同性婚ケーキ作り拒否は差別か


米連邦最高裁が審理へ

 米コロラド州でキリスト教徒のケーキ職人が同性婚のウエディングケーキ作りを断ったことが、州当局から同性愛者に対する差別行為と断定された問題について、連邦最高裁が審理することを決めた。米国では同性婚の合法化など同性愛者の急速な権利拡大に伴い、結婚は男女間のものと信じるキリスト教徒が社会的制裁を受ける事例が相次いでおり、最高裁の判断は信教の自由の在り方に大きな影響を与えることになる。
(編集委員・早川俊行)

「文化戦争」の潮流を左右

 連邦最高裁が先月26日に審理すると発表したのは、2012年に男性カップルから依頼された同性婚のウエディングケーキ作りを断ったジャック・フィリップスさんのケース。コロラド州人権委員会はフィリップスさんが性的志向に基づく差別を禁じた州法に違反したと断定し、今後は同性婚のケーキ作りを引き受けることなどを命じた。

ジャック・フィリップスさん

米コロラド州のケーキ職人、ジャック・フィリップスさん(保守系法曹団体「自由防衛同盟」提供)

 フィリップスさんは宗教的信念に反する行為を政府が強要することは信教・表現の自由の侵害だと主張したが、州の裁判所は人権委員会の判断を支持する判決を下していた。

 連邦最高裁がフィリップスさんの裁判を審理することを保守派・宗教界は歓迎。キリスト教徒の事業者が同性婚をめぐって糾弾されるケースが後を絶たず、「宗教迫害」とも呼べる状況が生まれていたからだ。

 ワシントン州では、同性婚のフラワーアレンジメントを断った花屋の女性が州最高裁から差別と断定された。敗訴が確定すれば、女性は同性愛カップルの訴訟費用の支払いで、自宅を含め全財産を失う可能性がある。

 また、オレゴン州では、同性婚のウエディングケーキ作りを断ったケーキ屋が州当局から13万5000㌦(約1500万円)もの巨額の罰金支払いを命じられた。

 15年の連邦最高裁判断で同性婚が全米で合法化された後も、同性婚をめぐる社会の亀裂は依然深刻だ。同性愛・同性婚への批判は一切許さない社会の実現を目指すリベラル勢力に対し、保守派・宗教界は信教の自由や伝統的価値観を守ろうと抵抗している。フィリップスさんの裁判は、そうした「文化戦争」の潮流を大きく左右する。

 保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のライアン・アンダーソン上級研究員は「連邦最高裁は今、結婚を夫と妻の結合と信じる人々の権利と自由を守る機会を得ている」と指摘し、信教の自由を擁護する判決が下されることを強く期待している。

 だが、逆にフィリップスさんが裁判に敗れれば、同性婚を間違いと信じる事業者が宗教的信念に反する仕事を断る権利が全米で否定され、信教の自由が一段と圧迫されることになる。