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中国が海外企業に理不尽圧力、米「検閲の輸出」に危機感


 アメリカン航空など米航空大手3社は先月下旬、インターネットの予約サイト上で都市名と共に記載されていた「台湾」の表記を削除した。台湾を「中国の一部」だとして変更を要求していた中国の圧力に屈した形だ。米国では、こうした中国の高圧的な姿勢に危機感を抱き、政府に対抗策を求める声も上がっている。

航空会社が「台湾」削除
対抗策求める声

 中国は4月、航空会社の予約サイト上にあった台湾の表記を「中国台湾」などと変更して中国の一部と扱うよう海外航空会社44社に要求。従わなければ制裁措置を科す可能性があると警告した。

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米ニューヨーク、ケネディ国際空港のアメリカン航空のフライト・インフォメーション(UPI)

 期限とされた先月25日までに海外航空会社は相次いで台湾に関する表記を変更。大半の航空会社が中国の要求通り台湾を中国の一部として表記した。

 アメリカン航空やユナイテッド航空、デルタ航空の米航空大手3社は、「台北」などの都市名と共に記載されていた「台湾」を削除する一方、「中国」とも表記しないことで中国の要求を全面的に受け入れることは避けた。

 しかし、こうした3社の対応について、中国当局は、理由を明示せずに「不十分だ」として、さらなる「訂正」を要求している。

 こうした中国の圧力を受けるのは、航空会社だけではない。今年に入ってから、これまで中国国内で行われてきたインターネットへの監視が、海外企業の活動にまで向けられるようになっている。

 1月には、米ホテルチェーンのマリオットインターナショナルが、顧客向けにメールで実施したアンケートの中で「台湾」を国として扱ったなどとして、中国向けウェブサイトの閉鎖を命じられ、謝罪に追い込まれた。その後、米デルタ航空やスペインのカジュアルブランド「ZARA」などの欧米企業がウェブ上での台湾の扱いなどをめぐって、相次いで謝罪する事態が続いた。

 航空会社に対する中国の圧力をめぐっては、ホワイトハウスのサンダース報道官が5月、未来の監視社会を描いた英作家のジョージ・オーウェルを引き合いに「オーウェルの小説を連想させるようなばかげた考えだ」などと批判。米企業が中国の圧力に対抗することを支援すると強調した。

 しかし、結局、米航空会社は変更を余儀なくされ、米政府は事実上、黙認した格好となった。

 各社が中国の要求に従った背景には、中国市場の拡大がある。国際航空運送協会(IATA)が昨年発表した予測では、中国は、中間層の拡大により、2022年までに航空旅客者数が米国を抜き、世界最大の市場になるとされる。

 中国はこうした巨大市場を背景に自らの政治的立場を受け入れるよう海外企業に圧力を強めている。これに対して、米国など民主主義体制の国では政府が民間企業に中国の要求を拒むように強制できず、中国による「検閲の輸出」(サンダース報道官)を防ぐ有効な手段を持たないのが現状だ。

 こうした事態に、ワシントン・ポスト紙コラムニストのジョシュ・ロギン氏は「(中国が)高圧的な行動を取った場合、重大な損害を与えるような対抗策を考え出すことが必要だ」と主張。中国が海外企業に制裁を科す場合、海外で営業する中国企業にも同様の制裁を科すことが一つの手段となり得るとした。

 また、米シンクタンク、ケイトー研究所のダグ・バンドー上級研究員は「ナショナル・インタレスト」誌で、航空会社に対する中国の圧力は、「始まりにすぎない」と警告。今後に備え、トランプ政権は「入念に計画された報復措置を検討すべき」だと訴えた。

(ワシントン山崎洋介)