平成15年12月15日
過激な項目並ぶ男女参画条例案
「性の自己決定」「ジェンダーフリー教育」/宮崎県都城市で18日に採決へ
宮崎県都城市の「男女共同参画社会づくり条例案」は、「同性愛・両性愛者の人権」に目が向けられてきたが、「性の自己決定権」など過激な項目がすべて入っていることが本紙の調査で判明した。一方、市当局は同条項制定のため「本市は、配偶者間の性行為を強いられる率が高い」などと答弁、市議会をミスリードしている。過激な条例案の見直しや継続審議、条例改正の動きが相次ぐ中、都城市だけが、恣意(しい)的な中絶、表現の自由規制につながる条例案を推し進めようとしている。
(山本 彰)
他県・市で見直し相次ぐ中
市当局が議会答弁でミスリード/「配偶者間で性行為強いる率高い」
同性愛者の尊重を訴え、条例案を高く評価する岩橋市長(右端)。左端は、答弁書に目を通す長谷川企画部長=10日、宮崎県都城市市議会
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同条例案は、一般質問で岩橋市長が先頭に立って「同性愛の人権」を力説しているが、「読めば読むほど、何を言いたいのか分からなくなる」(有満忠信議員)ような文言の中に、過激な条項がちりばめられている。
福岡市条例案と比較すれば、その突出ぶりが一目瞭然(りょうぜん)だ。福岡市は「中間とりまとめ」では、女性が恣意的に妊娠中絶を行える道を開く「性の自己決定権」、男らしさ、女らしさを否定する「ジェンダーフリー教育」、「表現の自由規制」になりかねない項目など、過激な六項目すべてが入っていた。
同市が、「中間とりまとめ」について市民の意見を公募したところ、これらの条項に反対意見が殺到。このため、十二月一日に公表された変更案では、「性の自己決定権」を含め四項目が削除された。
ところが、都城市の条例案は、この条項を全部盛り込んでいる上、文言もはるかに激しい。加えて、福岡市にはない「同性愛・両性愛者」の人権尊重がうたわれている。市民の声をどう取り入れたかも不明だ。
さらに、黒木優一議員の質問(十日)に対し、「性の自己決定権」を盛り込む理由として、「都城市は、配偶者間で性行為を強要される率が高い」(長谷川慈弘・企画部長)ためだと説明した。一体、データをどう集めたのだろうか。「到底、議会で行うようなレベルの答弁ではない」(保守系市議)と、憤慨する声も上がっている。
福岡市だけではない。茨城県つくば市では十二日、ジェンダーフリーと共産主義思想が根底にある「つくば市男女共同参画社会基本条例案」が、文教厚生委員会において十対一で否決(共産党だけ賛成)され、継続審議となった。
内閣府の坂東真理子・前男女共同参画局長も条例案支援に同市主催行事で基調演説(十一月十六日)したが、市議会の良識で覆った。
鳥取県では、県の男女共同参画推進条例の「性別による固定的な役割分担…を助長し、又は連想させる表現を行わないように努めるべき」との条項が、具体的に家庭教育用のポスターを“検閲”する状況に発展。このため、自民党や公明党県議団ら圧倒的多数の県議が十二日、条例の改正案を共同で議員提案した。
こうした中、都城市は鳥取で弊害が具体的に表れた条項を含め、「市民の声を聴く会」で示された内容より過激だが、分かりにくく巧妙に書かれた条例案を十八日、可決しようとしている。
「両性愛者条項」で不倫容認?
条例の文言 意味、読み過ごしやすい構造
「政府のお墨付き」説明に矛盾
「読みにくい」と宮崎県都城市の市議会で問題になった男女共同参画条例案――。読み進めれば、重層的に関連し、意味を読み過ごしやすい構造になっており、重大な内容を含んでいるにしては、説明が不親切になっている。
同条例案は最初に、定義として「すべての人」という概念を明記している。
その中に、通常の男女だけでなく、性的指向性という言葉で、同性愛者、両性愛者など「性的少数者」を含めている。
その後は、「すべての人」としか書かれていない。語句の定義をしっかり理解していなければ、後の条文で何気なく読んでしまう。
さらに、「すべての人」が男女共同参画社会を形成し促進する。つまり、都城市の男女共同参画社会は、同性愛者、両性愛者ら「性的少数者」の権利尊重と機会および結果の平等(均等な利益享受)も目指す社会だ。
これは、同性愛者の“結婚”も含まれている、と言える。社会制度上の利益を均等に得ることを保障しているためだ。法的には認めなくても、結婚により確保される制度的便宜を享受できるようになるとみられる。
また、条例で「両性愛者の人権の尊重」をうたうことは、結婚していても性的関係を男性、女性両方とも結べるわけで、不倫も公式に認めることになりはしないか。
こうした危うい内容を含んだ社会を、条例案は理想的な男女共同参画社会とうたっている。
そして、この「男女共同参画社会」が、「性と生殖に関する権利及びそれに基づく健康への配慮」(第7条)、「教育における配慮、教育に携わる者の責務」(第8条、13条)、「事業者への依頼及び是正の要求」(第21条)などあらゆるところで盛り込まれている。
このため、学校教育で同性愛者、両性愛者の人権尊重を教えることが責務となる。義務教育でそれが適切かどうか。「男女平等を目指す男女共同参画社会」と似て非なる内容をうたっている。
さらに込み入った印象を与えているのが、基本理念の説明だ。
第10条の文言の中で、初めて出てくる。それも「第3条から前条(9条)までに規定する男女共同参画社会の形成についての基本理念」(以下「基本理念」という)という説明だ。極めて異例な構成で、これがさらに全体像を把握しにくくしている。
それでいて、「農林水産業及び商工業の分野における環境の整備」(第22条)のなかで、「基本理念が早急に実現できるよう」と書かれている。「分かりにくい」と言われても仕方がない。
従って、「基本理念に則(のっと)り、男女共同参画社会を促進」と記述するだけで、極めて多くの意味を含むことになる。
悪文と言わざるを得ない同条例案だが、「内閣府の男女共同参画局から『都城市の条例案は、男女共同参画社会基本法に照らして、指導、指摘するような内容はない』との判断をもらっている」(長谷川企画部長)という。
条例案について、「盛り込むべき条項」説明会(「市民の声を聴く会」八月二十七日)で、羽田野信拓主査が「宮崎県や都城市は全国的に比べてかなり中絶率が高い。毎回上位三位くらい。一位になったり、二位になったりとか、そういう状況にあると言われている」と説明。
実際には、過去何年間も上位十位以内に入っておらず、最新データでも第十七位(平成十三年)である。二十未満の女性の中絶率は、全国二十七位(同)。
内閣府男女共同参画局に、この件で問い合わせたところ、「条例は、地方自治体の議会の判断で決めていくもの。内閣府は、条例案の是非を判断する立場にはない」(総務課総括係・難波係長)との返事。市側の説明と矛盾している。