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東方正教会分裂、プーチン政権に大きな打撃


 キリスト教東方正教会の最高権威であるコンスタンチノープル総主教庁(トルコ・イスタンブール)は、ロシア正教会が管轄下に置いてきたウクライナ正教会の独立を事実上認める決定をした。

 2014年3月のロシアのプーチン政権によるウクライナ南部クリミア半島の併合以降、極度に悪化したロシアとウクライナの関係は東方正教会の内部対立にまで発展した。

 ウクライナ正教会独立へ

 総主教庁は、ロシア正教会がウクライナ正教会を管轄下に置く根拠となってきた1686年の決定を無効とし、ウクライナ正教会の独立手続きに着手すると発表した。これに対し、ロシア正教会は直ちに「破滅的な決定」と非難。さらに総主教庁との関係断絶を決め、東方正教会の分裂は決定的となった。

 分裂は決して望ましいことではない。だが、その原因の一つとしてクリミア併合やロシアによるウクライナ東部への軍事介入によってウクライナでロシア正教会離れが加速したことが挙げられる。プーチン大統領は、力による一方的な現状変更がこうした事態を招いたことを深刻に受け止める必要がある。

 キリスト教3大宗派の一つで信徒は約2億5000万人と言われる東方正教会では、各国教会が対等な地位にあるのが原則で、カトリック教会のローマ法王のような絶対的権威がいない。しかし、コンスタンチノープル総主教は「世界総主教」と呼ばれ、名目上ながら最高位の称号が与えられている。

 正教信者数が人口の約7割を占めるウクライナ正教会には、ロシア正教会に融和的な1宗派と、独立志向の2宗派(「キエフ総主教庁」と「独立正教会」)の計3宗派があって、このうち独立系2宗派が今春、総主教庁に「独立した地位」を求める嘆願書を提出していた。フィラレート・キエフ総主教は総主教庁の決定を受け、複数ある教会組織を統合して新たな正教会の設置を目指す考えだ。

 ウクライナ正教会の独立で、ロシア正教会は東方正教会で影響力を大きく失うことになる。ロシア正教会を通じて東方正教会世界に影響力を及ぼそうとしていたプーチン政権にとっても打撃となりそうだ。

 総主教庁は、ロシア正教会がプーチン大統領の願いを受け、世界の正教会を支配下に置こうとする野心があることに不快感を覚え、これがウクライナ正教会の独立承認につながったとされる。ウクライナのポロシェンコ大統領は「悪に対する善の勝利だ」と称賛した。

 プーチン氏は欧米的なリベラル主義に対抗して国民を統合する価値観として、国家や民族、宗教的伝統を重視するロシア正教を活用してきた。しかし、総主教庁との対立はロシア正教の正当性をも揺るがしかねない。

 発展にはつながらない

 クリミア併合を受け、欧米諸国が実施している制裁などの影響によって、ロシアでは景気が悪化し、食料品などの物価が上昇して国民の生活不安が高まっている。ウクライナへの強硬姿勢が、ロシアの発展や欧米との関係改善につながらないことは明らかだ。