「三・一」から100年、日本との間の溝を深めるな


 韓国では、日本の植民地支配に抵抗した「三・一独立運動」が起きてから100年の節目を迎えた。韓国政府が光化門広場で開いた記念式典には1万人以上が参加した。

 式典で演説した文在寅大統領は、日韓関係について未来志向を強調する一方で「力を合わせて被害者の苦痛を実質的に癒やす時、日本は真の友人になるだろう」と述べ、間接的に慰安婦問題や徴用工問題で日本側の対応を求めた。

 「親日の残滓清算」を強調

 演説で注目されるのは、韓国国内の保守派と革新派の対立解消や南北融和の意義などに重点を置き、日本を直接批判することは慎重に避けたことだ。これは、三・一独立運動から100年という節目で韓国民の反日感情が高まり、ただでさえ悪化している日韓関係にさらに悪影響が出るのを抑えようとしたためとみられる。

 ただ、文氏は独立運動について「約7500人の朝鮮人が殺害され、約1万6000人が負傷した」と発言した。これについて、日本外務省は「歴史家の中でさまざまな意見があり、見解が一致していないことを公の場で発言するのは不適切だ」と韓国政府に伝えた。当然の措置である。

 最近の韓国側の動きには、憂うべき傾向が見られる。韓国の国会議長は天皇陛下を「戦犯の息子」と呼び、元慰安婦に謝罪することを求めた。日本政府が強く抗議したが、文政権は応じていない。これでは日韓の間の溝は深まるだけだ。

 日本の植民地支配という苦い体験がある韓国では、国をまとめるのに「反日」は極めて便利な道具となっている。われわれが韓国側に期待したいのは、国際法と良識に基づく問題の解決である。徴用工問題であれば、日韓請求権協定の規定に基づいて日本政府との協議に応じるのが筋であろう。

 演説の中で文氏は、かつて日本の植民地支配に協力した、いわゆる「親日」の人々の影響が今も残っていて、それが韓国社会でさまざまな問題を起こす要因になっているとして「親日の残滓(ざんし)を清算しなければならない」と強調した。盧武鉉政権時には、民族に敵対する行為に関わったとして「親日派」の子孫から財産を没収する政策などが進められた。

 韓国の文化体育観光省が先月末に発表した世論調査の結果によると、「親日の残滓が清算されたか」という質問に対し、80%が「清算されていない」と答えたという。また、このように答えた人のうち48・3%が「政治家や高級官僚、財閥に親日派の子孫が多いこと」を理由に挙げている。

 民族主義は友好の妨げ

 日韓両国は歴史的にも深いつながりがあるため、近親憎悪の関係になりやすい。しかし両国は一衣帯水の隣国であり、同じ自由と民主主義を信奉する国である。

 反日などの民族主義は国をまとめるのには便利ではあるが、隣国との真の友好関係樹立の妨げとなる。反日デモなどで在韓の日本企業に不当な不利益が生じないよう韓国政府に確かな対応を求めたい。