ニューヨーク・タイムズ(米) 2010年2月22日
気候変動条約事務局長の辞任
4年にわたり国連気候変動枠組み条約事務局長を務めたイボ・デブア氏が18日に辞任を表明したことは、世界が地球温暖化にまとまって対応できるかどうかについて、悲観的な見方を深めるものだ。デブア氏は、各国間の絶え間ない言い争いと、昨年12月のコペンハーゲン会議で彼が目指してきたもの、すなわち、法的拘束力を持つ温暖化ガス削減条約がまとまらなかったことに疲れ切ったのだ。
気候変動との戦いが危うくなっている時に彼は辞任することになった。上院では気候変動対策法案が暗礁に乗り上げている。国連の2007年報告に些細な誤りがあったことが暴露され、上院の法案批判者に新たな攻撃材料を与えてしまったからだ。またデブア氏がいなければ、12月にメキシコで開かれる次回の締約国会議で、拘束力を持つ合意がまとまる見通しはさらに暗くなる。
しかし、彼の辞任は、この国際交渉の死を意味するものではない。またこういう交渉に価値がないこと、あるいは、1992年以来の国連という交渉の枠組みを放棄すべきだということを証明するものでもない。とはいうものの、デブア氏の辞任は、国連の手続きが、うんざりするほど煩雑で、しかも時間がかかることをわれわれに想起させる。また、気候変動がもたらす最悪の結果を回避するために科学者たちが必要だと言っている削減を世界が達成しようとするなら、国連の交渉と並行して別の交渉も必要だという考え方を強化するものでもある。
コペンハーゲンでの公約は、すべてが実行されるとしても、2020年までの地球全体の排出を安定化させるにすぎない。重要なのは2050年までに世界が排出を50%削減できるかどうかである。それは米国、欧州連合(EU)、中国、インド、ブラジルといった大量排出国が大幅削減しない限り、実現できない。
コペンハーゲン会議の前でさえ、世界的な指導者たちは、並行交渉の可能性を探っていた。ブッシュ前大統領は、大量排出国を一堂に集めたし、オバマ大統領はそれを17カ国に拡大して定期的に会合する予定になっている。また20カ国・地域(G20)も気候変動を優先議題としているし、2国間の努力、例えば米中間での技術交換なども協議されている。
その根底にある考え方は、究極の目標は安全な地球を確保することであり、包括的条約が存在しなければ、この目標を実現する最善策は、各国がそれぞれの削減戦略を下から積み上げることだというものだ。しかし、それにも確実性はない。米国には、当惑させられることではあるが、気候変動に対する国家戦略がない。米国が国家戦略を持たない限り、他の国に教示することはできないし、また世界にとっても、温暖化ガス排出を制御できるいかなるチャンスもないことになる。
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