プーチン氏4選、強権で繁栄は実現できない


 ロシア大統領選でプーチン大統領が圧勝し、4選を果たした。任期は6年で、2000年以来、首相時代の4年間を含めて、71歳になる24年までの実質24年の長期政権となる。

 欧米との対立深まる

 今回の選挙には8人が立候補した。しかし、プーチン政権批判の急先鋒で政権周辺の汚職問題を厳しく追及してきた野党指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏の出馬を選管が有罪判決を理由に認めなかったため、今回も事実上のプーチン氏への信任投票の様相を呈していた。プーチン氏の得票率は過去最高の76%超だったが、選挙の公正性が確保されたのか疑問が残る。

 プーチン氏は国内の批判を治安機関や司法も操って封じ込め、対外的にはソ連崩壊で失った勢力圏の回復を目指し米国中心の国際秩序に挑んでいる。強権的な手法で国内の安定を図り、14年3月のウクライナ南部クリミア半島併合など力による現状変更を目指す姿勢には懸念を抱かざるを得ない。

 クリミア併合によって欧米から経済制裁を受けて以降、プーチン氏は「外敵の脅威」を強調して国内をまとめ、それが大統領選の圧勝にもつながった。投開票日は国民の愛国心を煽(あお)るため、4年前にプーチン氏がクリミア併合を宣言した18日に設定された。だが、こうしたやり方がロシアの真の平和と繁栄につながるとは思えない。

 プーチン氏の前途は多難だ。ロシア経済はエネルギー資源に依存し、制裁の影響もあって低成長が続いている。貧富の格差は広がる一方で、国民の不満が高まれば社会が不安定化する恐れもある。

 クリミア併合やシリア内戦への介入などで対立が深まった欧米との間では、英国で今月起きた元ロシア情報員暗殺未遂事件が新たな火種となっている。英国に亡命した元ロシア軍情報将校とその娘がソ連時代に開発された軍用神経剤「ノビチョク」で襲われ重体となった事件だが、ロシアと英国との外交官追放合戦に発展している。欧米との関係を改善して制裁解除を実現し、経済立て直しにつなげる道筋は見えない。

 こうした中、プーチン氏が連続3選を禁じている憲法を改正し、任期を延長するとの見方も出ている。中国では今月の全国人民代表大会での憲法改正で「2期10年」までとする国家主席の任期が撤廃された。だがプーチン氏の任期が延びれば、ソ連崩壊によって実現した民主化は一層後退し、欧米との対立解消もさらに難しくなろう。

 安倍晋三首相は5月に訪露してプーチン氏と会談し、北方領土での共同経済活動の具体化について協議する予定だ。具体化には双方の法的立場を害さない「特別な制度」が必要だが、ロシアは「ロシアの法律が適用される」との立場を崩していない。

 不法占拠を容認するな

 ロシアは北方領土を極東の軍事的要衝として重視しており、16年には国後、択捉両島に最新鋭の地対艦ミサイルを配備した。領土交渉は困難が予想されるが、北方領土は日本固有の領土だ。安倍首相はロシアの不法占拠を容認しない姿勢を強く示す必要がある。