2009年3月23日
スーダン大統領への戦争犯罪逮捕状
反政府組織を刺激
和平協定破綻の可能性も/和平協定破綻の可能性も
今月初め、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は三十万人が死亡したとされるダルフール紛争での「戦争犯罪」や「人道に対する罪」による容疑で、スーダンのオマール・アル・バシル大統領に逮捕状を発付した。現職の国家元首に逮捕状が発付されるのは初めてのことだ。軍や民兵組織に対して、反政府組織を支援したとされるダルフール地方の少数部族の壊滅を命じた疑いも持たれている。
ICCのスポークスマン、ローレンス・ブライロン氏は「バシル大統領は、重要な要素をなす市民への襲撃……殺人、レイプ、拷問、住民の強制移動、土地の略奪などを指示した容疑で、刑事責任を問われている」と語った。
「バシル大統領を訴追する動きが出てきたのは、過去六年間に発生した何十万人もの犠牲者にとって意義のある第一歩だ」とワシントンのアムネスティ・インターナショナル専務理事を務めるアリエラ・ブラッター氏は語る。
国連の推計によれば、アラブ系政府に反発する黒人系の反政府組織が武装蜂起した二〇〇三年以降、約三十万人ものダルフールの住民が虐殺され、二百五十万人近くが住居から逃亡したという。一方、バシル政権は市民殺害の指示は出していないと否定し、死者数も国連やICCの推定よりもはるかに少ないと主張している。
今年総選挙を控えるスーダンで、ダルフール反政府勢力は活動範囲を近隣国家に拡大しており、アラブ系支配の政府と南部準自治地域の緊張は高まっている。首都ハルツームの郊外で今月初めに行われた与党「国民会議党」(NCP)の応援演説の中で、バシル大統領はICCは起訴状を食ってしまえと述べ、ICCの決定を無視する意向を示した。
南部の反政府組織の元指導者で、現在はバシル大統領と連立を組むサルヴァ・キール第一副大統領は「もし和平が破綻すれば、スーダン自身を傷つけるだけでなく、地域に深刻な影響をもたらすだろう」と語った。
バシル大統領は包括的和平協定に調印し、連立政権を組んで権力を南部の反政府組織「スーダン人民解放運動」(SPLM)と共有することに同意することで、数十年もの長期にわたって数百万人もの犠牲者を出し続けた内戦を二〇〇三年に終了させることに成功した。しかし、SPLMの指導者がバシル政権は退陣すると判断すれば、和平協定が破綻しかねないと専門家は見ている。
一方、ニューヨークの社会科学研究評議会でスーダン情勢について研究しているアレックス・デ・ワール氏は「バシル大統領は、今年実施される総選挙や二〇一一年に実施予定の(スーダン南部独立の是非を問う)国民投票などの重要案件に取り組んでいる」と述べ、大統領の立場を擁護した。アフリカ連合(AU)とアラブ連盟の首脳らも、スーダンの内政事情を考慮した上で、国連安全保障理事会に対して少なくとも一年間は訴追を凍結するように要請している。
また、ICCの公平性に対する疑問の声も上がっており、バシル大統領の立場を擁護するアフリカ諸国の指導者も多い。ヨハネスブルク大学副学長のアダム・ハビブ氏によれば、ICCは欧州諸国よりも立場の弱いアフリカ諸国の罪を問題視する傾向が強いという。「まるで白人の正義を振りかざしているように見える」とハビブ氏は指摘した上で、「ダルフール紛争という弱点があるため、バシル大統領を標的とすることは容易だ。しかし、何千人もの市民が殺され、国の破壊をもたらした米国のイラクに対する不法な軍事介入という犯罪を棚上げしている」と語った。
同氏はさらに、米国が正義を呼び掛ける指導的役割を担うことを望むならば、ICCに加盟すべきだと主張し、「常任理事国の一カ国が条約に調印していないのに、国連安保理がダルフールでの犯罪の捜査をICCに付託したのは組織的な偽善だ」と述べ、米国を暗に批判した。
しかし、「国際危機グループ(ICG)」副会長を務めるニック・グローノ氏は「国際社会はICC決定支持を表明し、国連安保理の要請通り、スーダンとその他の国に対してICCに協力するように主張すべきだ」と語った。
(米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」特約)