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平成15年9月7日

呆れた男女共同参画条例案

「性的少数者」保護義務づけ/成立すれば“同性愛解放区”に

 ホモ、レズビアン、性同一性障害者ら「性的少数者」の保護を「市民や事業者の責務」とし、「守らなければ法的に訴えられる」――。こんな過激な男女共同参画条例案の制定準備が宮崎県都城市で進んでいる。「どうせやるなら思い切ったものを作る」と意気込む岩橋辰也市長のもと、男女共同参画に名を借りた「ジェンダーフリー」思想はここまでエスカレートした。こんな条例案が通れば、同市は、全国から同性愛者が集まる“同性愛解放区”になりかねない。しかもほとんどの市民はこうした恐ろしい条例案づくりが進行していることを知らないでいるのだ。(山本 彰)
 サンデー世界日報9月7日号より

“市民不在”の一方的な説明会

「場違いな所に」と主婦/怒って退席する参加者も

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急ピッチで先鋭的な男女参画推進条例案の作成をすすめる都城市の市役所

 都城市北部にある沖水地区公民館。八月二十七日夜七時から、この条例に盛り込むべき事項についての同地区の説明会が開かれた。

 回覧板を通して配布された集会の案内状には「『女だから、男だから』ということで、家庭や地域、職場などでの処遇や待遇に不満はありませんか?」「あなたの意見をお聞かせください!」などと、ざっくばらんな話し合いができるように書かれていた。

 そういう集会を期待して来た市民は、実際の市側の説明を聞いてあ然とすることになる。

 何しろ、市役所の羽田野信拓主査(男女共同参画行政担当)が立て板に水のように、パワーポイントで、まくし立てるからだ。

 それも、身近な話ならまだしも、同性愛者、両性愛者、性同一性障害者など、めったに聞かなければ、まして会ったこともない人たちのことがほとんどだ。

 同主査の「講義」は、異論の多いジェンダーフリー(性差からの解放)の是非も問わないまま科学的根拠のない「ジェンダー」の説明を簡単に終え、一気に「性的少数者」の人権保護を焦点にした内容に入っていった。

 この「性的少数者」と言われる人たちの人権尊重が、一日の仕事を終え疲れている主婦や中高年男性の耳に飛び込んで行った。しかし、「案内状」には、どこにも「性的少数者」という言葉は見当たらない。

 そして、主査の同性愛についての説明が振るっている。

 「同性愛は生まれつきのものというのが、日本や世界の医学界でコンセンサスをもった学説になっている」というのだ。そればかりか、配布された「条例に盛り込むべき項目」の中で、同性愛は「性的特性」とまで書かれていた。

 さすがに、この説明には一時間以上にもわたる主査の「講義」が終わった後、質問がでた。

 出席者 「その学説を示した文献を教えてほしい」

 主査 「国でも世界保健機関(WHO)でも性的少数者を保護すべきだとの方向性になっている」

 出席者 「教えてほしいのは、あなたが同性愛が生まれつきのものということが日本でも世界でも学説となっている、という点を立証する文献です」

 主査 「……」

 結局、最後には「すべての資料をこの場に準備していないので、後で市役所総務課の窓口を通して要請してもらえば、開示できるはずだ」という苦しまぎれの説明となった。

 だが、間もなくこの説明も、市側が準備した人物によって、根拠のないことが判明した。「性的少数者」であるY君が、登場して話しはじめたからだ。Y君は屈託なく自分の生い立ちを話しながら、市側の意図とは反対に「(ホモが)生まれつきということはない」とキッパリ。

 会場に「性的少数者」の人まで動員されていたことは、参加者に驚きをもって受けとめられていた。

 生まれつきというのは、性同一性障害者にだけ言えることで、同性愛者の方は、発育の途中で生じるものとされ、また人間の意思で抑制したり、それによって正常に戻ることも可能で、実際に米国ではそういう例がある。

