ロシア疑惑、司法妨害に否定的意見多く


前FBI長官は明言せず

 ロシア政府による米大統領選介入疑惑で、コミー前米連邦捜査局(FBI)長官が8日の上院情報特別委員会の公聴会で証言したトランプ大統領の行為について、法律専門家からは司法妨害に当たらないとの見方が多く出ている。

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8日、ワシントンで開かれた保守派の集会で演説するトランプ米大統領(岩城喜之撮影)

 コミー氏は公聴会で、フリン前大統領補佐官の捜査を「ほっておいてくれることを望む」としたトランプ氏の発言について「指示」と受け止めたと語ったが、司法妨害の意図があったかについては「私が見解を述べることではない」と言及を避けた。

 この証言について、ジョージ・ワシントン大学法科大学院のジョナサン・ターリー教授はUSAトゥデー紙(電子版)への寄稿で、「大統領の行動は不適切だったかもしれないが、犯罪を立証するには不十分だ」と主張。トランプ氏の行為を司法妨害だとする意見に対し、「コミー氏の証言だけで弾劾に持ち込むことはできない。この段階で司法妨害とするのは、非常に危険な解釈になる」とし、弾劾論に傾く一部民主党議員を批判した。

 また、FOXニュースの番組に出演したハーバード大学法科大学院のアラン・ダーショウィッツ名誉教授は「大統領は誰かの捜査をやめるようFBIに指示する権限を持っている」と指摘した上で、「(今回の公聴会で)トランプ氏が司法妨害したという主張に終止符が打たれたと思う」と語った。

 公聴会では、トランプ氏とのやり取りを記したコミー氏のメモ内容がメディアに漏洩(ろうえい)した背景も明らかにされたことが注目を集めた。

 コミー氏は、メモの内容を司法省やFBI関係者以外の数人と共有していたと証言。特別検察官の任命につながるよう期待して、「メモの内容を記者に伝えるよう友人に要請した」と明かした。

 コミー氏はメモについて「機密情報ではない」としたが、ターリー教授は「メモは政府の文書となる可能性が高い」とし、内容を記者にリークするよう要請したことを問題視した。

 一方、トランプ氏は8日、ワシントン市内で開かれた保守派の集会で演説し、ロシア疑惑でメディアから批判されていることについて「われわれは包囲されているが、これを切り抜けた後はこれまで以上に大きく、強くなる」と強調。さらに「われわれは戦いの仕方を心得ており、決して諦めない」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。

(ワシントン岩城喜之)