米が中国の銀行を制裁指定、トランプ政権で初


北朝鮮資金洗浄に関与

米政府は29日、北朝鮮による不正な金融取引に関与したとして、中国の丹東銀行(遼寧省)を制裁対象に指定すると発表した。北朝鮮問題で中国企業を制裁指定するのはトランプ政権下で初めて。

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 米財務省によると、丹東銀行は北朝鮮の大量破壊兵器開発に関わる企業への資金調達や北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した。

 米政府はまた、国連安保理制裁で禁じられたぜいたく品の密輸に関わった中国の海運会社と、北朝鮮による不正な資金調達に協力した中国人2人も制裁対象とした。制裁指定された企業や個人は、米国内の資金が凍結され、米金融機関との取引が禁止される。

 ムニューシン財務長官は記者会見で「北朝鮮への違法な資金の流れを全て遮断する」と強調。今後も北朝鮮による不正な取引に関与している企業を特定し、制裁を科す考えを示した。

 米政府は北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するため中国による影響力行使を期待している。ただ、中国は圧力強化に本腰を入れていないとの指摘も多く、トランプ米大統領はツイッターで「(中国の取り組みは)結果が出ていない」と不満を表明していた。

 今回の制裁指定は北朝鮮への働き掛けを中国に迫る狙いもあるが、影響力行使が期待できないと判断すれば、「為替操作国」認定を見送るなど中国に配慮してきた外交方針を転換する可能性もある。

 米国が北朝鮮問題をめぐって金融機関を制裁指定するのは、2005年9月にマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)を取引禁止対象にした例がある。この時は、米金融機関へアクセスできなくなることを危惧した中国系の銀行が次々と北朝鮮との取引を止めたことから、大きな効果を挙げた。今回の制裁でも、北朝鮮との取引を止める銀行がどれほど出るかが注目されている。

(ワシントン岩城喜之)