 ところで、市側の説明にあ然とした人の数は多くなかった。極めて出席率が悪かったためだ。来ているのは十人足らずで、会場はがらがらの状態だった。この日の参加者のうち、沖水地区から来ていた人は七、八人。あとは、他の地区や宮崎市からの参加者という状況。

 沖水地区から来た中年男性のAさんは、義務感から何人かの民生委員と誘い合って来たことを述べながら、「結局、一般市民はほとんど来ていないということだ。これで、沖水地区に住む一万三千人余りの市民に説明したとは到底いえない!」と激怒。市側の不手際を追及した後、帰ってしまった。

 しかし、市側としては一応、市民に条例案について説明し市民の声を聴取したということが重要であって、できるだけ多くの市民が集まり、条例案の意味するところをよく理解してもらうことなど、初めから問題ではなかったようだ。

 同地区三十代の女性は、「話を聴いていて自分は場違いなところに来たと感じた。説明が膨大で難しく、とてもついていけない」と解散後、感想を語ってくれたが、この感想がそれを証明している。

 しかしそれにしてもなぜ市当局は、市民の集まりが悪く、市民の理解が進まないのもお構いなしに「同性愛者も生まれつきの『特性』」と力説するのだろう。それには一つの周到な戦略があるのだ。

 都城市男女共同参画推進懇話会(江夏由宇子会長)は、昨年四月に発足。実質的な条例案作成は、六人からなる同懇話会・専門部会(うち二人は市職員)がすすめ、とりわけ、たもつゆかり氏(かごしま女性政策研究会代表)と武隈晃・鹿児島大学教育学部助教授が主導権を握ってきたとされる。

 たもつ氏は、昨年七―八月、都城市男女共同参画講座を五回にわたって開催。鹿児島県男女共同参画審議会委員も歴任しており、南九州地域での男女共同参画推進条例づくりに、男尊女卑の旧弊が残る地だ、という点を巧みに利用してきた。

 「講座」では、ジェンダーフリー論者が女性の当然の権利のように持ち出すリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)についても説明。国連の会議で正式に採択されていないのに、「女性の重要な権利」とアピールしてきた。

 専門部会がまとめた「条例に盛り込むべき項目」でも、この言葉が随所に顔を出す。

 女性による出産、中絶の自己決定権をうたうこの概念は今年六月、宇都宮市男女共同参画推進条例で盛り込まれようとした。しかし、これは「わが国の母体保護法に違反しており、修正すべきだ」と要求する市民団体の陳情を受け削除された経緯がある。

 都城市の条例では、これが「盛り込むべき項目」の筆頭にあがっているばかりか、さらに進んで「性的少数者」の人権の保護を目玉に据えているのだ。

 男女共同参画社会基本法推進の中心的人物、大澤真理氏(東大教授)は、上野千鶴子氏との対談で、「セックスは実はあいまいで流動的なものだ」と語り、「私などは妊娠したことがないから、自分がメスだと言い切る自信はない」(『ラディカルに語れば…』)と述べる。

 ここで大澤氏は、「誰でも『性的少数者』であり得る」との認識を示しているのだ。大澤氏は、同書でジェンダーフリーが第一段階とすれば、「性的少数者」の権利(セクシャルライツ)保護が第二段階だと言明。

 都城市は、大澤真理氏のプランに忠実に沿って、第二段階の条例案づくりを進めていることになる。

 羽田野主査は沖水地区公民館の集会で、「条例に盛り込むべき項目」の市民とは、「旅行者、一時滞在者も含む」と指摘。同性愛者が、同市にたむろするようになる可能性が高い。

 加えて、同条例が「その規定を守らない人を裁判にかける際の法的根拠にもなる」と説明した。条例案ではさらに、苦情処理機関が第三者機関として設けられる方向であり、「同性愛者の性的志向性」を「特性」と評価しなければ罰せられることになるのだ。

