米大統領、壁建設で非常事態宣言へ


政府閉鎖回避も野党反発

 トランプ米大統領は15日、メキシコ国境の壁建設費用を捻出するため、国境から犯罪者や違法薬物が流入する「国家の危機」だとして非常事態を宣言すると発表した。野党・民主党はこれに強く反発し、法的手段を取る構えだ。トランプ氏は、14日に上下両院で可決した予算案には署名する方針で、政府機関の閉鎖は回避される。

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メキシコ北西部ティフアナから見た対米国境付近の様子=14日(AFP時事)

 ホワイトハウスのサンダース大統領報道官は14日の声明で、「トランプ氏が予算案に署名する」とした上で、「国家の安全や人道の危機を止めるため非常事態宣言を含む大統領権限を行使する」と明らかにしていた。

 議会で可決した予算案は、国境の「フェンス」建設費として、13億7500万㌦(約1500億円)を含むが、トランプ氏が求めていた57億㌦(6300億円)より大幅に少ない上に「壁」という表現も入らなかった。トランプ氏は、2016年大統領選の主要公約だった「壁建設」で大幅な譲歩を迫られることから、これに不満を表明していた。

 米ABCニュースによると、ホワイトハウス当局者は、トランプ氏は非常事態宣言などの大統領権限によって80億㌦(約8800億円)規模の財源を壁建設に振り向ける。国防費や薬物対策費の一部が活用されるとみられる。

トランプ米大統領

トランプ米大統領=11日、テキサス州エルパソ(AFP時事)

 一方、民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は14日の声明で、非常事態宣言について「不法行為であり、大統領権限の大幅な乱用だ」と非難。ペロシ氏は会見で、大統領権限行使による壁建設を阻止するため、法的手段も「選択肢の一つ」と語った。

 一方、サンダース氏は、記者団に法的闘争について「万全の準備ができている」と語り、自信を示した。

 壁建設をめぐる緊急事態宣言について、与党・共和党内では、マコネル上院院内総務やマッカーシー下院院内総務ら幹部が賛意を表明する一方、反対する声も上がっている。

(ワシントン山崎洋介)