世界日報 Web版

米長官訪朝中止、露呈した北非核化の難しさ


 トランプ米大統領はツイッターで、今週予定していたポンペオ米国務長官による北朝鮮訪問を中止すると発表した。前日に訪朝を発表した後の突然の方針転換で「トランプ流揺さぶり」との見方も出ているが、北朝鮮非核化をめぐる米朝交渉の行き詰まりが背景にあるようだ。北に非核化を迫るのは一筋縄ではいかないことを露呈した形だ。

 折り合いつかぬ交渉

 トランプ氏は中止の理由について「朝鮮半島の非核化について十分な進展がないと感じているため」と語った。これまで北の非核化を評価する発言を続けてきたトランプ氏が悲観的な思いを吐露するのは異例のことだ。

 ポンペオ氏訪朝は6月の米朝首脳会談後、膠着(こうちゃく)状態にあった米朝交渉を打開させるカギを握るとみられていた。米国は北朝鮮が保有する核関連施設の情報開示をはじめ非核化の工程表を示すよう求め、北朝鮮は体制保証につなげる終戦宣言を急ぐよう促していたとされるが、折り合いがつかないようだ。

 訪朝時に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談するめどが立たなかったことも影響した可能性がある。首脳会談開催に向けた会談に応じた金委員長も、非核化をめぐる詰めの話し合いをする段階になるとメリットを見いだせなかったとみえる。

 当初から懐疑的な見方が少なくなかったが、北朝鮮に完全非核化の意志はあるのか。米メディアなどを通じて明らかになる北朝鮮の核開発続行の事実は、逆に非核化には応じられないという抵抗心すら感じさせる。

 トランプ氏は中止指示と関連し中国への不満もにじませた。米中貿易摩擦で中国が「以前のように非核化に協力的だとは思えない」と述べた。

 中国は非核化を迫るための対北制裁に表向きには参加する一方で、融和ムードを理由に制裁緩和を主張し始めた。米国との関係を決定的に悪化させない限り、今後も北朝鮮の後ろ盾になるとみられる。

 トランプ氏は中国との貿易摩擦が解消した後、金委員長と2度目の首脳会談に臨む考えも示した。11月の中間選挙を前にして朝鮮半島の非核化で実績を作ろうという思惑もありそうだ。

 ただ、国内の政治的計算を優先させて北朝鮮と交渉するのは禁物だ。足元を見られ、北朝鮮への譲歩を余儀なくされる恐れがある。終戦宣言が先行して進み、肝心の非核化が置き去りにされるようなことだけは絶対あってはならない。

 中間選挙後、米政権の北非核化への関心は薄れることも予想される。そうなれば北朝鮮は核開発を完成させる時間稼ぎに利用するだろう。相手の事情を巧みに利用し、最終的には核保有国として米国と対等な立場で核軍縮交渉に臨もうとしているといわれる。非核化の不履行がまかり通るのではないか心配だ。

 最大限の圧力訴えよ

 米朝交渉が行き詰まりを見せ始める中、日本としては北朝鮮が非核化に向け具体的な行動を見せるまでは「最大限の圧力」をかけ続ける必要性を米国に訴えるべきだろう。親北路線の韓国にも北朝鮮の非核化意志が疑われる現実に目を向けるよう促したい。