中東和平、共存へ真摯な交渉を続けよ


 パレスチナ自治政府のアッバス議長率いるパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハと、イスラム根本主義組織ハマスが統一暫定政府を樹立することを明らかにした。「テロ組織」とされているハマスを取り込んだ政府との交渉にイスラエルは背を向けた。

「統一政府」で対立激化

 現在のパレスチナは、ファタハが支配するヨルダン川西岸とハマスが実効支配する地中海岸のガザ地区に分裂している。

 イスラエルとパレスチナ自治政府は昨年7月、米国の強力な仲介を受けて「暫定合意」を交わし、和平交渉を再開させた。今月29日までに、難民の帰還権やエルサレムの帰属、境界線などで合意を交わすことをうたったものだ。

 イスラエルはこれを受けて、「パレスチナ囚人」の段階的釈放を行うなどしてきた。だが、ネタニヤフ首相は「自治政府のユダヤ人国家の承認」を突然持ち出すなど、交渉推進の意思に疑問を抱かせるような行動もとっている。自治政府は「歴史を否定し、パレスチナ難民の帰還と帰還権の放棄につながる」としてこれを拒否しており、新たな対立要因となった。

 自治政府は一昨年11月に、国連の非加盟オブザーバーから「非加盟オブザーバー国家」への格上げを申請、国連総会で承認された。今月には15の国際条約に加盟申請を出すなど「国家」としての国際社会への関与に意欲的だ。イスラエルとの「2国家共存」へ国際社会の後押しを得ようとするものとみられるが、これら一方的行動はオスロ合意違反とみられ、かえって交渉を困難にしている。

 自治政府は、統一暫定政府樹立は「内部の問題」としている。しかし、イスラエルはもちろん、ハマスを「テロ組織」に指定している欧米が、統一政府を承認する可能性はなく、かえって孤立を招くだけだ。

 統一政府樹立を発表したのは、行き詰まる和平交渉で、イスラエルに揺さぶりをかけて、有利な条件を引き出そうという思惑もあるのではないかとの見方もある。だが、ファタハとハマスの対立は根深く、樹立は不可能とみる識者らもいる。

 西岸とガザに真っ二つに割れたパレスチナが、イスラエルとともに「国家」として存立していくことも不可能だ。ハマスには「イスラエルの承認」「暴力の放棄」「イスラエルとの合意の順守」が求められている。これらが実行されなければ「テロ組織」であり続けることになる。

 ハマスはガザ地区を実力で奪い取ったものの、エジプト、イスラエルに境界線を封鎖され、物資は不足、経済は疲弊している。ハマスの出身母体であるエジプトのイスラム根本主義組織、ムスリム同胞団系のモルシ政権が倒れたことも打撃だ。ファタハとの歩み寄りで、膠着(こうちゃく)状態を脱しようという思惑もあるとされる。

「2国家共存」実現を

 イスラエルも自治政府も、暴力とテロの吹き荒れる時代への後戻りは望んでいない。現状で考えられるのは「2国家共存」だろう。共存への道は真摯(しんし)な交渉しか残されていないことを忘れてはならない。

(4月26日付社説)