世界日報 Web版

イラン反政府デモ、核合意厳守し体制変革を促せ


 イランで年末年始に発生した大規模な反政府デモをめぐって、米国とイランの対立が再び深まっている。

 イラン当局は「敵」からの干渉があったと非難しており、トランプ米政権は停止している対イラン制裁を再開するか、12日にも判断を示す。

SNSで全土に広がる

 イラン革命防衛隊は3日の時点で「鎮圧」を宣言し、死者21人、逮捕者450人と発表した。しかし、CNNなど米メディアは逮捕者3700人との見方を示すなど、人権侵害の疑いを隠していない。

 核兵器開発疑惑による制裁を受けていたイランは、穏健保守派のロウハニ大統領の下で、2015年に欧米など6カ国と核兵器製造に至らない開発制限に合意し、16年に経済制裁は解除された。が、解除の恩恵は国民に行き渡っていない。

 昨年末の28日に北東部の都市マシャドで起きたデモは、若者の不満が起爆剤となったものだ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の会話アプリ「テレグラム」や、写真投稿アプリ「インスタグラム」などを通じてデモの情報が拡散して全土に広がった。

 イランは約8000万人の人口の6割が30歳未満で、若年層の失業率は3割に近い。5年ほど前に30%を超えたインフレ率は制御されてきたが、なおも10%程度で推移しており、物価の上昇が貧困層、その多くは若者の生活を直撃している。

 SNSの情報が若者の鬱積した怒りに火を付けたことは、イスラム教シーア派によるイラン革命で政教一致を徹底した体制も、40年の歳月とともに旧態依然とした制度と民衆に受け止められている証拠だ。とりわけ、宗教支配からの自由を求める声なき声も水面下で広がっていると言える。

 大統領選では、保守派、穏健派、改革派が交互に勝利してきた。2009年大統領選では保守強硬派のアハマディネジャド大統領再選に不正を疑った改革派の有権者が、テヘランで抗議行動を起こして治安部隊と衝突し、30人もの犠牲者を出した。

 が、この政治的対立も背景に経済低迷があった。今回も経済問題から発生したデモであり、ジャスミン革命とも共通する若者たちの絶望が根底にあるとみられる。

 しかし最高指導者のハメネイ師は、デモを扇動した「敵」として米国やイスラエル、富裕な湾岸産油国などに矛先を向け、また同国政府は、英語を「西側の文化侵略」とみて小学校での英語教育を禁止した。保守派の強硬化が懸念される。

 宗教指導者らは欧米の介入と決めつけるよりも、失政を認め体制改革を進めるべきだ。大統領選や議会選への立候補に監督者評議会の審査を経る制度は、批判票の受け皿を奪っている。

 問題を峻別して対処を

 また、米国もイランの国内改革を促すことに留意すべきで、短兵急に停止していた制裁を今回のデモ鎮圧と結び付けて再開すれば、「大悪魔」に仕立てられた上、イランが核合意を破棄する事態も起きかねない。核には核、人権には人権と問題を峻別(しゅんべつ)して対処すべきだ。