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米大統領、INF全廃条約離脱の意向


「ロシアが違反」と非難

 トランプ米大統領は20日、冷戦時代に旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱する意向を示した。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が22~23日にモスクワを訪問し、ロシアのラブロフ外相らに離脱の方針を伝える見通し。

トランプ大統領

20日、米ネバダ州エルコで、記者団に語るトランプ大統領(AFP時事)

 トランプ氏は遊説先のネバダ州で記者団に対し、「ロシアが何年も前から条約に違反してきた」と非難した上で、「その合意を終わらせるつもりだ」と述べ、INF条約から離脱する意向を表明した。

 トランプ氏は「ロシアや中国がこうした兵器を開発しているのに、米国だけが条約を守ることは受け入れられない」と指摘。中露両国が中距離核戦力の開発をやめない限り、米国も戦力を増強させる必要があると強調した。

 INF条約は、射程500~5500㌔の地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの全廃と保有禁止を定めたもの。だが、米国は近年、ロシアが条約に違反して北大西洋条約機構(NATO)加盟国を射程に収める中距離核戦力の開発を進めていると批判してきた。

 一方、条約に参加していない中国は、西太平洋への米軍の展開を阻む接近拒否・領域拒否(A2/AD)戦略の一貫として中距離核ミサイルの整備を進めている。トランプ氏のINF離脱表明には、こうした中国に対する警戒感も背景にある。

 トランプ政権は2月に公表した核戦略文書「核態勢の見直し(NPR)」で、ロシアと中国が核戦力を増強させていると指摘。ロシアがINF条約を順守しなければ、海洋発射型の核巡航ミサイルを新たに開発すると警告した。

 米国はかつて、海軍の核搭載型巡航ミサイル「トマホーク」(TLAM―N)を太平洋や欧州に展開していたが、「核なき世界」を掲げたオバマ前政権は、2010年に公表したNPRで退役を決定した。トランプ政権が、INF条約を離脱し、核トマホークの後継ミサイルの開発を進めれば、中露両国が反発し、対立が強まることが予想される。

(ワシントン山崎洋介)