※世界日報社は米紙クリスチャン・サイエンス・モニターと提携しています。

2009年4月10日

米の影響力増大、露中が敬遠?

IAEA事務局長選で日本人候補落選

手腕試されるイラン核開発疑惑解決

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長の後任を選出する作業が進められている。誰が選出されるのか現時点では不明だが、確実に言えることは、IAEAにはイランの核開発疑惑に対して最終的な解決策を提示することができる、力強い指導者が必要だということだ。そういう仕事をしてこそ、「核の番人」と呼ぶにふさわしい。

 先月下旬、次期事務局長を選出する第一回の無記名投票が実施されたが、有力視されていた天野之弥・駐ウィーン国際機関代表部大使(61)は、当選に必要な有効投票数の三分の二を集めることができなかった。

 外交筋によれば、ロシアや中国を含む幾つかの国は、イランの核疑惑を監視すべき機関のトップが米国の有力な同盟国から選出されれば、米国の政策に左右されるのではないかと危惧きぐしているという。獲得票数が天野氏よりも下回った南アフリカのアブドゥル・ミンティIAEA担当大使(69)は、あまりにも対立色が強過ぎると見なされた。

 エルバラダイ事務局長の時代には難問が多発した。控え目なエジプト人である同氏は、イラク戦争に突き進もうとする米国に対して異議を唱え、イランの問題でも米国に同調しなかった。そして、イランに核兵器開発の意図があるのかどうかは「まだ結論は出ていない」と発言した。エルバラダイ事務局長は今年十二月に離任する。

 イランに核開発の意図があるかどうかは結論が出ていないかもしれないが、イランは今年中にも核兵器製造に乗り出すために十分な濃縮ウランを造る戦略的能力を獲得するのは間違いない。

 イランは原発用ウラン燃料を製造しようとしているだけだと主張しているものの、米国は信用していないし、イスラエルは、イランの核計画と、弾道ミサイル能力保持を国家存亡の危機と位置付けている。

 IAEAのイラン核計画調査は行き詰まっている。過去六年に多くの問題が明確になったものの、まだ問題が数多く残っている。最大の疑問は、イランの核計画が持ち得る軍事的局面は何か、ということである。IAEAとイランはこの問題について昨年の夏以来、実務者会議を開いていない。イランは、米国が武器化を示すドキュメントとしているものを、偽造と決め付けている。

 IAEAに詳しい外交官は「イランが交渉のテーブルに着くかどうかは、政治的合意に達して見返りを得ることができるかどうかに懸かっている」と話す。二〇〇三年以降、IAEAはイランの核開発計画の真意を探ろうとしてきたが、成果は上がっていない。しかしIAEAの重要な役割を疑問視する声は上がっていない。数人の米国の高官は「イランの核開発計画の中身を知る手段は、IAEAの査察に懸かっている。イランの核施設に駐在している専門家の直接の目撃評価に代わるものはない」と語った。

 こうして見ると、次期事務局長の選出は極めて重要だ。次の選挙のための候補者には、経済協力開発機構(OECD)原子力機関のエチャバリ事務局長(スペイン)や、IAEAの将来像を探るために設置された「国際賢人委員会」の委員長を務めたセディジョ元メキシコ大統領の名前が挙がっている。

 誰が選出されようとも、IAEAは完全な独立機関として維持されなければならない。これが守られるべき最低ラインだ。イランの核疑惑を外交手段によって解決できるかどうかは、同機関の検証能力次第である。疑惑の否定には、ウラン濃縮が原発用燃料製造の枠を超えていないことか、あるいは広大な国土で濃縮が行われていないことを立証する必要がある。いずれにせよ、査察官は現場で検証しなければならないだろう。

 効果的な査察を実施するためには、加盟国からより多くの予算や情報を提供してもらう必要がある。加盟国の期待に沿う活動を実施するためには、力強くて策略に富む事務局長が必要だ。事務局長の影響力は、原子力を持ちたがっている途上国と核不拡散の確約を求める西側諸国の両サイドから信頼を得ることができるかどうかに懸かっている。

(米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」特約)