ムバラク元大統領、無罪確定


2011年のデモ隊への発砲命令

 エジプトの破棄院(最高裁に相当)は2日、ホスニ・ムバラク元同国大統領(88)が2011年、独裁政権打倒・民主主義国家成立を目指した「アラブの春」運動参加のデモ隊に対し、発砲を命じた罪に問われた裁判の上訴審で、無罪判決を言い渡した。エジプト紙アルアハラム電子版などが同日、報じた。

 デモ隊への発砲命令疑惑をめぐっては、ムバラク氏は同命令により200人以上を殺害したとして殺人罪に問われ、12年に特別法廷で終身刑が言い渡されたが、破棄院は13年、審理のやり直しを命令、14年に「明白な証拠に基づいていない」として一転して事実上の無罪判決が下され、検察が上訴していた。今回の判決は最終的な司法判断で、無罪が確定した。

 無罪判決に対して一部の反発も予想されるものの、国民の大多数は、ムバラク氏退陣後の、モルシ・ムスリム同胞団(国家と世界のイスラム化を目指しイスラム法に固執する根本主義団体)政権による、過度なイスラム化や経済無策に失望した経緯があり、治安が安定し、経済が好調だったムバラク時代を懐かしむ声もあることから、反発は限定的になる見込みだ。

 モルシ氏失脚後、政権を担ったシシ現政権は、クーデター政権だと断じる一部マスコミもあるものの、同政権はイスラム教スンニ派総本山アズハル(国民の9割)やエジプトのキリスト教であるコプト教(国民の1割)の法王らの出席の下に成立した経緯もあり、国民の大半が支持しているのが現状。このことも、ムバラク元大統領の無罪判決への冷静な受け止め姿勢を促しているものとみられる。

(カイロ鈴木眞吉)