ペルー、クチンスキ大統領が辞任


ケンジ氏ら議員買収の疑い

 南米ペルーのクチンスキ大統領(79)が21日、国会に辞表を提出した。辞表は同日、国会で承認された。クチンスキ氏に関しては、22日に同氏の罷免決議案が国会で採決される予定だったが、採決は見送られることになった。クチンスキ氏の後任には、マルティン・ビスカラ第1副大統領が就任し、クチンスキ氏の2021年7月までの任期を引き継ぐ。

クチンスキ氏

クチンスキ大統領(AFP 時事)

 クチンスキ大統領が辞任に追い込まれた決定打となったのが、野党第一党のフジモリ派による買収疑惑ビデオの公開だった。

 20日に公開されたビデオには、大統領サイドが罷免決議案を否決に持ち込むために野党議員を買収しようとしていた様子が映っていた。

 辞任表明に際して、クチンスキ氏は、最後まで不正行為には関わっていないことを主張しながらも、「大統領を退くことが国益にかなうと考えた。国の障害にはなりたくない」と国民に説明した。

 クチンスキ氏は、昨年12月にも、ブラジルの建設大手から不正献金を受けたとして罷免決議案が採決された。しかし、最大野党のフジモリ派フエルサ・ポプラルの党首ケイコ・フジモリ氏の弟で国会議員のケンジ・フジモリ氏らのグループ10人が、野党連合から離反して、同案は否決されていた。

ケンジ氏(右端)とケイコ氏(右から2人目)

ペルーのフジモリ元大統領の次男ケンジ氏(右端)と長女ケイコ氏(右から2人目)=2012年10月、リマ(AFP=時事)

 一方、12月の罷免決議否決後、クチンスキ氏はフジモリ元大統領に対する恩赦を発表した。劇的な恩赦発表と罷免決議の期日が近かったことなどから、罷免決議とフジモリ氏恩赦に関してクチンスキ氏とケンジ氏の間で何らかの取引があったと憶測が流れた。

 また、20日公開の買収疑惑ビデオには、ケンジ氏が野党議員買収を主導したと疑われる内容も映っており、新党設立と20年の大統領選挙出馬に向けて動いているとみられるケンジ氏にとって、政治的ダメージとなりかねないスキャンダルになっている。

(サンパウロ綾村悟)