「思想統制」と危惧する声

 このため、集会参加者からは「思想統制につながるのでは」との懸念も出されたが、市側はこれを否定。羽田野主査は「懇話会は、条例を具体的に進めるための男女共同参画計画をすでに確定しており、監視機関の役割をしていく」とさりげなく語った。

 このままでは、通常の男女の愛の関係も、同性愛も同列の価値だと見なす特定のイデオロギーを持つ専門部会委員によって、都城市民が監視され続けることになる。

 一方、岩橋辰也市長は、本紙とのインタビューで「都城市は男尊女卑の差別意識が割合強いところなので、逆療法としてやるべきだと思う」との考えを示した。

 都城市は、ウエルネス(wellness・健康)を町の持ち味にしてウエルネス都市宣言をしている。気候がよく住みやすい都市というふれ込みだ。

 岩橋市長は「性的少数者も温かく包んでいくという基本姿勢でなくてはならない」とし「条例案はウエルネスと全く同じ」と説明。「性的少数者」の人権尊重を、ウエルネス都市のセールスポイントにしようとする政治的野心も見え隠れしている。

 従って、「性的少数者」の性向を「特性」と述べるなど、ジェンダーフリー論者とほぼ同じ思想的観点に立ち始めている。

 市側は、八月いっぱいで市民の声の「聴取」を終え、九―十月と市主導で条例案の本格的作成に入る。十一月に庁議で条例案を承認し、十二月の議会で条例案審議が行われる。それまで、市議会はかやの外に置かれているうえ、この段階での手直しはほぼ不可能だ。

 しかしここに来て、ようやく「こんなひどい条例案が準備されているとは、本当に驚きだ」(保守系女性市議)との声も出てきている。市民代表の議員の真価が問われてこよう。

 市側は、市民の声を聴くポーズを取っているが、肝心な市民は関心も薄く、第一あまりに急進的な内容についていけないでいる。そこまで市民の気持ちに無頓着なまま条例案を通すなら、都城市はウエルネスどころかイルネス(illness・病気)に侵されているとしかいいようがない。


岩橋辰也市長に聞く

「性的少数者」市民の数知らない

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岩橋辰也市長

 都城市の岩橋辰也市長に、同市が作成を進めている男女共同参画推進条例案について聞いた。

 ――ユニークな男女共同参画社会条例案が作成されているが。

 「歴史的にも男尊女卑の強いところなので、どうせやるなら思い切った内容のものを制定したいと思っている」

 ――都城市はウエルネスという標語を掲げてイメージアップを図っているが、それと同じ姿勢か。

 「ウエルネスと全く同じだと思う。ウエルネスというのは、『人が元気、街が元気、自然が元気』というもの。性的障害を持っている人もたくさんいるわけで、そんな人も温かく包んで一緒にやっていくというのが基本姿勢でないとダメだ」

 ――そういう流れが定着する中で、家庭的な規範が崩れていくという危惧はないか。

 「それは私は考えない。土地柄から言うと、歴史的に言っても都城はそうした差別意識が割合に強いところだと思う。それ故に私はやるべきだと思う。逆療法みたいなものだ。

 性的方向性が阻害されているという方々が表に出てきてほしい。そうなった場合に、市民がどう受け止めるかだ。一つの試練だが、それをクリアできなければ、本当の男女という関係はできない。

 都城市の男女共同参画推進懇話会の女性委員の中にも、先進的意見を持っている人がたくさんいる。そういう方の意見は遠慮なく出してもらい、成文化していけばよいと思っている」

 ――実施されて後にどうなるかを心配する向きがあるが。

 「この問題は、人間の性格にかかわる問題だ。なくなるものではない。言うなれば一方から見れば特性だ。ある面で冒険かもしれない。実際、今のようなケースが都城市民の中にどれくらいあるのかというと、私はよく知らない」

 ――かなり抵抗もあるのではないか。

 「まだ、そこまでいっていない。皆、分かっていないのではないかと思う」

(聞き手・山本 彰)


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