2009年1月19日
神奈川県の禁煙条例
なぜ「全面」難しいの?
パチンコ店など、営業に響く/小規模店も含め「努力義務」に
綾 先日、友人とファストフード店に入ったら、たばこの煙でとっても不愉快な目に遭ったわ。一応、禁煙席と喫煙席は分かれていたのだけれど、混んでいたので、喫煙席の近くの席に座ったの。そしたら、たばこの煙が流れてきて、咳き込んじゃって大変だった。「これじゃあ、禁煙席の意味がない」と、二人でブツブツ言い合いながら食べたのよ。

父 確かに、そういう店はある。二〇〇三年五月、健康増進法が施行されて、不特定多数の人が利用する施設では、受動喫煙を防止する措置を講じないといけなくなった。それ以来、禁煙席を設けるか、全面禁煙にする店や施設が増えてはいる。
喫煙席をガラスで囲んで完全分煙にすれば問題はないが、禁煙席と喫煙席を分けただけだと、たばこを吸わない人たちの席に煙が流れ込んでしまうこともあるので、嫌な思いをした人は多いと思う。

綾 受動喫煙って、どういうこと?

父 たばこを吸っている人の近くにいる時、吸おうと思わないのに、たばこの煙を吸ってしまうことがあるよね。それを受動喫煙という。
たばこの煙には、喫煙者が吸う「主流煙」と、火の付いた先から出る「副流煙」の二種類ある。この副流煙にはニコチンなどの有害物質が主流煙よりも多く含まれていて、健康に悪いから、気を付けた方がいい。副流煙を吸って咳き込んだり、目が痛くなるのは刺激物質が多く含まれているからだ。

綾 喫煙者が吸うのは、たばこに付いているフィルターを通過した煙だけど、副流煙はフィルターを通過していないものね。

父 副流煙に有害物質が多いのは、燃焼温度が低いことも関係あるようだ。とにかく、綾のように、副流煙に悩まされた経験のある人は多いから、人の集まる施設を禁煙か完全分煙にしてほしい、という声は強いね。神奈川県の調査では、受動喫煙に遭った時に、八割の人が「迷惑に思った」と答えている。

綾 受動喫煙がそんなに健康に悪いのだったら、人がたくさん集まる場所は法律で禁煙にすべきだと思うけど。

父 日本の健康増進法は努力義務だから、まだ受動喫煙の防止を講じていない店も多いが、欧米を中心に、法律で公共の場所での喫煙を禁止している国はかなりある。

綾 日本では、どうしてそれができないの?

父 一番の理由は、まだたばこを吸う人が多いからだ。男性で約40%、女性13%。喫煙率は年々下がっているが、20%を切っている欧米諸国に比べると、まだ高い。たばこを吸う人が多ければ、全面禁煙にするのは難しくなる。

綾 禁煙がダメなら、完全分煙を徹底させてほしいな。

父 神奈川県では、不特定多数の人がいる場所に禁煙または分煙を義務付ける「受動喫煙防止条例」案を二月の県議会に提出する予定だけど、かなり譲歩を迫られているようだ。

綾 何が問題なの?

父 当初、松沢成文知事は役所、学校、病院だけでなく飲食店、パチンコ店も含め、不特定多数の人が集まる施設をすべて禁煙にする考えだった。しかし、パチンコ店をはじめとした民間施設の反発が強いので、禁煙か分煙を選べるようにした。しかも、三年間の猶予期間も設けることにした。喫煙者が多く利用する施設はお客さんが入らなくなると心配したんだね。
そこまで譲歩したんだけど、完全分煙にするとなると、お金とスペースが必要となる。規模の小さい店ではそれはできないということで、反対が収まらなかった。そこに不況の嵐だ。禁煙にしてまたお客が入らなくなったら、営業を続けられないという声に、さらに譲歩を迫られ、パチンコ店や小規模の店は努力義務にすることになった。

綾 分煙を認めたのがいけなかったんじゃない。全面禁煙だけにすれば、小規模の店でもお金は掛からない。それにどこの店も同じなのだから、よその店にお客さんが逃げることもないと思うけど。

父 県外にお客が行ってしまうと心配したのだろうね。横浜や川崎は東京に近いから。

綾 だったら、全国どこでも禁煙にしたらいいじゃない。

父 それが一番いいのだろうが、まだたばこを吸う人が多いから、すぐには難しい。でも、神奈川県で条例が成立すれば、少しずつだろうが、同じような条例は全国に広まると思う。たばこを吸わないお父さんとしては、この条例の効果に期待している。

綾 そうなれば、たばこを吸う人はもっと減って、喫煙率が欧米並みになる日も近いね。
(森田清策)
(本紙掲載:1月18日)