デーリー・テレグラフ(英) 2010年3月15日
タイの民主主義に欠けるもの
東南アジア諸国連合(ASEAN)の創設メンバー国の中で、タイは唯一、その政治の中で軍が依然として決定的な役割を果たしている国である。創設メンバー5カ国のうち、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの4カ国は、軍隊は確固とした文民支配下に置かれている。
これとは対照的に、タイでは国軍が2006年にクーデターを起こし、それまで2回にわたり選挙で地滑り的勝利を収め民主的に選出されたタクシン・シナワット首相を追放、その後も、タクシン氏の同盟者が形成した2つの内閣を倒した背後に軍が存在した。
この国軍による介入によって、タイは政治危機が長引くことになり、バンコク市内で昨日、タクシン氏の支持者らが組織した平和的な集会は、最新の動きである。
2006年のクーデターから3年半の混乱の間に、黄色のTシャツを着た反タクシン派によるバンコクの空港占拠が起きたり、赤いTシャツを着たタクシン支持派グループの抗議行動で、タイで開催が予定されていたASEAN首脳会議がキャンセルされたりした。
いまは、赤シャツのタクシン支持派が、24時間以内に議会を解散して、総選挙を実施するよう要求、期限内に要求が受け入れられなければ、バンコク市内でデモを決行すると脅している。
2008年12月に、国軍の支持を背景に権力の座に就いたアピシット・ウェチャチワ首相はまだ、総選挙による国民の信任テストを受けていないが、議会を解散するつもりはないとしている。
アピシット首相、国王支持者たち、将軍たち、それに首相を支持する伝統的な政治エリートたちは、少なくとも短期的にはタクシン支持派に対して勝利を収めるであろう。
しかし、彼らと、タクシン氏の政策の恩恵を受けた北部や東北部の貧しい農民たちとの間には深い溝が依然として存在している。このこう着状態を打開することができる明らかな方法がある。それは総選挙の実施である。
伝統的な保守勢力にとっては、総選挙を行うことは、欠席裁判で禁固2年の有罪判決を言い渡されているタクシン氏自身が復活することはないにしろ、タクシン派が再び権力を握るリスクをもたらす。
しかし、総選挙こそが、ASEAN加盟国の中で異彩を放つタイに欠けている民主主義の重要な要素なのである。
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