米国家安保戦略 「力による平和」の徹底図れ


 トランプ米大統領は政権初となる「国家安全保障戦略」(NSS)を発表した。

 前回の策定はオバマ政権時代の2015年だった。軍事力に依存し過ぎずに国際協調主義を強調したオバマ政権とは違い、トランプ政権のNSSは米国の「死活的利益」として①国土安全保障と米国民の生命・生活の防衛②米国の繁栄の促進③「力による平和」の推進④一段と競争的な世界での米国の影響力拡大――を挙げた。

中露は「修正主義勢力」

 その上で軍事力を増強するとともに、経済面の問題も安全保障上の課題と位置付けて貿易不均衡の是正などに取り組み、「米国第一主義」のもと強い米国を構築し、政治、経済、軍事の面で優位を確保していく方針を示している。

 トランプ氏は「われわれは新たな競争の時代のさなかにある」と述べ、中国とロシアを米国の国益や国際秩序に挑む「修正主義勢力」と断言して強国同士の競争が再び戻ってきたと危機感を表明した。中国は南シナ海の軍事拠点化、ロシアはウクライナ南部クリミア半島併合という「力による現状変更」を進めている。

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮の金正恩体制については、先制的な軍事行動への具体的な言及を控える一方、大量殺戮(さつりく)武器の開発を推進する「ならず者国家」からの自衛権が米国にはあると明言した。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対しては「重層的なミサイル防衛を構築していく」と述べた。

 NSSはこうした脅威に対抗するため、軍事力強化など「力による平和」を重視する方針を打ち出している。強い米国を強調することは、多くの点で米国の外交政策の従来のテーマの継続性を反映している。NSSはそれを確認したと言っていい。

 トランプ政権は、オバマ政権の8年間で継続した国防予算の大幅削減を停止し、国防予算を増額して米軍を強化する。すでに議会との間で基本的合意はなされている。強大な軍事力を持つ米国の抑止効果で、世界の安定と平和を維持することが求められる。

 同時に、トランプ政権の米軍増強はあくまで米国民と米国の経済的繁栄を保護する米国第一主義に基づくものであることを忘れてはならない。トランプ氏は経済力の維持・強化が「国家安全保障に直結する」とも指摘し、米国民の利益追求を最優先する考えを改めて強調した。

 NSS発表は、国際秩序をしっかり守っていくためのリーダーシップを米国が発揮するという決意表明として真摯(しんし)に受け止めなければならない。日本はもとより米国の同盟国、友好国がそれを歓迎するのは当然のことと言っていい。

日本は一層の役割拡大を

 同時に、NSSは日本などの同盟国に対して「公平な分担と責任を負うことを期待する」と記している。日米同盟においても、日本は一層の役割拡大を進める必要がある。

 トランプ氏は「自国の繁栄を守れない国は海外の利益も守ることができない」と述べた。日本としても肝に銘じるべき言葉である。