ニューヨーク・タイムズ(米) 2010年1月2日
なぜテロリストを見逃したか
ノースウエスト航空機の爆破未遂事件で一つ明らかなのは、米政府は、テロリストと疑われる者やテロの陰謀に関する大量の情報を生かす能力を緊急に改善する必要があることだ。本来なら、9・11テロ前に「情報を相互に関連付けられなかった失態」を受けて対処されていたはずだった。ナイジェリア人のアブドゥルムタラブ容疑者については手掛かりが多くあったが、情報活動と国土安全保障を担う巨大官僚組織の誰もその手掛かりを集めて組み立てることをしなかった。
英国は昨年5月、アブドゥルムタラブ容疑者のビザ更新を拒否し、彼を監視対象リストに載せた。米国家安全保障局(NSA)は8月、イエメンのアルカイダ分派の指導者たちがナイジェリアの男が絡む陰謀について協議しているのを傍受した。11月には同容疑者の父親が在ナイジェリア米大使館に、息子が過激派に感化され、イエメンで行方不明になっていると警告した。父親は中央情報局(CIA)当局者にも会っている。息子は米国の監視対象リストには載ったが、警戒度は最も低かった。彼のデトロイト行き航空券は現金で購入されており、しかも彼は旅行かばんを持たずに搭乗した。それでも警告を発する者は誰もいなかった。
米議会は9・11テロ後、政府のデータ収集を一元化するため全米テロ対策センター(NCC)を創設し、各情報機関に互いの対抗心を捨てて情報を共有するよう命じたが、いまだにうまくいっていない。国務省はこの父親の警告をNCCに伝えたと言う。一方、ナイジェリア駐在のCIA当局者は息子に関する報告書を別途作成しCIA本部へ送ったが、報告書は他の機関へは送られなかった。
NCCは、本来なら得るはずの情報を全部は得なかったか、もしくはデータを相互に関連付ける作業を完全にはやらなかったかのどちらかだ。大量の情報を整理し、何が急務であり、何が追跡に値するかをも決定することは気の遠くなるような作業だ。それでも、政府が情報を迅速に更新し相互に関連付ける作業を少なくともグーグルと同程度にすらできないのは、信じ難く恐ろしいことだ。
国土安全保障省の情報システムに重大な欠陥があるのは明白であり、情報機関のシステムも同様だ。16の情報機関を束ねるブレア国家情報長官とパネッタCIA長官が縄張り争いをするのは有益ではない。共和党も同じで、案の定、政治的利益のために未遂事件を利用し、オバマ氏は安全保障への取り組みが弱いとばかげた非難をしている。いま必要なのは、9・11テロが起きた後に必要だったことだ。つまり何が問題だったかの明せきで政治色のない分析であり、今度こそ機能する理性ある対策だ。何も通さないドームの中に米国を封じ込めるわけにはいかないが、アブドゥルムタラブ容疑者の搭乗は決して許すべきではなかった。
この記事を友達に教える