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米資金援助停止、難民の自立への支援強化を


 米政府は、パレスチナ難民を支援する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金援助を停止した。

 難民問題の解消、さらには中東和平交渉の推進へとつなげたい意向とみられるものの、トランプ米政権の露骨なイスラエル寄りの姿勢に反発は強い。支援停止は問題の解決にはつながらず、難民の自立、吸収への支援強化が必要だ。

パレスチナ自治区は反発

 UNRWAをめぐってはこれまでも、イスラエル、米国などの保守派の間で、支援継続へ懸念の声があった。イスラエル建国時に発生したパレスチナ難民は70万人余り。現在は、レバノン、シリア、ヨルダン、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸とガザ地区で530万人ほどが登録されている。

 当初の難民の子孫も難民として登録されるため、その数は増加するばかり。米政府は、UNRWAが「修復不可能な欠陥」を持つとして、別の形での支援の可能性を示唆しているものの、代案は示されていない。

 米国の支援停止でUNRWAは予算の約3分の1を失うことになり、運営の継続が危ぶまれる。予算は難民への食糧援助とともに、その多くは学校の運営などの教育に充てられている。難民の生活の質の悪化は、パレスチナ自治区、受け入れ国の経済、治安にも負の影響をもたらす。イスラエルに対するテロが激化する可能性もある。

 自治区は米国への反発を強めており、パレスチナ和平への影響も懸念される。エルサレムへの大使館移転などから、パレスチナは米国の和平仲介に拒否の姿勢を取り続けている。米国は自治区のヨルダンとの連邦案を提示したものの、自治政府に拒否されたことが報じられたばかりだ。

 これまで受け入れ国では、難民問題を政治利用し、解決に積極的に取り組んでこなかったという批判がある。米国の支援全額停止という荒療治は、情勢を不安定化させる可能性があるものの、国際社会、受け入れ国が難民の吸収や自立など難民問題解消へと積極的に取り組み始める契機とすべきだろう。

 ドイツはすでに支援の増額を表明、欧州連合(EU)も支援の強化に前向きだ。日本政府は2015年、約50億円を拠出、今年8月には6億円の食糧援助を約束した。

 まずは、受け入れ国に難民問題解消に取り組むよう働き掛け、自治区での受け入れやイスラエル領内への帰還も検討すべきだ。ヨルダンに200万人以上、シリア、レバノンにそれぞれ数十万人。これら難民の吸収には時間もかかる上、経済的、社会的負担も大きい。自治区でも、支援国、イスラエルによる難民問題解消への取り組みがなされなければならない。

 日本は貢献の道模索せよ

 日本は、ヨルダン川西岸のエリコで農産加工団地の整備を進め、国際社会からも高く評価されている。自治区でのインフラ整備でも実績がある。支援の急激な停止は難民問題を解決できないばかりか、経済、治安の悪化につながる。難民の生活を守りながら、難民の吸収、自立へ貢献する道を模索すべきだ。