IS掃討航空作戦の「中枢神経」、 カタールのウデイド基地


 かつてはその場所も非公開だった中東カタールのウデイド米空軍基地は現在、シリア、イラク、アフガニスタンなどでの過激派組織掃討作戦で中心的役割を果たす戦略的要衝となっている。

ウデイド空軍基地

6月30日、カタールのウデイド空軍基地の駐機場で待機する米空軍の空中給油機KC135(米空軍提供)

 シリア、イラクでロシア、シリア、イラン各軍との偶発的衝突を避けながら「イスラム国」(IS)掃討作戦を行うという、非常に複雑な作戦を担う。1800㌔先のアフガンのタリバン掃討でも空からの作戦で中心的な役割を果たしている。室内の映画館のような大スクリーン上の地図には飛行中の米軍機を示す数百もの緑の点が映し出されていた。

 ところが、テロ支援が疑われるカタールと、サウジアラビアなどアラブ諸国の対立のあおりを受け、基地移転の可能性が持ち上がっている。

 カタールに対する姿勢は米政権内でも割れている。トランプ大統領は7月、「(ウデイドを)去ることになっても、基地を造りたい国は10カ国もある」と豪語したが、マティス国防長官はカタールとの「戦略的関係」に問題はないと否定的だ。

 基地には米中央軍の前進本部があり、約1万1000人の米兵が駐留する。国防総省によると、戦略輸送機C17、空中給油機KC135など約100機の米軍機が展開。対IS作戦の一環でB52戦略爆撃機も増強されている。

 中央軍空軍副司令官ナホム准将は「戦略的にここよりいい場所はない。…滑走路と駐機場の規模も申し分ない」と言う。

 第379遠征航空団のジェーソン・アーマゴスト司令官(准将)は、「ウデイドは、大型機の戦域での拠点であり、言われればいつでもイラク、シリア、アフガンに行ける」と基地の重要性を訴えた。

 さらにウデイドには、米国主導の有志連合が参加する統合航空作戦センター(CAOC)が設置されている。CAOCは、IS掃討のための情報を統合し、米中央軍が担当する20カ国・地域全体のすべての航空支援と精密爆撃の指示を出す。

 施設内の大型スクリーンには、無人偵察機からの映像が映し出され、CAOCは国防総省では「航空作戦の中枢神経」と呼ばれる。

 英海軍のジョニー・ストリンガー准将は、「カタールは基地を受け入れ、大変な貢献をしてくれている」と指摘、外交問題でウデイドを失うことになれば大変な損失だと主張した。

 米軍は同時テロ直後から、アフガンのアルカイダ空爆作戦にウデイド基地を極秘で使用、2003年からはイラク攻撃にもウデイド基地が使用されるようになった。その後、基地の機能は強化されたものの、国防総省は周辺地域への配慮から数年前まで、カタール内の基地の使用について公表することを禁じていたという。

 ナホム准将は「カタールは良き友人だと思っている。作戦のためのロケーションは申し分ない。今後も縮小されることはない」と基地存続を訴えた。

(ワシントン・タイムズ特約)