米一般教書、民主党との協力に努めよ


 トランプ米大統領は、就任後初となる一般教書演説を上下両院合同会議で行った。演説では「安全で強く、誇りを持てる米国を建設する」ことを宣言。米国の価値観を訴え、愛国心に基づく国民の団結を求めた。

 就任から1年間の大統領の言動とは対照的に、より多くの国民に向けて訴え掛ける内容であり、超党派で内政・外交を進める重要性を強調する演説であったと評価してよい。

 「融和」姿勢を打ち出す

 トランプ氏は就任後に「240万人の雇用が生まれた」と述べ、成果をアピール。昨年末に実現した税制改革によって「大規模な減税の恩恵が中間層に及ぶ」と自賛した。国際通貨基金(IMF)が最新の世界経済見通しで、2018年の世界全体の成長率を上方修正するなど、米国の減税が海外にも好影響を与えていることは確かだ。

 インフラ計画をめぐっては、今後10年間で1兆5000億㌦(約163兆円)の投資法案を打ち出した。当初1兆㌦を掲げていたが、規模を1・5倍に拡大する。貿易の分野では「米国は何十年もの間、雇用を奪ってきた不公正な通商政策をついに転換した」と述べ、公正で互恵的なルールの下で新たな貿易協定を実現する考えを強調した。環太平洋連携協定(TPP)などを念頭に置いたものだろう。

 演説で目立ったのは、既存政治の否定や反対勢力を非難する姿勢を封印し、野党民主党との「融和」を打ち出したことだ。背景には、苦戦が予想されている11月の中間選挙を控えていることがある。

 インフラ投資や移民政策は、民主党の協力を得られなければ実現は難しい。メキシコ国境への壁建設など不法移民対策の強化を呼び掛ける一方、幼少期に親と不法入国した移民のため、一定期間を経て市民権を与える道を開くと表明したのは民主党への配慮によるものだ。

 一般教書演説は国内に関する内容が中心となるが、大統領は安全保障の分野では最重要課題に位置付ける対北朝鮮政策に言及した。「無謀な核・ミサイル開発がすぐにでもわれわれの国土を脅かす可能性がある」と強調。「過去の政権の失敗を繰り返さない」と述べた上で「最大限の圧力」で核・ミサイル問題を解決する決意を示した。日本や韓国など東アジアの同盟国との連携強化を求めたい。

 同時に「比類のない力が防衛の最も確実な手段だ。核兵器を近代化して再構築しなければならない」と強調。核戦力を増強して「力による平和」を堅持する考えだ。

 トランプ氏の支持率は、1年を通じて40%前後で低迷してきた。就任1カ月後も1年後も、共和党支持者の8割強、民主党支持者の1割弱、無党派の3割強が支持となっている。

 二極化の進行止めよ

 一般教書演説では中間選挙や20年秋の大統領再選をにらみ、これまでの支持層に加えて広範囲の層に配慮する姿勢を一段と鮮明にした。

 米国では、オバマ前政権時代から有権者の二極化が進んでいる。安易な妥協は禁物だが、米国の安定と発展のため、民主党との協力にも努めてほしい。