は高かったんだ。


 綾 イトカワって、確か、ラッコみたいな形していたわ。


  そうだね。プロジェクトの関係者も親愛の情を込めてそう呼んでいたそうだよ。今回の「かぐや」でも、子衛星を使って月の裏側の重力場を測定するなど、世界で初めてということが多く、そこから得られる新しい知見には、サイエンスも注目せざるを得ないということだろうね。

 「かぐや」から得られたデータの解析を進めている関係者は、三−五年に新しい月モデルを発表したいと抱負を述べているから、それが楽しみだね。


 綾 中国やインドも月に衛星を飛ばしているよね。


  ただ、中国の「娥嫦1号」は「かぐや」の高度百キロからの観測に対し二百キロからの観測で、観測機器の性能も劣るから、科学的な知見を得るという点ではどうかな。中国の狙いはそれより、資源探査や将来の宇宙計画達成のために、こういうこともできますよ、というデモンストレーションの側面もあるとみられているんだ。

 インドの「チャンドラヤーン1号」は昨年十月の打ち上げで、「かぐや」と同じ高度での二年間の観測ミッションで、機器も欧米の提供を受けているから、まだ先の話だけど、公表されるお互いのデータを比較しながら、さらに新しい知見が得られるかもしれないね。


 綾 わくわくするし、待ち遠しいね。


  それもそうだけど、次は周回での観測から、得意のロボット技術を生かして、「はやぶさ」のように着陸そしてサンプルリターンに早く取り組んでほしいね。

米科学誌サイエンスに掲載された「かぐや」成果論文
(1)リレー衛星「おきな」を用いた世界初の月の裏側の重力場の直接観測を含む全球重力分布測定
(2)月レーダーサウンダーによる月の表側の海の領域の地下構造探査
(3)レーザー高度計による世界初の全球の高度計による地形図作成
(4)月の裏側の海の地形カメラの観測データへのクレーター年代学の適用

(床井明男)

(本紙掲載:3月1日)


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