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米国政府閉鎖、不法移民侵入対策で妥結必要


 米国の連邦議会が開幕し、昨年11月の中間選挙で野党民主党が下院で多数派となる中、トランプ大統領の公約である米メキシコ国境の壁建設費57億㌦の予算化をめぐり、政府機関の一部閉鎖を招くなど厳しい対立が続いている。

 トランプ氏は大統領執務室でテレビ演説を行い、制御できない不法移民の流入を安全保障上の危機として訴えて民主党に協力を求めた。共和党政権と民主党の妥結が望ましい。

背景に亀裂の深まり

 政府閉鎖は19日目に入っており、クリントン政権時代の21日を抜く可能性もある深刻な事態だ。民主党のペロシ下院議長は即座に反論会見をしてトランプ氏の求めを拒否したが、このような両党の対立が続けば、3月の連邦債務上限への措置をめぐっても膠着(こうちゃく)し、米国の債務不履行が現実化しかねない。

 背景には米国内の亀裂の深まりがある。選挙で“暴言”作戦を用いたトランプ氏は、就任以来、リベラル派の激しい批判に曝(さら)されている。その勢いで、中間選挙では民主党が下院で過半数を制した。

 民主党は多くの新人議員を迎え、次期大統領選に向けて反転攻勢しようとしている矢先でもあり、対立に拍車が掛かりそうだ。特に、トランプ氏の岩盤支持層である南部の保守層が熱望する壁建設を挫折させることは、党利党略として合理的なことではあろう。

 しかし移民は当然、法的手続きに則(のっと)って入国しなければならない。広大な国土の長い国境線や海岸線から米国に不法侵入してきた人口は、一昨年の国土安全保障省の調査による推定で1110万人だが、一説には2000万人を超えていると推計されるほど膨れ上がっているという。このような状況では、国家として対策を取らない方がおかしい。

 壁問題で米マスメディアの関心は共和・民主両党の政争にあり、トランプ氏の公約を極論として批判する傾向が強い。ただ事の本質は中南米の貧困問題や麻薬密売など組織犯罪問題であるにもかかわらず、中南米諸国の治安や政治・経済の在り方を問うことが少ない。

 こうした国々の人たちが、たとえ米国での生活を夢見て違法に国境を越えても、待ち受けているのは低所得などの困難な現実であり、そこに密輸組織が紛れるなど犯罪の温床にもなっている。

 トランプ氏はメキシコとの国境から米国で密売されるヘロインの90%が入ってくるなどの問題を指摘した。密売や、中毒による殺人事件などの犯罪増加が看過できないのは理解できる。

違法な手法を黙認するな

 昨年は、米国移住を願う何千人もの「キャラバン」が北上して世論の同情を集めたが、違法な手法を黙認しては国際秩序が崩壊する。ペロシ氏は国境の女性や子供は安保上の脅威ではないとトランプ氏の演説に反論したが、あくまで出身国に留めて違法行為に走る移民集団が発生しないように国際支援などの対処を模索すべきではないのか。

 政府閉鎖の事態を招くなど政争の具と化し、問題解決に至らないことは由々しいことだ。