大所高所に立つ指導者を


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 最近、韓国メディアの世論調査では国連事務総長の潘基文氏が次期大統領候補のトップを走っている。国際化時代に相応(ふさわ)しい国際感覚と経綸(けいりん)を重ねた人物を指導者にという世論だろう。

 潘氏は韓国中部の忠清道出身だから東西が激しく対立する地域感情にかかわらないという利点も兼ね備えている。

 今年4月の韓国総選挙では執権与党が惨敗した。経済不況にもかかわらず政争に明け暮れる政界に国民が背を向けたようだ。

 伝統的な野党の支持基盤である西南部の全羅道では朴槿恵大統領の秘書官出身の与党候補が2度目の当選を果たした。与党の支持基盤の東南部・慶尚道でも与党候補が落選する異変が起きた。汚濁していない人物を好む国民の成熟した政治感覚が目立っている。

 韓国の歴代大統領の功罪を検証すると、政治だけしか知らない人物が政権を握ると経済が後退してきた。有権者の歓心を買うためだけの「展示行政」と民主主義を装いながらも大統領の顔色だけを気にする「ひまわり政治」の弊害は大きい。金泳三大統領はそのため国家財政を破綻させた指導者として記憶されている。

 また、金大中と盧武鉉の両大統領は北朝鮮に巨額を与え、その核武装を事実上、援助することになった。

 盧武鉉氏は弁護士出身だが、これら3人の民主化闘争を経験した大統領の共通点は皆、政治的な利害を最優先することである。

 一方、朴正熙大統領を含め3人の軍出身の指導者は経済の成長エンジンに点火し高度成長の花を咲かせた。3人の功罪を検証すると、その統制的な政治手法に問題がないとは言えないが、軍特有の強力な推進力が経済成長の牽引(けんいん)車となったのは事実である。3人共に政治に染まっていない共通点を持っており、盧泰愚大統領は6・29宣言で民主化の扉を開いた。

 次期指導者も大所高所から国家を運営できる人物が望まれる。韓国民の成熟した政治感覚が一段と求められている。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)