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米海軍、北極海で「航行の自由」実施へ


 米海軍は、南シナ海で実施している「航行の自由」作戦を北極海でも実施しようとしている。近年の氷解によって航路が開かれるとともに、海底資源の探索が可能になるため、ロシアなどが海域での支配力強化をもくろみ、覇権争いが起きる可能性があるからだ。

ロシアが海域の領有主張

 スペンサー海軍長官は今月、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)で、ロシア海軍は、北極での覇権を確立しようと、挑発的な動きを強めており、米国はこの海域でロシアに後れを取っていると指摘。「米国はアラスカの北極海岸に戦略的な港を持つ必要がある」と強調し、北極海での航行の自由作戦と通航の監視の必要性を訴えた。

砕氷船「ヒーリー」

米沿岸警備隊の砕氷船「ヒーリー」(米沿岸警備隊提供)

 アナリストらによると、これまでロシアとカナダが交易路として利用していた北極海は、氷解が進み、航路利用の拡大が見込まれている。航路以外にも、海底に眠る原油、天然ガス、金、銀、ダイヤモンド、銅、チタン、ウラン、レアメタルの採掘が可能となる可能性があり、その価値は35兆㌦に上るという。

 米国は、北極海での明確な戦略を立案しなければ、この海域の開発競争から取り残される可能性がある。

 スペンサー氏は12日の上院軍事委員会海軍力・即応性小委員会で、ロシアが北極海沿岸で軍事力を強化していることを指摘、「5本の滑走路の設置を進め、特殊部隊スペツナズの要員1万人が、『捜索・救難』のために派遣されている」ことを明らかにした。

 ヘリテージ財団のトム・カレンダー上級研究員は、「紛争の可能性が高まっている」と警告、海軍は海域でのプレゼンスを拡大し、国防総省は、新たに開かれる航路はすべての国に開かれるべきだという強いメッセージを発するべきだと訴えた。

 米海軍の空母「ハリー・S・トルーマン」を中心とする空母打撃群が10月、カナダ軍とともに北極圏で初めての合同海軍演習を実施、すでにこの海域でのプレゼンス強化に取り組んでいる。

 ロシア北部沿岸沿いの航路は大西洋と太平洋を結び、ロシアが「排他的経済水域」と主張する海域を通る。航路の大部分は公海だが、ロシアは領有を主張、元海軍作戦部長特別顧問で、現在、シンクタンク「戦略・予算評価センター」上級研究員のプライアン・クラーク氏はワシントン・タイムズに対し「北極海沿岸各国は、ロシアが航路を自国領と主張していることに懸念を抱いている。…いずれ、ロシアが航路を事実上支配してしまわないよう航行の自由作戦を実施することになる」と述べた。

 だが、クラーク氏は、米海軍が環境の厳しい北極海で作戦を実施できるかどうかについて疑問を呈した。同氏によると、海軍は砕氷船を保有しておらず、沿岸警備隊が6隻を保有しているにすぎない。

 元海軍大佐のジェリー・ヘンドリックス氏は、北大西洋と北極海で高まっている緊張に対処するために海軍に砕氷船を導入するよう要求。「次世代フリゲート艦計画」に砕氷船を盛り込むことを提唱している。沿岸警備隊では砕氷船の武装化を要求している。

(ワシントン・タイムズ特約)