ベラルーシ吸収、ロシアの孤立が深まるだけだ


 旧ソ連解体で離別したロシアとベラルーシが、実質的な連邦国家の創設に動きだすのではないかとの噂(うわさ)が昨年末以来、広まっている。

 それもウクライナ南部クリミア半島併合と同じパターンで、人口数や国土面積などで断然優位にあるロシアがベラルーシを吸収する形での新国家創設だという。

 連合国家構想が浮上

 ロシアのプーチン大統領は昨年師走に、ベラルーシのルカシェンコ大統領と3回も会談を重ねた。両首脳はロシアが輸出する石油など資源価格の改定を議論したが、プーチン氏は「連合国家創設の計画発展に向けて努力しよう」とルカシェンコ氏に呼び掛けたと言われる。

 「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏は1994年以来、権力の座に居座り続けている。99年12月、当時のエリツィン・ロシア大統領との間で政治、経済、軍事面の統合を目指す連合国家創設の条約に調印した。

 しかし、翌年にエリツィン氏の後継者としてプーチン氏が大統領に選ばれた後、連合国家創設への歩みは途絶した。しかも、プーチン政権になってからのロシアが、エリツィン時代の経済混乱を乗り切って経済成長した勢いで、ベラルーシを吸収合併する野心をにおわせたため、ルカシェンコ氏は強く反発。両国の足並みが乱れた。

 ロシアは今年から税制改革の一環として、石油の輸出関税を引き下げ、2024年までに撤廃する予定である。このため、同盟国として関税面で優遇されていたベラルーシはその恩恵を失い、今後6年で約108億㌦(約1兆1700億円)の損失が出ると見込まれている。

 ベラルーシはこれまで、安価なロシア産原油の精製や国外転売などで外貨を得てきた。昨年12月上旬の国際会議で損失補填(ほてん)をロシアに求めたルカシェンコ氏に対し、プーチン氏は「別次元の統合が必要だ」と答えたことで、連合国家構想が再び浮上した。

 経済面でロシアに依存するベラルーシは、昨年末の首脳会談で統合を協議する作業部会の設置には同意したものの「ロシアへの吸収を狙うものだ」と反発。ルカシェンコ氏は「ロシアが西にある唯一の同盟国(ベラルーシ)を失うことになれば、それは彼らの選択だ。両国の連合は平等な立場でのみ発展できる」とロシアを強く牽制(けんせい)している。

 ロシアがベラルーシとの連合国家創設構想を改めて持ち出したのは、クリミア併合の場合と同じように、このところ年金改革などで支持率が落ち目のプーチン政権の実績となるとの計算がある。

 指導者就任の目論見

 また、24年にプーチン氏が大統領の任期満了を迎え、ロシア憲法で連続3選が禁じられていることに伴い、連合国家指導者のポストに就任することが可能になるとの目論見(もくろみ)があるとも言われている。

 だがベラルーシの反発を顧みずに吸収する形で連合国家を創設すれば、クリミア併合で経済制裁を受けているロシアは、国際社会でますます孤立を深めることになろう。