日露首脳は領土交渉進展へ信頼構築を


 アジア太平洋経済協力会議(APEC)参加のためインドネシアを訪問した安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と会談した。

 両首脳の会談は9月に続いて4回目。安倍首相は首脳同士の信頼関係を拡大し、今後本格化する北方領土交渉の進展に全力を尽くすべきだ。

安倍首相就任後4回目

 安倍首相は会談で「日露次官級協議を平和条約締結に向けてできるだけ早く開催すべきだ」と、交渉の加速化を提案。プーチン大統領はこの場では「2プラス2(日露外務・防衛担当閣僚級協議)のときにしっかり議論してはどうか」と述べるにとどまったが、その翌日の記者会見では「日本とは(条約を締結することは)完全に可能だ」と述べ、日本との平和条約締結に強い意欲を示した。

 無論、これまでの経緯が示すように、したたかなロシアを相手に領土交渉が簡単に進むとは考えられない。これまでロシア側の求めに応じて経済協力だけが先行し、領土交渉は置き去りにされてきた。

 プーチン大統領は平和条約締結に強い意欲を示したが、それがそのまま領土交渉の進展を意味するわけではないだろう。ラブロフ外相はかつて日露外相会談で「2島かゼロか」との選択を迫った。

 ロシア側は「歯舞群島及び色丹島については、平和条約の締結後、日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言(1956年)を軸に領土交渉を進める構えであり、4島返還を求める日本側との隔たりは大きい。

 だが、北方四島返還の実現はロシアとの交渉を通してのみ可能であり、その交渉で最も重要なポイントのひとつが首脳同士の信頼関係だ。橋本龍太郎首相(当時)は、エリツィン大統領(同)と5回の首脳会談を通じて首脳同士の緊密な関係を築き、領土交渉を前進させた。

 安倍首相は今回の会談で「両国の首脳間の接触がテンポよく進んでいることを大変うれしく思う」と語った。安倍首相は昨年12月の就任以来4回を数える首脳会談を通じ、首脳同士の信頼関係構築に力を注いでいる。

 今回の会談で両首脳は、日露初の2プラス2が11月1日から東京で開催されることを歓迎し、安全保障分野の対話を強化していくことで一致した。安倍首相が「2プラス2は安全保障分野を中心に日露関係に厚みを持たせる絶好の機会だ」と語ったように、経済、人的交流に加え安全保障分野でも日露協力を拡大させ、首脳同士の信頼関係構築を側面支援する形だ。

 両首脳は4月の共同声明で、北方領土問題を「双方に受け入れ可能な形で最終的に解決する」との決意を表明した。これを受け、日露両政府は8月にモスクワで外務次官級協議を行い、北方領土交渉を実質的に再開した。

トップダウンが不可欠

 今後、交渉は本格化していくが、日露の大きな隔たりを埋めるには両首脳によるトップダウンが欠かせない。安倍首相はプーチン大統領との首脳会談をさらに積極的に行い、4島返還に向けた領土交渉の進展に努力すべきだ。

(10月9日付社説)