世界日報 Web版

「オバマ3期目」にリスクも


トランプVSヒラリー 米大統領選まで3カ月(4)

 「ドナルド・トランプ氏の気性で米軍最高司令官が務まるのかを問いたい」

 米民主党大会の最終日、指名受諾演説に臨んだヒラリー・クリントン前国務長官はこう強調し、外交・安全保障政策で物議を醸す発言が多い共和党のトランプ氏の「資質」に疑義を呈した。クリントン氏は演説で、上院議員や国務長官を長く勤めた経歴を誇るように語り、トランプ氏との違いを強調。そのたびに会場は大きな歓声に包まれた。

ジェイク・サリバン氏

7月25日、海外メディアとの会見でヒラリー・クリントン前国務長官の外交政策を説明するジェイク・サリバン氏(岩城喜之撮影)

 孤立主義的な方針を示すトランプ氏に対して、同盟国との関係強化を主張するクリントン氏の外交政策は広く受け入れられている。トランプ氏が在日米軍の撤退を示唆したことに対する警戒感もあり、クリントン氏に期待する声は日本でも多い。

 だが、ロシアのウクライナ問題や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭などで混乱する世界情勢に対して、クリントン氏が外交・安保政策を適切に進められるのか疑問視する米国の専門家は少なくない。

 その大きな理由として挙げられるのが、同氏が国務長官在任時に行ってきた外交政策に過ちが多かったことだ。

 中でも一番の失敗として指摘されているのは、ロシアとの関係改善を図った「リセット(見直し)」外交だ。クリントン氏は国務長官として融和路線を進めたが、ロシアの軍事介入によるクリミア半島併合などで関係は悪化。プーチン大統領に対する認識の甘さを露呈した。

 また、イラク駐留米軍を撤退させたことで「力の空白」を生み、ISの勢力伸長を招いた責任を問う声もある。

 米シンクタンク、ハドソン研究所の元所長ハーバート・ロンドン氏はワシントン・タイムズ紙への寄稿で、クリントン氏が行ってきた外交について「非常に浅はかだ」と批判。大統領候補として、過去の外交判断が正しかったか精査されなければならないと主張する。

 クリントン氏が大統領になることへの危惧は、安保専門家だけではない。経済学者でリベラル寄りの姿勢で知られる米コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、クリントン氏について「中東政策でひどい役割を果たした」と強調。さらに「クリントン氏の『外交経歴』は失敗の連続だった」との厳しい見方を示している。11月の大統領選で民主党候補に投票すると公言しているサックス氏でさえ、クリントン氏が外交・安保政策で多くのミスを犯してきたことは見逃せないとしているのだ。

 これに対し、クリントン氏の上級政策アドバイザーを務めるジェイク・サリバン氏は、民主党大会中に行った海外メディアとの会見で「クリントン氏はオバマ政権で国務長官を4年務めたことを誇りに思っている」と述べ、現政権の外交方針を基本的に引き継ぐ姿勢を示している。

 だが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、クリントン氏がオバマ大統領の外交政策を推し進めたことが「冷戦終結以降、世界を最も危険な状況にした」原因だと指摘し、次のように警鐘を鳴らす。

 「クリントン氏によるオバマ政権3期目のリスクを過小評価すべきではない」

(ワシントン・岩城喜之)