平成15年12月22日
男女共同参画条例、明暗分けた二つの条例案可決
鳥取県、ジェンダーフリー条項削除
都城市、条例案の“影響”を過小評価
宮崎県都城市の市議会は十八日、市民の不安をよそに「男女共同参画社会づくり条例案」を可決したが、その前日、鳥取県議会は県男女共同参画推進条例のジェンダーフリー条項改正案を圧倒的多数で可決した。本紙は男女共同参画条例による伝統破壊などの影響を警告、とりわけ鳥取県と都城市のケースについては詳しく報じてきたが、明と暗に分かれる結果となった。
(山本 彰)
カギを握る首長の見識
サンデー世界日報を演壇で示す来住一人・共産党市議。ひな壇の最前列が岩橋市長=18日、都城市議会
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都城市議会は、十八日の採決が迫るにつれて、同条例案を通すための議会工作がエスカレート。中でも、共産党の突出ぶりが目立っていった。
岩橋辰也市長は十一日、賛否が拮抗(きっこう)している状況を見て、質疑の中で継続審議の可能性をいったん示唆。だが翌十二日になって態度を一変、条例案にあるジェンダーフリー条項を指摘した「健全な男女共同参画条例をつくる都城市民の会」(以後「つくる会」、岩元順一代表)のビラを持ち出し、逐一その内容を批判した。
これと連動するかのように、来住一人・共産党市議も同ビラを手にして批判。「サンデー世界日報」に対しても、報道の中身には踏み込まず中傷に終始した。市担当局への質問は形だけという異様な“一般質問”だった。
同市長がこの日、共産党の協力を含め「条例案可決のために、どんな議会工作もする」という意向を固めたことをうかがわせた。
同市長は、揺れ動く議員の一本釣りを強行。十八日の起立採決に際し、条例案を担当した総務委員会では反対投票した杉村義秀議員(保守派)がまさかの退席。これで一票差の可決となったのも、その影響とみられている。
市議会で取り上げられた「サンデー世界日報」(九月七日付)は、「『性的少数者』保護義務づけ」の見出しで、過激な内容の条例案が市民不在で進んでいる点をトップ記事で報道。条例に意欲を示していた岩橋市長のインタビューも掲載した。
共産党は最終日の賛成討論でも、同紙を取り上げて中傷。記事中の「同性・両性愛者」らの均等な利益享受を義務付けた同条例案は、「性別は実は曖昧(あいまい)で流動的なもの」(大沢真理・東大教授)という過激な思想が根底にある、との見方を隠蔽(いんぺい)しようと懸命だった。
八月下旬、ジェンダーフリーの思想的拠点、国立女性教育会館(ヌエック)で「女性学・ジェンダー研究フォーラム」が開催された。その様子は『ヌエックNEWS』にも紹介されているが、手元にその参加者のリポートがある。
集まったジェンダーフリー論者たちは、分科会の質疑応答の中で、千葉県市川市、大阪府堺市の男女共同参画条例を模範的条例と絶賛。いずれも、「男女の性別にとどまらず、性同一性障害者等のあらゆる人の人権が尊重される社会の構築」を基本理念としてうたっている。
都城市の条例案は、その「性的少数者」の均等な利益享受を保証しており、もっとラディカルなものだ。今回の可決で同条例は過激なジェンダーフリー論者から、最も模範的とたたえられることは間違いない。
一方、鳥取県では、県教委や青少年育成県民会議の子育て支援ポスターやリーフレットに対して、相次ぎ「父親、母親の役割を固定化している」との”苦情”が出された。苦情処理機関(推進員)の審査でポスターは作り直しとなった。
県条例の「性別による固定的役割分担…を助長し、又は連想させる表現(中略)を行わない」という条項が乱用された。父親・母親らしさを表現させない効果があった。
「サンデー世界日報」(十一月九日付)は、「苦情処理機関の検閲が始まった」との見出しで大々的に報道。鳥取県議会の反応も迅速だった。
自民党の鉄永幸紀議員は十一日、県議会の一般質問で、「重箱の隅をつつくように締め付ければ、広報物の行政目的が阻害されるのでは」と懸念を表明。改正案提出に乗り出した。
ところで、「ジェンダー研究フォーラム」には、鳥取の女性県議、尾崎薫氏も参加。一人で会派「えがりて」を作るバリバリのジェンダーフリー論者だ。鳥取県の条例案は同氏が巧みに自民党を動かし制定させた経緯がある。このため、鳥取県条例も市川・堺市条例と同じく模範的条例案と紹介された。
鳥取県議会は十七日、圧倒的多数の賛成で問題の条項改正案を可決。一方的に権限を持っていた推進員の審査結果に対する十分なチェック機能を設けた。
片山善博鳥取県知事は、これまで男女共同参画条例に前向きで、全国でも一、二を争う早さで同条例を制定。だが、問題点の認知も早く改正案に理解を示している。
翌日、都城市議会は、この「表現の規制」につながる条項も入った「男女共同参画社会づくり条例案」を可決。こうした“検閲”が同市でも起きるのは避けられない。
岩橋市長も片山知事と同じく「新しもの好き」とみられている。だが同市長は、「過激な思想が条例案の根底にある」との本紙の指摘に、最後まで耳を貸さなかった。
伝統的価値体系を根底から破壊しかねない条例案が、今も各地方自治体で準備されている。首長の見識が一層問われることになる。