「ブラジル版トランプ」誕生か


大統領選へ右派候補が優勢

 今月7日に大統領選挙を控えているブラジルで2日、最新の世論調査結果が発表され、選挙戦の終盤で「ブラジル版トランプ」とも言われる右派の元軍人ジャイル・ボルソナロ候補(63)の支持が伸びていることが分かった。

ボルソナロ下院議員

ボルソナロ下院議員(AFP時事)

 世論調査会社ダッタ・フォーリャ社が同日に発表した世論調査によると、ボルソナロ候補の支持率は32%、9月28日の前回調査より4ポイントもの伸びを見せた。一方、ボルソナロ候補と事実上の一騎打ちになっている左派系労働党から出馬しているフェルナンド・ハダド元サンパウロ市長(55)の支持率は21%と前回の22%より若干下がっており、ここ1カ月で10ポイント以上もの伸びを見せた一時の勢いは影を潜めた印象だ。左派のシロ・ゴメス候補は11%、中道右派で大物政治家のジャラルド・アウキミン元サンパウロ州知事は8%にとどまっている。

 また、今回の調査で印象的なのは、決選投票における支持率だ。軍政支持など過激な言動を続けるボルソナロ氏に対しては反発も強く、すべての世論調査で、決選投票では敗れるという結果が出ていた。

 ところが、今回の調査で初めて決選投票でのボルソナロ氏に対する支持率が、ハダド氏を逆転する結果が出た。ダッタ・フォーリャの調査では、決選投票でのボルソナロ氏の支持率が44%、ハダド氏が42%だ。

 過去の軍政を擁護したり(ブラジルは1985年に民主化するまで軍政下にあった)、同性愛差別、女性蔑視、銃規制反対など、過激な言動を続けるボルソナロ氏に対する反発は確かに強い。先日もブラジル各地で女性を中心とした反ボルソナロの大規模なデモがあったばかりだ。

 ボルソナロ氏を支援する層はさまざまだ。石油公社ペトロブラスに絡んだ汚職事件で多くの政治家が捜査の対象となってきた。捜査対象の政治家は与野党すべてに及び、労働党のカリスマ政治家ルラ元大統領は今年4月に収賄罪で収監された。現職の中道右派テメル大統領にも汚職疑惑が掛かっている。こうした中、ボルソナロ氏は、収賄疑惑が上ってこない数少ない候補の一人だ。

 また、選挙終盤となり、中道や中道右派の大統領候補から、ボルソナロ氏支持に乗り換える市民や議員も出ている。特に、経済界はハダド氏の当選は避けたいとみており、2日の世論調査結果を受け、ブラジル為替市場と株式市場は大きく反応、ブラジル通貨は対ドルで大きく値を上げると同時に株価も上がった。

 さらには、これまでは労働党の牙城だった貧困層にも、保守派キリスト教系の信者などを中心に、中絶や同性愛、凶悪犯罪に対して厳しい持論を持つボルソナロ氏を支援する人々が増えているという。

(サンパウロ綾村悟)